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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

病院の定員1人当たり建設費2435万円に高騰、価格とともに「資材調達困難」見越した建設計画を―福祉医療機構

2022.6.29.(水)

病院を建設する際の「定員1人当たり建設費」は、昨年度(2021年度)には前年度から11.5%も上昇して2434万8000円となった―。

300床の一般病院を新設する場合、直近の底値である2011年度には33億9000万円余りであったが、昨年度(2021年度)には73億円余りとなり、2倍超のコスト増となる―。

このような状況が、福祉医療機構(WAM)が6月28日に公表したリサーチレポート「2021年度(令和3年度)福祉・医療施設の建設費について」から明らかになりました(機構のサイトはこちら)(前年度の記事はこちら、前々年度の記事はこちら、その前年度の記事はこちら)。

価格の高騰はもちろん、資材調達が難しくなってきており、今後の病院建設・大規模改築については「計画を慎重に立てる」必要があります(工期の伸びによる建設費の上昇、開設遅れによる収益減などが生じる)。

病院の1人当たり建設単価、2021年度は2435万円に高騰

まず昨年度(2021年度)における病院の建設費を見てみると、全体の平米単価は全国平均で42万3000円となりました。前年度から5万3000円・14.3%も上昇し、2010年度以降の最高額となっています。

病院・老健施設の平米当たり建設費の推移(2021年度福祉・医療施設建設費1 220628)



また病院の「定員1人当たり建設費」を見ると、昨年度(2021年度)は2438万8000円で、前年度に比べて250万4000円・11.5%の大幅増となりました。平米単価と同じく2010年度以降の最高額となっています。

病院・老健施設の1人当たり建設費の推移(2021年度福祉・医療施設建設費2 220628)



また、前者の平米単価について、2016-21年度平均で病院種類別に見ると、▼一般病院(全病床に占める一般病床の割合が50%以上):36万9000円▼療養型病院(同じく療養病床の割合が50%以上):37万円▼精神科病院(同じく精神病床の割合が80%以上):30万1000円―となっています。

ただし一般病院については、▼ICUやHCU、急性期一般入院料などを取得sうる高度急性期・急性期病院では平米単価が高い▼回復期リハビリテーション病棟を中心とする病院では、療養型病院と同程度の水準である—など、幅広い分布になっている点に留意が必要です。



他方、「定員1人当たりの延床面積」は、昨年度(2021年度)には65.0平米。前年度に比べて5.4平米・9.1%広がりましたが、データにおける「一般病院(全病床に占める一般病床の割合が50%以上)・療養型病院(同じく療養病床の割合が50%以上)などのシェアが変わった」ことが背景にあります。



病院の1人当たり建設費は2011年度に底(1130万8000円)を打ってから、一貫して上昇傾向にあります。例えば東京五輪・パラリンピックの開催に伴う建設資材の高騰に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響(資材納期の遅延や工事の延期・中断など)、さらに現下のウクライナ情勢(やはり資材調達の遅延や、光熱費の急騰など)があり、機構では▼価格高騰は2022年度以降の建設費に影響を及ぼすことが予測され、設備投資額が増加すれば将来的な施設経営にも波及する恐れがある▼資材の確保自体が困難となり、工期が長期化する事例も発生している。これらの影響がいつまで続くかは不透明で、今後、施設の建設計画を進める際には工事着手時期の見極めが重要とな る—と見通します。

建設資材価格が急騰している(2021年度福祉・医療施設建設費3 220628)



なお、300床の一般病院を新築する場合には、建設費のみに着目すると2011年度には33億9000万円余りでしたが、2021度には73億万円余りとなり、2倍超のコスト増となる計算です。その一方で、患者単価はそこまでは上昇しておらず、病院の新築・改築にあたっては、「どのようにコストを抑えるか」という視点が必要となるでしょう。そこでは「適切な病床数」の設定も非常に重要な要素となってきます(「300床の病院が本当に必要なのか、より小規模な病院にすべきではないのか」との視点)。さらに「病院の機能」をどう設定するのかも非常に重要です(「ほんとに急性期・高度急性期機能が求められているのか?回復期・慢性期ニーズの充足が必要なのではないか?」との視点)。地域の医療ニーズ、近隣病院の動向、自院のリソース(医療資源)などを正確に分析し、「自院の適正な機能と規模」を探ることが必要不可欠です。

老健施設の1人当たり建設単価、2021年度は1494万円に

介護老健保健施設については、昨年度(2021年度)は▼平米単価:33万4000円(前年度から2万1000円・6.7%上昇)▼1人当たり延床面積:44.8平米(同1.9平米・4.1%縮小)▼1人当たり建設単価:1493万5000円(同30万6000円・2.1%上昇)―という状況です。

100床の老健施設を新築する場合、建設費のみに着目すると2011年度には8億9000万円余りでしたが、昨年度(2021年度)には14億9000万円余りとなり、コストは1.7倍近くになる計算です。

特養ホームの1人当たり建設単価、全国では1416万円、首都圏では1390万円

さらに特別養護老人ホーム(ユニット型)について、(1)首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)(2)全国―の地域別に見てみると、次のような状況です。

(1)首都圏
【平米単価】
2010年度:21万7000円 → 2021年度:32万5000円(10万8000円・49.8%上昇)
【定員1人当たり建設単価】2010年度:869万8000円 → 2021年度:1390万2000円(520万4000円・59.8%増)

(2)全国
【平米単価】
2010年度:19万9000円 → 2021年度:30万9000円(11万円・55.3%上昇)
【定員1人当たり建設単価】2010年度:1003万5000円 → 2021年度:1415万7000円(412万2000円・41.1%上昇)

特養老人ホームの平米当たり建設費の推移(2021年度福祉・医療施設建設費4 220628)

特養老人ホームの1人当たり建設費の推移(2021年度福祉・医療施設建設費5 220628)



病院建設費に比べて、「1人当たり建設費が前年度から下がる」など異なった動きをしており、その背景を探る必要があります(資材費が高騰する状況は病院と特養ホームで異なるとは考えにくい)。

なお介護分野のニーズは、ある地域では、今後も増加し続けるが、別の地域では、今後しばらくすると減少に転じるなど、非常に複雑です。地域の介護ニーズを詳しく精査した上で、施設の新設・改築計画を組んでいくことが必要です(関連記事はこちら)。



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