Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 看護モニタリング

2017年に報告された医療事故は4095件、うち8%弱の318件で患者が死亡―日本医療機能評価機構

2018.10.12.(金)

 昨年(2017年)1年間に報告された医療事故は4095件あり、うち7.9%の318件では患者が「死亡」している。また、同じく2017年の1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例は88万9431件で、そのうち0.6%は仮に誤った行為を実施していた場合には「死亡」などにつながっていたと予想される―。

 このような状況が、日本医療機能評価機構が10月2日に発表した2017年の「医療事故情報収集等事業」の年報から明らかになりました(機構のサイトはこちら)(2016年の状況に関する記事はこちら)。

場面では「療養上の世話」、診療科では「整形外科」で医療事故多発

 日本医療機能評価機構では、医療安全対策の一環として医療機関で発生した事故やヒヤリ・ハット事例を収集、分析する「医療事故情報収集等事業」を実施し、定期的にその内容を公表しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 まず昨年(2017年)に報告された医療事故の状況を見てみましょう。

報告された医療事故件数は合計で4095件(国立病院など報告義務のある医療機関に限ると3598件)となりました。

事故の程度別に見ると、「死亡」が318件(事故事例の7.9%、前年比べて0.9ポイント減少)、「障害残存の可能性が高い」ものが426件(同10.4%、同0.1ポイント増)、「障害残存の可能性が低い」ものが1176件(同28.7%、同0.3ポイント増)、「障害残存の可能性なし」が1088件(同26.6%、同0.6ポイント増)などとなっています。死亡事例こそ前年より減少していますが、報告された事故の半数近くで患者に何らかの障害が残っており、事故防止対策の強化が急務となっています。
 
 医療事故の概要を見てみると、最も多いのは「療養上の世話」で1640件(事故全体の40.0%、前年から3.2ポイント増)、次いで「治療・処置」1094件(同26.7%、同3.4ポイント増)、「薬剤」353件(同8.6%、同1.6ポイント増)、「ドレーン・チューブ」279件(同6.8%、同0.1ポイント減)などと続きます。前年より「療養上の世話」「治療・処置」に関する事故が大きく増加しています。
医療事故情報収集等事業 2017年年報1 181002
 
 事故に関連した診療科(複数回答が可能)を見ると、従前同様に整形外科(625件、全体の12.5%)、外科(419件、同8.3%)、消化器科(347件、同6.9%)内科(340件、同6.8%)などで多い状況です。
医療事故情報収集等事業 2017年年報2 181002
 

ヒヤリ・ハット事例は89万件弱に増加、医療現場の透明性確保が進む

 ヒヤリ・ハット事例に目を移してみましょう。

昨年(2017年)1年間に報告されたヒヤリ・ハット事例は合計88万9431件で、前年に比べて3万件超の増加となっています。事例そのものの増加(ミスが増えている)ももちろん考えられますが、「ヒヤリとした、ハットとした」事例を医療現場で把握し、包み隠さずに報告している、つまり透明性が増しているという要素が大きいと考えられます。

内訳を見ると、「薬剤」が最も多く29万133件(ヒヤリ・ハット事例全体の32.8%、前年比べて0.3ポイント増)、次いで「療養上の世話」19万3235件(同21.7%、同0.2ポイント減)、「ドレーン・チューブ」12万9814件(同14.6%、同0.3ポイント減)などで多くなっています。

 「ヒヤリとした、ハットした」にとどまり、実際に患者に誤った行為などをしていないケースが全体の約3割に当たる28万6070件ですが、仮に誤った行為を実施していた場合には、5044件では「死亡」もしくは「重篤な状況」に至り、また1万9128件では「濃厚な処置・治療が必要になった」と考えられます。改めて「十分な注意」「ミスが生じない体制づくり」(複数チェックなど)が必要と言えるでしょう。
医療事故情報収集等事業 2017年年報3 181002
 

薬剤オーダ方法を変更した場合、院内や薬局への周知徹底を

 2017年の年報では、次の9つの具体的な事故事例を取り上げ、詳細に分析した上で、再発防止策などを検討しています。
(1)ネオーラル内用液を投与するところ、サンディミュン内用液を誤って調剤し投与した事例【薬剤関連】
(2)処方オーダシステムを1日量処方から1回量処方に変更した際、薬剤を過剰処方し患者に投与された事例【薬剤関連】
(3)アレルギー情報を入力する際、薬剤名を選択せずフリー入力したため処方時にアラートが出なかった事例【薬剤関連】
(4)輸血 血液型判定間違いにより異型輸血した事例【輸血換算】
(5)蘇生時、アドレナリンを投与するところノルアドレナリンを投与した事例【治療・処置関連】
(6)後日確認しようと考えていた外来患者の血液検査を見忘れた事例【治療・処置関連】
(7)CT検査を行った際、画像は確認したが画像診断報告書を見なかった事例【治療・処置関連】
(8)外来診察時に検査値を確認しないまま内服抗がん剤の治療を継続し、患者に影響があった事例【治療・処置関連】
(9)経鼻栄養チューブを肺へ誤挿入し、内服薬を注入した事例【ドレーン・チューブ関連】

 このうち(2)では、電子カルテシステム更新時に、内服処方オーダ方法を「1日量処方」から「1回量処方」へ変更し、院内で説明会を複数回開催したにもかかわらず、▼内服処方オーダ方法の変更に関する重要性の説明不足▼保険薬局への説明不十分(システム変更の直前)—などによって、処方内容が過剰(抗がん剤の「ティーエスワン配合OD錠」を1回2錠・1日2回(1日4錠)と入力するべきところ、1回4錠・1日2回(1日8錠)と入力してしまった)になった事例です。

▼薬剤部や医療安全管理部から注意喚起を改めて行い、「1回量処方」に変更された旨を周知徹底する▼保険薬局に対し、病院薬剤師会を通じて周知を図る▼電子カルテシステムで「上限量設定を行う」—などの対策が実施・検討されていますが、「1日量処方と1回量処方を併記する」などの対策も検討に値するでしょう。

 
また(7)は、機構が毎月実施している「医療安全情報」でも紹介された「画像診断報告書の見落とし」事例です(関連記事はこちら)。1年ほど前に患者が健診科を受診し、腹部エコーで腹部大動脈瘤を、さらにPSA高値も指摘されたため、精査のため、腹部大動脈瘤は循環器内科へ、PSA高値は泌尿器科へ紹介されました。循環器内科外来の主治医は、健診科の担当医と同一で、腹部大動脈瘤を精査するために1か月後に腹部造影CT検査を施行しました。検査後の外来受診時に「半年後、大動脈瘤をチェック。腎機能もチェック」とカルテに記載し、採血・腹部エコー検査を予約。腹部エコー検査では、「腹部大動脈瘤に著変なく、腎臓には問題なし」とされました。しかし、後に成人病ドック受診時の腹部エコー検査で「腎細胞がん疑い」の所見を認められ、別の健診科医師が過去の検査所見を見返すと「約11か月前の腹部造影CT検査所見に『腎癌疑い、精査を」との記載があり、それを見落としていた』ことが判明しました。

本事例では、「健診科担当医」と「検査を依頼した循環器内科主治医」が同一であったため、腹部エコーなどの結果から「腎に関しては重要所見がないはず」との先入観もあったようです。▼画像検査で、検査目的や対象臓器と異なる部位の異常所見が発見された場合は、放射線科から主治医に警告を送るシステムの構築を検討する▼外来で、検査結果の確認をする際になんらかのダブルチェック機構が働くようにする▼ダブルチェックの観点から「別の医師への紹介」を徹底する―などの改善策が実施・検討されています。
 
  
 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

2016年に報告された医療事故は3882件、うち338件で患者が死亡―日本医療機能評価機構

膀胱留置カテーテルによる尿道損傷、2013年以降に49件も発生―医療機能評価機構
検査台から患者が転落し、骨折やクモ膜下出血した事例が発生―医療機能評価機構
総投与量上限を超えた抗がん剤投与で、心筋障害が生じた事例が発生―医療機能評価機構
画像診断報告書を確認せず、悪性腫瘍等の治療が遅れた事例が37件も発生―医療機能評価機構
温罨法等において、ホットパックの不適切使用による熱傷に留意を―医療機能評価機構
人工呼吸器、換気できているか装着後に確認徹底せよ-医療機能評価機構
手術場では、清潔野を確保後すぐに消毒剤を片付け、誤投与を予防せよ―医療機能評価機構
複数薬剤の処方日数を一括して変更する際には注意が必要―医療機能評価機構
胸腔ドレーン使用に当たり、手順・仕組みの教育徹底を―医療機能評価機構
入院患者がオーバーテーブルを支えに立ち上がろうとし、転倒する事例が多発―医療機能評価機構
インスリン1単位を「1mL」と誤解、100倍量の過剰投与する事故が後を絶たず―医療機能評価機構
中心静脈カテーテルが大気開放され、脳梗塞などに陥る事故が多発―医療機能評価機構
併用禁忌の薬剤誤投与が後を絶たず、最新情報の院内周知を―医療機能評価機構
脳手術での左右取り違えが、2010年から11件発生―医療機能評価機構
経口避妊剤は「手術前4週以内」は内服『禁忌』、術前に内服薬チェックの徹底を―医療機能評価機構
永久気管孔をフィルムドレッシング材で覆ったため、呼吸困難になる事例が発生―医療機能評価機構
適切に体重に基づかない透析で、過除水や除水不足が発生―医療機能評価機構
経鼻栄養チューブを誤って気道に挿入し、患者が呼吸困難となる事例が発生―医療機能評価機構
薬剤名が表示されていない注射器による「薬剤の誤投与」事例が発生―医療機能評価機構
シリンジポンプに入力した薬剤量や溶液量、薬剤投与開始直前に再確認を―医療機能評価機構
アンプルや包装の色で判断せず、必ず「薬剤名」の確認を―医療機能評価機構
転院患者に不適切な食事を提供する事例が発生、診療情報提供書などの確認不足で―医療機能評価機構
患者の氏名確認が不十分なため、誤った薬を投与してしまう事例が後を絶たず―医療機能評価機構
手術などで中止していた「抗凝固剤などの投与」、再開忘れによる脳梗塞発症に注意―医療機能評価機構
中心静脈カテーテルは「仰臥位」などで抜去を、座位では空気塞栓症の危険―医療機能評価機構
胃管の気管支への誤挿入で死亡事故、X線検査や内容物吸引などの複数方法で確認を―日本医療機能評価機構
パニック値の報告漏れが3件発生、院内での報告手順周知を―医療機能評価機構
患者と輸血製剤の認証システムの適切な使用などで、誤輸血の防止徹底を―医療機能評価機構
手術中のボスミン指示、濃度と用法の確認徹底を―日本医療機能評価機構

車椅子への移乗時等にフットレストで下肢に外傷を負う事故が頻発、介助方法の確認等を―医療機能評価機構
メトホルミン休薬せずヨード造影剤用いた検査を実施、緊急透析に至った事故発生―医療機能評価機構
2017年10-12月、医療事故での患者死亡は71件、療養上の世話で事故多し―医療機能評価機構
誤った人工関節を用いた手術事例が発生、チームでの相互確認を―医療機能評価機構
手術室などの器械台に置かれた消毒剤を、麻酔剤などと誤認して使用する事例に留意―医療機能評価機構
抗がん剤投与の速度誤り、輸液ポンプ設定のダブルチェックで防止を―医療機能評価機構
2016年7-9月、医療事故が866件報告され、うち7%超で患者が死亡―医療機能評価機構
2015年に報告された医療事故は3654件、うち1割弱の352件で患者が死亡―日本医療機能評価機構
2016年1-3月、医療事故が865件報告され、うち13%超は患者側にも起因要素―医療機能評価機構
15年4-6月の医療事故は771件、うち9.1%で患者が死亡―医療機能評価機構
14年10-12月の医療事故は755件、うち8.6%で患者死亡―医療事故情報収集等事業