財政審「介護報酬マイナス6%」あらためて提言
2014.12.26.(金)
財務相の諮問機関である財政制度等審議会が25日、「15年度介護報酬改定はマイナス6%とすべき」ことなどを盛り込んだ2015年度予算編成に向けた建議を取りまとめ、麻生財務大臣に提出しました。建議は、財務省が国家予算の原案を作成する際の拠り所となるものです。
建議では、一般会計で歳出が歳入を大きく上回って伸び続け、「普通国債発行残高」が約780兆円に及ぶ点について、「国際的にも歴史的にも類を見ない水準」と指摘。その上で、「日本政府の財政健全化の取り組み姿勢に市場が疑念を抱いた場合、金利が急上昇し、金融緩和策の効果が失われるだけでなく、政府の資金調達が困難になり、政府・日銀では対応できない事態となる恐れがある」と警鐘を鳴らしています。
このため政府は、「基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を15年度に10年度比で半減させる」「プライマリーバランスを20年度までに黒字化する」という目標を掲げていますが、消費増税の先送りなどによって達成は困難な状況です。
こうした状況を踏まえて建議では、歳出増の最大要因である社会保障給付費について徹底した適正化を要請しています。具体的には、次の3本の柱に沿って社会保障改革を進め、給付費を抑制すべきとしています。
(1)急性期病床の削減や平均在院日数の短縮などの「医療介護提供体制改革」、収支差を踏まえた報酬の抑制や薬価引き下げなど「単価の伸びの抑制」、後発医薬品の使用促進など「保険給付範囲の見直し・重点化」による徹底した合理化・効率化
(2)年齢や制度でなく、経済力に応じた公平な負担の確保
(3)(1)(2)を行った上で、在宅医療の推進や地域包括ケアシステムの構築など、真に必要な新しい政策課題への対応にするための財源確保
「医療提供体制改革」については、4つの改革を行うべきだと提言しました。
第1に、都道府県が15年度から策定する「地域医療構想策定ガイドライン」の中で、「データに基づき客観的に求められた地域のあるべき病床数」「平均在院日数を踏まえた医療提供体制の在り方」「入院受療率などの不合理な差異を解消した医療提供体制の在り方」を示し、不合理な差異を解消した医療提供体制を「目指すべき医療提供体制」と明確に位置付けるよう求めています。
第2に、都道府県の医療計画の中に、「地域医療構想と整合的な医療費の水準に関する目標」や「平均在院日数や後発薬使用割合等の医療の効率的な提供に関する目標」を明確に位置付け、目標を達成できない場合の改善措置を明らかにするよう要望しています。
第3に国保の運営責任・権限を都道府県へ移行させ、第4に病床機能分化・連携や医療費適正化に向けた保険者の努力を促すことも提案しました。
医療保険制度改革に関しては、「保険給付範囲の抜本的見直しによる重点化」「後発薬使用割合に関する目標の引き上げ」「先発医薬品について、後発薬の価格を超える部分を全額患者負担とする『参照価格制』の導入」「リスクの大きさやQOLへの影響度に応じた患者負担の在り方の検討」「薬価調査・薬価改定の在り方見直しの検討」などが提案されています。
さらに、負担の公平確保に向けて次のような具体策を提言しています。
●「高額療養費の外来特例の廃止」「後期高齢者医療の保険料特例措置の段階的廃止」によって、現役世代と同じ負担能力を有する高齢者に、現役世代と同等の負担を求める
●「後期高齢者支援金の全面総報酬割」(医療保険の加入者数だけでなく、負担能力を勘案した負担の徹底)、「標準報酬月額の上限引き上げ」により、現役世代内の負担公平化を目指す
15年度の介護報酬改定率については、「全体としてマイナス6%程度の適正化」を行うよう要望しました。ただし、同時に「介護職員の処遇改善加算の拡充」や「定期巡回サービス等の充実」も求め、めりはりの付いた報酬改定を求めています。
また、「社会福祉法人では1施設当たり約3億円、特別養護老人ホーム全体で約2兆円という巨額の内部留保が蓄積されている」と指摘し、「特別養護老人ホームの基本報酬を大幅に引き下げる」よう求めています。
さらに、次の介護保険制度改革で「軽度者に対する介護保険給付を地域支援事業に移行するなど、地域給付範囲の抜本的な見直し」「サービスの質を確保しつつ、確実に価格競争が行われる仕組みの構築」「利用者負担の見直し」「介護療養病床の改革」を検討し、持続可能な介護保険制度とすることも提言しました。