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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

国内での麻しん流行を懸念、発熱や発疹のある者は麻しんを疑った行動・診療を!医療従事者は2回の予防接種歴確認を—厚労省

2023.5.18.(木)

国内で麻しんの流行が懸念されている。非常に感染力が強く、重篤になるケースもある。「発熱」「発疹」のある者は麻しんを疑った行動をとり、そうした患者を診療する際には麻しんを疑った対応をとる必要がある—。

また医療従事者においては「2回の予防接種」が推奨される—。

厚生労働省は5月12日に事務連絡「麻しんの国内伝播事例の増加に伴う注意喚起について(協力依頼)」を示し、広く注意を呼び掛けています(厚労省サイトはこちら、麻しんに関する厚労省サイトはこちら)。

麻しんを疑って医療機関を受診する場合、公共交通機関利用は避けよ

日本国内において「麻しん」(はしか)の感染伝播症例が確認されたことが厚労省から明らかにされました。

▽本年(2023年)4月27日、海外渡航歴のある茨城県内居住者が麻しんと診断され、周囲へ感染させる可能性のある時期に「県外への公共交通機関を利用した移動」「不特定多数の人が集まる施設の利用」歴が判明

▽当該患者と同じ交通機関を利用した者を中心に、東京都で麻しん患者の発生が5月12日時点で2例報告された(接触者の調査中)



麻しんは、麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症です。非常に感染力が強く(空気感染、飛沫感染、接触感染)、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症するとされています(一度感染し発症すると一生免疫が持続するとされている)。「手洗い」や「マスク」で感染を防ぐことはできません。

感染した場合、「約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れ」→「2-3日熱が続いた後、摂氏39度以上の高熱と発疹が出現」します。▼肺炎、中耳炎を合併しやすい▼患者1000人に1人の割合で脳炎が発症する▼先進国でも1000人に1人は死亡する▼10万人に1人程度、とくに学童期に「亜急性硬化性全脳炎」(SSPE)と呼ばれる中枢神経疾患を発症する—とされています。



厚労省は、「今後、更なる輸入症例や国内における感染伝播事例が増加する」ことを懸念し、自治体・医療機関に次のような対応をとるよう要請しています。

【自治体における対応】
▽積極的疫学調査や検査の徹底を含め、「麻しんに関する特定感染症予防指針」に基づく対応を徹底する

▽保健所では、「麻しん排除に向けた積極的疫学調査ガイドライン(第3版)」を参考に積極的疫学調査を実施する

▽「疑い例」については、「麻しんに関する特定感染症予防指針」に基づき、地方衛生研究所等で「全例に対して核酸増幅法検査(PCR検査)による確定検査を行う」とともに、麻しんウイルスが検出された場合は「可能な限り、地方衛生研究所等でウイルスのゲノム配列の解析を実施し、国に報告し、国立感染症研究所に検体を送付」する

▽患者の行動歴等から「広域にわたる麻しん事例の発生が危惧される、または実際に発生がみられる」時には、国や自治体間の連携が非常に重要となるため、国立感染症研究所への疫学調査支援の要請を積極的に検討する

▽「麻しんの予防接種」は感染予防法として最も有効な手段であり、各自治体において予防接種を勧奨する(「定期接種」を受けていない者も含めて)
→「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う定期の予防接種の実施に係る対応について(再周知)」(2023年3月17日付け事務連絡)等で「コロナ感染症の流行に伴い規定の接種時期に定期接種を行うことができず接種を延期されていた方が、規定の接種時期でない時期に接種を行った場合についても、定期接種として取り扱われ得る」ことなどを示ししている

▽「疑い例」「確定例」発生時には、厚労省・国立感染症研究所の両方に報告する



【医療機関における対応】
▽「発熱や発しんを呈する患者」を診察した際は、麻しんの可能性を念頭に置き▼「海外渡航歴」「国内旅行歴」を聴取する▼麻しんの罹患歴・予防接種歴を確認する—など、麻しんを意識した診療を行う

▽麻しんを疑った場合には、「麻しんに関する特定感染症予防指針」に基づいて、「臨床診断をした時点」で、感染症法に基づいて「まず臨床診断例として直ちに最寄りの保健所に届け出」を行う

▽診断においては、▼「血清IgM抗体検査等の血清抗体価」を測定する▼地方衛生研究所等でのウイルス学的検査実施のため、保健所の求めに応じて「検体を提出」する

▽医療従事者の麻しん含有ワクチン接種歴(2回以上の接種)を確認することが望ましい

▽海外渡航予定のある者を診察する場合、次の点を広く周知する
▼海外渡航「前」の注意事項
→ウェブサイト等を参考に渡航先の麻しん流行状況を確認、母子手帳(母子保健手帳)などを確認し過去の麻しん予防接種歴、り患歴を確認、過去2回接種の記録がない場合は渡航前の予防接種を検討、麻しんり患歴・ワクチン接種歴が不明な場合は抗体検査を受検—

▼麻しん流行がみられる地域に渡航「後」の注意事項
→渡航後・帰国後2週間程度は「麻しん発症」の可能性も考慮して健康状態に注意、発熱・咳そう、鼻水、眼の充血、全身の発しん等の症状が見られた場合の医療機関受診、受診時の「麻しんの可能性」についての伝達、医療機関受診時には医療機関の指示に従うとともに、可能な限り「公共交通機関を用いずに受診」—



なお、厚労省は予防接種について▼最も有効な予防法といえる▼麻しん患者に接触した場合でも「72時間以内に麻しんワクチンを接種」することで、発症を予防できる可能性がある—ことを紹介し、定期接種対象者(2006年度から1歳児と小学校入学前1年間の小児の2回接種制度を開始、2008-12年度には中学1年生と高等学校3年生相当年齢の者に2回目のワクチンを定期接種として導入)だけでなく、「医療・教育関係者」「海外渡航を計画者」であって「麻しん罹患歴がなく、2回の予防接種歴が明らかでない」場合には予防接種を検討するよう求めています。



あわせて厚労省サイトには次のような国民向け情報も掲載されています。

▽発疹、発熱などの麻しんのような症状がある場合は、麻しんの疑いがあることをかかりつけ医・医療機関に電話等で伝え、受診の要否や注意点を確認してからその指示に従う

▽麻しんの感染力は非常に強く、医療機関へ移動する際は「周囲の方への感染を防ぐためにもマスクを着用し、公共交通機関の利用を可能な限り避ける」ことが求められる

▽妊娠中に麻しんにかかると「流産」「早産」を起こす可能性がある
→妊娠「前」であれば未接種・未罹患の場合、ワクチン接種を受けることを積極的に検討すべきである
→既に妊娠している場合にはワクチン接種を受けることが出来ないので、麻しん流行時には「外出を避ける」「人混みに近づかないようにする」などの注意が必要である
→麻しん流行時に、同居者に麻しんの可能性の高い者(例えば感染歴がなく、ワクチンの2回接種が明らかでなく、麻しんウイルスに曝露される可能性が高い者など)がいる場合には、「ワクチン接種等の対応」をかかりつけの医師に相談する

▽海外、とくに「麻しんの発生がない、非常に少ない国・地域」では、滞在中に麻しんを発症すると、感染拡大防止のため、発症した本人はもちろん、同行者の移動も厳しく制限されることがある

▽「今まで麻しんにかかったことが確実」(検査で麻しん感染が確認)な場合は、免疫を持っていると考えられることから予防接種を受ける必要はない

▽「麻しんかどうか明らかでない」場合はかかりつけの医師に予防接種について相談する(罹患経験者がワクチン接種をしても副反応は増強しない)

▽「麻しん」または「風しん」の片方にかかったが、他方にはかかっていない場合には、定期接種対象者は麻しん風しん混合ワクチンを定期の予防接種として受けることができる

▽ワクチン接種が進められる者としては、定期接種の時期になく「麻しんにかかったことがなく、ワクチンを1回も受けたことのない者」である



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