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非営利ホールディングカンパニー型の新型医療法人―厚労省検討会で近く最終とりまとめ

2014.11.27.(木)

 非営利新型医療法人制度の議論が進んでいます。2013年8月に取りまとめられた社会保障制度改革国民会議の報告書では、医療・介護サービスのネットワーク化を図るためには事業者間の競争よりも協調が必要であるとし、「医療法人等が容易に再編・統合できる」ような制度見直しが必要と提言されました。

 具体的には、「医療法人・社会福祉法人について、非営利性や公共性の堅持を前提としつつ、機能の分化・連携の推進に資するよう、たとえばホールディングカンパニーの枠組みのような法人間の合併や権利の移転等を速やかに行うことができる道を開くための制度改正」を検討するよう求められたのです。

 これを受け厚生労働省は13年11月、「医療法人の事業展開等に関する検討会」を設置し、新型法人制度の具体像の検討を進めています。

新型医療法法人(非営利ホールディングカンパニー型法人)制度の創設に向け、詰めの議論が行われる

新型医療法法人(非営利ホールディングカンパニー型法人)制度の創設に向け、詰めの議論が行われる

 14年10月に開かれた7回目の会合では、新型法人の具体的な「仕組み案」が同省から提示されました。検討会では、これをベースに付記・修正を重ね、最終的な取りまとめを行うことになります。

 「仕組み案」の概要と、11月27日に開かれた8回目の会合の模様を合わせて紹介しましょう。

医療事業を行う法人が参加し、新型法人を設立

 まず、新型法人の名称について、同省は「地域連携型医療法人」(仮称)を提案していましたが、田中滋座長(慶應義塾大学名誉教授)はこの日、「地域連携は新型法人に限らず、すべての医療法人が推進しなければならない。『地域連携型医療法人』の名称は悪くないが、地域連携を限定する嫌いがある」と指摘し、同省に再考を促しました。

 新型法人が事業を展開する地域の範囲については、「地域医療構想区域を基本として、地域の医療事業を実施するのに適当な範囲を新型法人が定め、都道府県知事が認可する範囲」とすることが提案されました。

 また新型法人は、医療法人や社会福祉法人など複数の法人による統一的な方針を決定できるようにするため、「参加法人等は複数」であることが前提となる方向です。

 参加法人について、同省は医療事業と介護事業で別個の考え方をとっています。

【医療事業】

 医療事業については当初、「法人・個人を問わず対象とする」としていましたが、これまでの議論を踏まえて「事業地域範囲内における医療事業(病院、診療所等)を実施する法人」と修正されました。

 「医療事業を実施する法人」について同省は限定を設けていませんが、浦野正男委員(全国社会福祉法人経営者協議会総務委員長)は、「社会福祉法人が新型法人に参加すると、自律性が阻害されるおそれがある」と述べ、社会福祉法人を除外すべきだとの見解を示しました。

 この点、同省医政局医療経営支援課の担当者は、「地域医療連携を推進することが新型法人設立の目的であり、多様な法人が参加すべき」との考えを説明しています。

 また、複数の事業地域範囲で病院を開設している法人や自治体病院については、多様な非営利法人の参加を促すために「新型法人と当該法人の事業実施方針が異なる場合の調整規定を設けたうえで、対象を当該地域の病院に限って参加を認める」との考えが示されています。

 例えば全国展開する病院グループで、ある地区の地域医療連携を目的とする新型法人に参加できるのは、その地区にある病院(A病院)だけですが、A病院が別の法人格を取得する必要はないという考え方です。この場合、新型法人の統治はグループ全体ではなくA病院にのみ及ぶことになります。

 この点について田中座長は、「法人論からすれば、新型法人に参加する病院(上記のA病院)はグループとは別の法人となるべきではないか。親組織が複数になることは法制度としておかしい」と述べ、厚労省に考え方を整理するよう要請しています。

【介護事業】

 一方、介護事業を実施する者の参加については、次のような両論があり意見集約に至っていないため、「引き続き検討が必要」とされています。

●社会福祉法人制度改革でも議論されている公益性・非営利性を確保する観点からの厳しい規制が講じられており、課題が多い(慎重意見)

●地域包括ケア推進の観点から、介護事業を実施する社会福祉法人も対象とすべき(積極派)

新型法人による資金貸付の可否は引き続き検討

 新型法人が行う具体的な業務としは、まず参加法人による統一的な事業実施方針の決定が挙げられます。この点、「医療機能の分化・各医療機関等の連携に関する事項」は必ず新型法人が決めることとし、ほかの事項は「自治に委ねる」ことが提案されています。

 「他の事項」としては、参加法人全体の経営を効率化させるため、「法人全体におけるキャリアパスの構築」「医薬品などの共同購入」「参加法人などへの資金貸し付け」なども認める考えです。

 ただし、新型法人による医療機関の直営を認めるかどうかは、「知事が認可した場合に限り認める」「本部機能に特化すべき」などさまざまな意見があるため、引き続き検討することとされました。

 なお、新型法人による参加法人への資金貸し付けや、関連事業を行う企業への出資については次のような考え方が示されています。医療法人の非営利性とも関連するナーバスなテーマなだけに、さら慎重に調整が行われることになるでしょう。

●参加法人への貸付等について、「貸付・債務保証・出資は一定の範囲に限り認めるが、贈与は認めない」「貸付等も認めるべきではない」という二つの見解が対立しており、引き続き検討する

●株式会社等への出資について、「認めない」とする見解と「介護事業や医薬品等の共同購入など地域包括ケア実現に関連する事業を行う株式会社へは、株式保有割合を過半数以上などとする(新型法人が経営の主導権を握る)ことを条件に認める」とする見解があり、引き続き検討する

 後者の「一定の場合に出資を認める」との見解に対して、田中座長は「新型法人が株式を100%保有しなければ、配当という形で資金が流出してしまう。慎重な検討が必要である」旨、注意喚起しました。

●一般社団法人等への出資については、例えば「基金に出資する」ように贈与とならない一定の範囲内で認める

 このほか、「新型法人事務局の人件費等の本部経費を参加法人が会費等として支出する」ことや、「共同研修・購入等の経費は、業務経費として個別に委託料を支出する」ことなどが提案されています。

新型法人による統治方法も引き続き検討

 次に、新型法人による参加法人の統治方法については、社団法人である場合の、社員の議決権について「各一個とすべき」との考え方と、「定款で別の定めを認めるべき」との考え方があり、引き続き議論することとなりました。

 この点、今村定臣委員(日本医師会常任理事)は「新型法人の非営利性に鑑みれば、各一個が大原則である。これと異なる定めは認めるべきではない」と強く訴えました。しかし松井秀征委員(立教大学法学部教授)は「大規模病院と診療所で、議決権を各一個とするのはかえって不平等かもしれない」との懸念を示しています。

 一方、財団法人である場合は、理事については評議員会が選んだ者、評議員については寄附行為(いわば財団法人の定款)で定める方法で選んだ者(例えば評議員会の議決など)が就任することが提案されています。

 また、参加法人の事業計画立案や予算編成など重要事項への関与方法としては、「事項ごとに、意見聴取・勧告を行うことにとどめる」との考え方と、「協議・承認とすることを認める」との考え方が示されており、どちらかを選択することとしてはどうかと提案されています。ちなみに上位の基本方針については、前述の通り新型法人が決定することになります。

 この点、瀬古口精良委員(日本歯科医師会常務理事)や今村委員らは「参加法人の独自性を重視すべきであり、新型法人に強い拘束力を認めてはいけない」と主張しました。しかし、松井委員は「拘束力を強くするか緩やかにするかは選択できる。自治に委ねてはどうか」との考えを示しています。

 さらに、新型法人の理事長要件についても、医師資格を求めるかなど、さまざまな見解があり、引き続き検討することとされました。

 また、新型法人は地域医療連携を進めることを目的としていますので、「地域協議会の開催(新型法人へ意見具申できる)」や「地域関係者の評議員および理事への任命」についての考え方も整理されています。

 このほか、新型法人の非営利性・透明性を確保するための方策として、「配当を禁止する」「解散時の残余財産の帰属先は、国や地方公共団体等に限定する」「設立にあたっては、都道府県医療協議会の意見を聴くこととする」「参加法人は、新型法人に参加している旨をロゴなどで表記する」「公認会計士等による外部監査の実施や、ホームページ等による財務諸表の公告を義務付ける」ことなどが提案されています。

 なお、「新型法人・参加法人全体の財務諸表」作成についても、今後検討することとされました。

 新型医療法人については、14年6月に閣議決定された日本再興戦略で「年内に結論を得るとともに、制度上の措置を来年中に講じる」こととされています。

 厚労省は、検討会の意見等を踏まえて、近く開催を予定している次回の会合に最終取りまとめ案を提示したい考えです。

一定規模以上の医療法人、公認会計士の監査義務付けへ

 また、検討会では「医療法人制度の見直し」に関して、次の4つの考え方が厚労省から示されました。

(1)医療法人の透明性を確保するため、「一定規模以上の医療法人に会計基準(14年2月に四病院団体協議会が作成した医療法人会計基準を基本に検討する)の適用と、公認会計士による外部監査を義務付ける」「一定規模以上の医療法人に計算書類の公告を義務付ける」「メディカルサービス法人(MS法人)と医療法人の関係を事業報告として報告させる」こととする。

(2)医療法人のガバナンスを強化するため、「理事長及び理事の忠実義務、損害賠償責任等」を医療法に規定して明確化する(ただし、現状でも損害賠償責任等があり、確認規定となる)

(3)医療法人の分割規定を制度上規定し、「分割計画書等を分割前の医療法人が作成した上で、都道府県知事の認可があれば実施できる」こととする

(4)「へき地医療拠点病院へ医師派遣を行う一定の医療法人」を社会医療法人に認定するなど、地域の実情を踏まえた要件とできるよう、関係者と調整する

 これらの見直し案についても、次回会合で最終とりまとめ案が厚労省当局から示される模様です。