「個人単位の被保険者番号」活用した医療等情報の紐づけ、まずNDBや介護DBを対象に―厚労省・医療等情報連結仕組み検討会
2019.9.30.(月)
2021年度から「個人単位の被保険者番」を活用して医療等情報を紐づけ・連結し解析する」仕組みがスタート。個人特定のリスクが高まるため、まずNDBや介護DBなどのデータを対象とし、学会の保有するデータ(NCDなど)は当面は対象外とする。NDB等には、「個人単位の被保険者番号」を活用して紐づけた匿名加工データを格納することとする―。
9月24日に開催された「医療等情報の連結推進に向けた被保険者番号活用の仕組みに関する検討会」(以下、仕組み検討会)で、こういった考え方が取りまとめられました(関連記事はこちらとこちら)。
今後、この考え方に沿って、個別具体的なデータベース活用の仕組みを関係審議会(社会保障審議会の医療保険部会や介護保険部会など)で別途、検討していきます。
目次
データ連結に「個人単位の被保険者番号」を活用する大きな枠組みを決定
医療や介護、健康診査などのデータを集積し、個人の紐づけを行って解析することで医療・介護の質が向上すると期待されています。「若い頃に●●の生活習慣を持ち、健診で■■と判定された人は、近い将来、○○疾病に罹患する可能性が高いが、□□の治療法が有効である。こうした人は高齢になると▲▲が原因で要介護状態になる可能性が高く、その際には△△というケアが状態の維持・改善に有効である」といった知見が確立されれば、より効果的かつ効率的に保健・医療・福祉(介護含む)サービスの提供が可能になるためです。
この点、現在は、個々人の保健・医療・福祉データはさまざまなデータベースに、また同じデータベース内であっても、「散らばって」格納されています。こうしたバラバラのデータを紐づける「鍵」について、昨夏(2018年7月)に厚労省の「医療等分野情報連携基盤検討会」(以下、基盤検討会)は「個人単位の被保険者番号」が妥当であるとの見解をまとめ(関連記事はこちらとこちら)、さらに今般、データ連結の枠組みが仕組み検討会で固められたものです。
もっとも、具体的な連結の仕組みは各データベースの根拠法を所管する審議会で議論します。例えば「NDB(医療保険レセプトと特定健診情報を格納)と介護DB(介護保険レセプトと要介護認定情報を格納)をどう連結するか」などは、社会保障審議会の医療保険部会と介護保険部会で検討します。
「個人単位の被保険者番号」用いたデータ連結、まずNDB・介護DB等で活用
データ紐づけの大きな流れは、次のように整理できます。
(1)研究者が、あるデータベースの【活用主体】(NDBであれば厚労省保険局)にデータ提供を申請する
↓
(2)【活用主体】は、研究者に提供するデータの中に「異なる被保険者番号であるが、同一の人物(上述のAさん)がいないか」を確認するため、【管理・運営主体】に照会を行う
↓
(3)【管理・運営主体】は照会されたデータテーブルの中で、どの番号とどの番号が同一人物であるかを示し、それを【活用主体】に返答する
↓
(4)【活用主体】は同一人物についてデータクリーニングを行い、研究者にデータを提供する
仕組み検討会では、主に(A)【活用主体】として相応しいのはどのような組織か(B)【管理・運営主体】として相応しいのはどのような組織か(C)【管理・運営主体】はどのような形で返答を行うのか(D)「個人単位の被保険者番号」が運用される前のデータ(現在のデータもそうである)をどのように紐づけるのか―という4点を固めました。
まず(A)の【活用主体】については、「個人単位の被保険者番号」が重要な個人情報であることから、「誰でも良い」とはいきません。仕組み検討会では、【活用主体】の要件として、▼データの収集根拠、利用目的などが法律(委任を受けた下位法令含む)で明確にされている▼保有するデータの性質に応じて、講ずべき安全管理措置等が個別に検討され、確保されている▼データの第三者提供が行われる場合は、当該提供スキームが法律に規定され、提供先に係る照合禁止規定など、必要な措置が設けられている―の3点を設定。
これらをすべて満たすデータベースは、現在、▼NDB▼介護DB▼DPCデータベース▼全国がん登録データベース▼次世代医療基盤法の認定事業者の保有するデータベース―のみとなります。さらに、連結規定が整備されているのは、このうち▼NDB▼介護DB▼DPCデータベース―のみで、当面は、この3データベースが、今般の枠組みの対象となるでしょう。
もっとも並行して「全国がん登録データベースについて、他のデータベースとの連結を検討する」「次世代医療基盤法の認定事業者を認定する」「難病等のデータベースについて法的根拠を検討する」ことなどが予想され、将来的には、枠組みの対象が拡大すると期待されます。
なお、NCD(National Clinical Data Base)など医学会等が独自に構築しているデータベースとNDB等の連結は、「将来の検討課題」に位置付けられています。まずは「公的データベースで連結等の仕組みを完成させ、活用する」ことを務め、その状況を踏まえながら医学会等のデータベース等の連結を検討することになります。
支払基金等が「個人単位の被保険者番号」履歴を管理する
次に(B)の【管理・運営主体】については、「効率的な業務実施の観点からは、医療保険制度において、被保険者番号を一元的に管理する主体であることが合理的である」との考えが示されました。具体例として、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険中央会(各都道府県の国民健康保険団体連合会の連合組織)が考えられます。
この点、「国(厚労省)が管理・運営を行うべきではないか」との指摘もありますが、その場合には、支払基金等から最新データを逐次受け取る必要があります(国は個人単位の日保険者番号履歴を保有していない)。このため「屋上屋を重ねる」(非効率であり、国が履歴データを受け取る法的枠組みも整備されていない)ことになってしまうと仕組み検討会では結論づけています。
NDB等には「個人単位の被保険者番号」活用して紐づけた匿名加工データを格納
さらに(C)の「返答の仕方」については、データベースの種類に応じて、次の2つのパターンが考えられるとしています。
【パターン1】(例えば、次世代医療基盤法の認定事業者の保有するデータベース)
→特定の個人には結びつかないが「照会されたテーブルの中で同一人物を表すキー」を付して返す
【パターン2】(例えばNDBや介護DC、DPCデータ、全国がん登録データベース)
→匿名化処理をする前に、本システム(同一人を確認する仕組み)に照会し、システム内で、例えば、履歴管理される最初の個人単位化された被保険者番号を付して返し、そこからハッシュ値を生成してデータベースに格納する
パターン1は、必要に応じて「このXデータの中で、αさんとこのβさんは、特定のだれか迄は明らかにしないが、同じ人物です」「このYデータの中で、γさんとδさんは同じ人物です」という返答をするイメージです。照会の都度にこうした返答を行うため、例えば「Xデータで同一人物とされた人のデータと」「Yデータで同一人物とされた人のデータ」を突合することはできず、特定個人の特定が極めて困難です。
パターン2は、NDB等にデータを格納する段階で、「aさん、bさん、cさんは同一人物かどうか」を照会し、ハッシュ値という鍵で紐づけを行っておく(紐づけしてデータ格納する)イメージです。
過去データについては「高精度な連結に向けた研究」が進む
一方、(D)は、「個人単位の被保険者番号」が存在していない、現在以前のデータをどう紐づけるか、という問題です。
「個人単位の被保険者番号」活用が行えるのは、早くとも2021年3月以降となる見込みです。したがって、高精度に連結が可能となるのは、それ以降に格納されたデータとなります。
すると、これまでに格納されている膨大なデータは「無駄になってしまうのか」という不安も生じます。この点、仕組み検討会及び厚生労働省では、次のような考えを示しています。
▽現在のデータと「個人単位の被保険者番号」適用後のデータと一定程度の紐づけを可能とする(将来のデータに「世帯単位仁保保険者番号」に基づく鍵をつけ、紐づけ可能とする)
▽現在および過去のデータについては、研究者がさまざまな「紐づけ手法」を開発しており、これらを活用する
冒頭に述べたとおり、仕組み検討会では「データ連結の枠組み」の整理にとどめています。個別データベースのデータ連結等に「個人単位に被保険者番号」を活用するのかなどは、それぞれのデータベースの根拠法を所管する審議会等で議論します。例えば、NDB内の中でデータ連結を行う際に「個人単位の被保険者番号」を活用するか否か、などは社会保障審議会・医療保険部会で、介護DBにおいては社会保障審議会・介護保険部会で検討します。近く、各審議会等に仕組み検討会の結論が報告される見込みです。
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