14年7-9月の医療事故は755件、ヒヤリ・ハットは7828件-医療事故情報収集事業
2015.1.6.(火)
日本医療機能評価機構がまとめた「医療事故情報収集等事業」の第39回報告書によりますと、2014年7-9月に報告された医療事故は755件、ヒヤリ・ハット事例は7828件に及びました。
報告書は先月25日付で公表されました。
この期間に報告があった医療事故755件を「事故の程度」別に見ると、「死亡」が38件(全体の5.0%)、「障害残存の可能性が高い」が87件(同11.5%)、「障害残存の可能性が低い」が219件(同29.0%)、「障害残存の可能性なし」が214件(同28.3%)などとなっています。重篤な医療事故は前回(14年4月-6月)に比べて、「死亡」は4.3ポイント減少、「障害残存の可能性が高い」は2.87ポイント増加しています。
また医療事故の概要を見ると、最も多いのは「療養上の世話」で313件(同41.5%)、次いで「治療・処置」170件(同22.5%)、「薬剤」53件(同7.0%)などと続いています。
一方、事故の発生要因(複数回答)では、医療従事者・当事者の「確認の怠り」11.0%、「観察の怠り」10.5%、「判断の誤り」10.3%などが目立ちます。もっとも、患者側に起因する事故も11.4%起きており、事故防止に向けた幅広い対策が必要と言えるでしょう。
事故に関連した診療科としては、整形外科が136件で全体の14.3%と突出しています。整形外科で生じた医療事故の概要では、「療養上の世話」に起因する事故が83件で最も多く、整形外科における事故の61.0%、医療事故全体の11.0%を占めています。
次にヒヤリ・ハット事例の状況を見てみましょう。14年7-9月に報告された事例は7828件あり、うち3789件は当該行為を実施するには至っていません。この3789件を響度別に見ると、「軽微な処置・治療が必要、もしくは処置・治療が不要と考えられる」事例が95.8%と大部分を占めていますが、「濃厚な処置・治療が必要と考えられる」が3.2%、「死亡・重篤な状況に至ったと考えられる」も1.0%生じていることから、十分な留意が必要です。
またヒヤリ・ハット事例7828件の概要を見ると、「薬剤」が最も多く3067件(ヒヤリ・ハット事例全体の39.2%)、次いで「療養上の世話」1508件(同19.3%)、「ドレーン・チューブ」1162件(同14.8%)となっています。「薬剤」に関連する事例が医療事故に比べて多い点が特徴と言えます。
事故の発生要因(複数回答)としては、医療従事者・当事者の「確認の怠り」24.0%が飛び抜けて多く、「観察の怠り」9.5%、「判断の誤り」8.4%などと続きます。医療事故に比べて「確認の怠り」の割合が高い点が注目に値します。一歩間違えば大事故に直結する可能性もあるだけに、現場の業務フローを今一度見直す必要があるかもしれません。
報告書では毎回テーマを絞り医療事故の再発防止に向けた分析も行っています。特に「職場経験1年未満の看護師・准看護師」による医療事故やヒヤリ・ハット事例が多い点に着目した分析が、第37回から4回連続で行われることとなっています。
そのうち「ドレーン・チューブ」における医療事故の分析結果を見ると、職場経験1年未満の看護師・准看護師では「末梢静脈ライン」「栄養チューブ(NG・ED)」の患者による抜去や自然抜去、誤切断といった医療事故やヒヤリ・ハット事例が多くなっています。報告書では「使用されている頻度が多いため、事故等の報告も多くなる」と指摘した上で、「新人看護師への教育に際しては、作業手順だけでなく『なぜ行うのか』という根拠や、『間違えやすいのはどんなことか』『間違えるとどうなるか』といった危険性の教育も合わせて行う必要がある」と提言しています。