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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

2020年10月分医療費、医科全体・医科入院・医科入院外のすべてで、女性では「乳がん」がトップに―健保連

2021.4.20.(火)

昨年(2020年)10月分医療費のトップ疾患を見ると、女性では、医療費全体・医科入院に続き、医科入院外でも「乳がん」となった―。

健康保険組合連合会(健保連)が4月16日に公表した「健保組合医療費上位30疾病に関する動向調査」結果から、こうした状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)(2020年1月分のデータに関する記事は こちら)。

新型コロナウイルス感染症が流行する中ではありますが、感染防止策に十分留意したうえで「早期発見」のための検診を適切に受診し、早期治療に結び付けることが医療費の適正化にとっても、女性自身のQOL向上にとっても、社会にとっても非常に重要です。医療機関や行政機関のみならず、医療保険者も「感染防止策を整えたうえでの、適切な乳がん検診受診」などの重要性・必要性を説くことが求められます。

医療費全体のトップ疾患、依然として男性では高血圧、女性では乳がん

健康保険組合(健保組合)は、主に大企業に勤める会社員とその家族が加入する公的医療保険です。健保組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)は、さまざまな角度からレセプトを分析し、各種提言を行うなど、従前より「データヘルス」に積極的に取り組んでいます。

今般、今年(2020年)10月診療分のレセプトをもとに、「健保組合加入者は、どのような疾患に多くかかり、医療費はどの程度なのか」を分析しました。調査対象は1250組合の加入者2585万7388人のデータです。

まず医科全体で見ると、医療費シェアトップ3は、(1)本態性(原発性<一次性>)高血圧(症):医科医療費全体の3.36%を占める(2)血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎<鼻アレルギー>:2.79%(3)喘息:同2.68%—となりました。上位3疾患で8.83%を占めています。昨年(2020年)1月と比べて上位3疾患には、順位の変動こそあるものの顔ぶれに変わりはありません。

男女計・医科合計の医療費上位疾患(2020年10月)(健保連上位30疾患(2020年10月)1 210416)



男女別のトップ3疾患は次のようになっています。

【男性】
▽本態性(原発性〈一次性〉)高血圧(症):男性医科医療費全体の4.33%
▽2型〈インスリン非依存性〉糖尿病〈NIDDM〉:同2.97%
▽血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎〈鼻アレルギー〉:同2.77%
→上位3疾患で、男性医科医療費の10.07%を占める

男性・医科合計の医療費上位疾患(2020年10月)(健保連上位30疾患(2020年10月)2 210416)



【女性】
▽乳房の悪性新生物〈腫瘍〉:女性医科医療費全体の3.73%
▽血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎〈鼻アレルギー〉:同2.81%
▽喘息:同2.75%
→上位3疾患で、女性医科医療費の9.29%を占める

女性・医科合計の医療費上位疾患(2020年10月)(健保連上位30疾患(2020年10月)3 210416)

医科入院、男性では心房細動、女性では乳がんがトップ

次に医科の「入院」に限定して医療費シェアを見てみましょう。

トップ3は、(1)心房細動および粗動:医科入院医療費全体の2.55%(2)脳梗塞:同2.02%(3)統合失調症:同1.86%—となり、上位3疾患で医科入院医療費の6.43%を占めています。ほぼ女性のみの疾患である「乳房の悪性新生物」は、トップ3にこそ入っていませんが、第4位となりました。「乳がん患者が依然として多い」状況が伺えます。早期の治療が生存率向上にとって重要なことから、検診の適正受診、自己点検などをさらに啓発していく必要があります。

もっとも、現時点では「新型コロナウイルス感染症の流行」により「検診を控える」動きもあります。この点、多くの医療機関では「感染防止対策」に力を入れており、「安心して乳がん検診を受診できる環境が整備されてきている」「自分でできる検診受診時の感染防止策」などについて健保組合から加入者へ分かりやすく情報提供していくことも重要です。

男女計・医科入院の医療費上位疾患(2020年10月)(健保連上位30疾患(2020年10月)4 210416)



また男女別にみるとトップ3疾患は次のようになっています。

【男性】
▽心房細動および粗動:男性医科入院医療費全体の4.14%
▽脳梗塞:同2.62%
▽狭心症:同2.62%
→上位3疾患で、男性医科入院医療費の9.38%を占める。「心房細動および粗動」のシェアが上昇している点が気になります。生活習慣の改善や重症化予防が極めて重要であることを再確認できます。

男性・医科入院の医療費上位疾患(2020年10月)(健保連上位30疾患(2020年10月)5 210416)



【女性】
▽乳房の悪性新生物〈腫瘍〉:女性医科入院医療費全体の3.61%
▽子宮平滑筋腫:同3.10%
▽統合失調症:同2.50%
→上位3疾患で、女性医科入院医療費の9.21%を占める

女性・医科入院の医療費上位疾患(2020年10月)(健保連上位30疾患(2020年10月)6 210416)

前述のとおり、コロナ禍であっても、「乳がん」の早期発見に向けた取り組みを国・保険者・医療機関・患者自身が進める必要があります。

医科入院外でも、女性では「乳がん」が医療費のトップ

医科の「入院外」に目を移すと、医療費シェアトップ3は、(1)本態性(原発性〈一次性〉)高血圧(症):医科入院外医療費全体の4.27%(2)血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎〈鼻アレルギー〉:同3.67%(3)喘息:同3.45%―となりました。上位3疾患で医科入院医療費の11.39%を占めています。医科全体・医科入院に比べてトップ3が占めるシェアが大きくなっており、「特定の疾患に患者が集中している」ことを再確認できます。

男女計・医科入院外の医療費上位疾患(2020年10月)(健保連上位30疾患(2020年10月)7 210416)



男女別にみるとトップ3疾患は次のようになっています。

【男性】
▽本態性(原発性〈一次性〉)高血圧(症):男性医科入院外医療費全体の5.55%
▽2型〈インスリン非依存性〉糖尿病〈NIDDM〉:同3.68%
▽血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎〈鼻アレルギー〉:同3.64%
→上位3疾患で、男性医科入院外医療費の12.87%を占める

男性・医科入院外の医療費上位疾患(2020年10月)(健保連上位30疾患(2020年10月)8 210416)



【女性】
▽乳房の悪性新生物〈腫瘍〉:同3.77%
▽血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎〈鼻アレルギー〉:同3.70%
▽喘息:女性医科入院外医療費全体の3.54%
→上位3疾患で、女性医科入院外医療費の11.01%を占める

女性では、医科入院のみならず、医科入院外でも「乳がん」が医療費トップ(最多)となりました。保険者も、こうした点を重く受け止めた対策を検討・実施する必要があります。

女性・医科入院外の医療費上位疾患(2020年10月)(健保連上位30疾患(2020年10月)9 210416) 



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