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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

「医療の価値を上げるコスト削減」をテーマにGHCセミナー―コスト削減が院内活性化にもつながる

2014.12.2.(火)

 「病院におけるコスト削減」をテーマとしたセミナーが、11月28日、東京・新宿のGHCオフィスで開催されました。セミナーは2部構成で、第1部では「医療材料などコスト削減対策と『共同購買/GPO』の活用」について日本医療共同購買会の木内雅人事務局長が、第2部では「組織横断的な取り組みによる『価値を上げるコスト削減』」についてGHCマネジャーの湯浅大介が講演しました。

 診療報酬のプラス改定が難しい昨今、収益改善に当たっては「コスト削減」が必須となります。

 GHC社長の渡辺幸子は、セミナーの冒頭に「コストコントロールなくして病院経営は成り立たない時代に入った。医療の価値を上げながら、どうコストを削減していくか。病院経営においてきわめて重要なテーマ」と強調しました。

GHC代表取締役社長の渡辺幸子

GHC代表取締役社長の渡辺幸子

 今回は、第2部のGHCマネジャー湯浅の講演内容をご紹介します。

院内プロジェクトチームで、価値を上げながらコスト削減

 第2部では、病院の価値を上げながらコストを削減する手法について、実例を交えながら解説が行われました。

GHCマネジャーの湯浅大介

GHCマネジャーの湯浅大介

 湯浅はコスト削減活動について、「患者数の増加や、新たな採用などを伴わずに利益を生み出す」ものだと強調しました。ただし、コスト削減手法を誤れば医療の質低下を招きかねず、本末転倒に終わってしまいます。

 そこで湯浅は、医療の質を高めながらコストを削減するためのVAT(Value Analysis Team)という概念を紹介しました。これは、「価値(Value)=質(Quality)/コスト(Cost)」という価値の方程式を使って、医療の質とコストの関係を探っていくものです。具体例を用いて説明しましょう。

 まず、コストを下げながら質を高めるケースの例としては、在庫削減による不用品の使用見直しなどが挙げられます。

 これに対して、コストを下げながら質を維持する例としては、第1部のテーマでもある医療材料の価格交渉などが該当します。

 さらに、コストを維持したまた質を高める例として、「特別食加算」などの算定が挙げられます。特別食加算は治療食等を医師の処方に基づいて提供する場合に算定できる加算ですので、新たなコストをかけず職員の労力を一定程度増やすのみで算定できる加算は、この類型に属すると言えるでしょう。

 一方、優れた医師の採用など、短期的にはコストも高まりますが、それ以上に質が向上する例もあります。優先度の高い設備投資や人材育成などが代表的です。

 これらによってサービスの価値向上を見込めるため、積極的に取り組む必要があります。

 逆に、「低価格で使いにくい代替品への切り替え」(コストも質も低下する)、「優先度の低い設備投資」(コストが上がり質は低下する)などでは医療の価値を引き下げるので、慎まなければなりません。

 医療の質を高めながらのコスト削減に、担当者が単独で取り組むのは困難です。そこで、A病院では院長直轄のプロジェクトチームVATを設置してコスト削減の実効性を高めています。

 VATのメンバーは医師2人(1人は副院長)、看護部・リハビリ部・薬剤部・医事課・情報管理室・企画室から1人ずつの計8人です。

 VATでは、理事長や病院長のブレーンとしてトップの考えを各部門に分かりやすく伝えたり、逆に各部門からの要望を整理してトップに伝えたりしています。さらに、「院内のコーディネーター」として幹部会議から一定の権限を移譲されていて、部門間の利害を調整する重要な役割もカバーしています。

 メンバーは、個人としてコストに関する問題意識を持つとともに、必要に応じて適切なメンバーとチームを組んでコスト削減に取り組んでいきます。

 ただし、VATだけでコスト削減に取り組むわけではありません。「改善事項をリストアップし、優先順位を付ける」→「全病院のコストを分析し、ベストプラクティスの病院と比較した上で改善案を作成する」→「職員と共にコスト削減活動を実施し、組織横断的・定期的に情報共有を行う」という手順を踏み、院内が一丸となってコスト削減に取り組むことが重要となります。

 このように、コスト削減には「適正な市場価格の把握」「的確な価格交渉」「院内の協力体制の整備」の3点がそろわなければ実現できません。

 A病院における具体的なコスト削減事例としては、次のような取り組みが挙げられます。

●レントゲン室で使用する線量計を、本当に必要なメンバーのみが所持する形にしたところ年間132万円の削減を達成

●感染性廃棄物を捨てる際に、「一つの段ボールに可能な限り詰める」「感染性のない一般の廃棄物をこの段ボールに入れない」ことなどを徹底

●観葉植物、水槽のレンタルを廃止

●液体酸素の購入価格を交渉によって引き下げ、年間約2000万円を削減

 湯浅は、こうした取り組みによってコスト削減だけでなく「医療の質の向上」や「組織の横断的取り組み」も見込めると強調し、講演を締めくくりました。

診療報酬改定セミナー2024