保健・医療・福祉を「生活重視型」に-「2025年」見据えて日看協がビジョン案
2015.1.16.(金)
日本看護協会は16日、「看護の将来ビジョン」(案)を発表しました。いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年を見据えた社会保障制度改革の中で、看護職がどうあるべきかを示すものです。「生活重視型」の看護への転換を目指したもので、日看協としては地域の生活を支える訪問看護の事業所の新設や事業所同士の連携推進などを掲げています。
ビジョン案では、まず2025年に向けた保健・医療・福祉の課題として、▽慢性疾患を抱える高齢者のニーズに対応する人材確保▽健康問題への社会としての対応▽「生活の質」を重視した総合的な支援-を挙げました。
こうした課題に対処するためには、「生活を重視する保健・医療・福祉制度への転換」が必要と指摘しています。具体的には、「地域完結型」医療の志向、地域包括ケアシステムの構築、データに基づく公正な議論による医療・介護制度改革の推進などが必要となります。
そのため看護についても、「医療の視点」と合わせて、「生活の質」を向上する役割を質・量の両面から拡大し、「生活モデル」への転換に挑戦していく姿勢を明確にしました。
「生活モデル」へ転換するための日看協の活動にも言及し、「生活を重視する保健・医療・福祉制度への転換」を促進するために、▽訪問看護ステーションのネットワーク化の推進など、暮らしの場での看護機能を強化▽地域包括ケアシステム構築に参画▽質の高い看護人材を育成する教育・研修・資格・認証制度を構築▽質の高い看護実践を支える看護管理と看護研究を強化▽看護人材を確保し労働環境を整備-する方針を打ち出しています。
ビジョン案では、▽いのち・暮らし・尊厳を守り支える▽生涯にわたり生活と保健・医療・福祉をつなぐ―ことが看護に求められていると強調。後者については、次のような具体像を示しています。
(1)健やかに生まれ育つことへの支援
(2)健康に暮らすことの支援
(3)緊急・重症な状態から回復することへの支援
(4)住み慣れた地域に変えることの支援
(5)疾病・障害とともに暮らすことの支援
(6)穏やかに死を迎えることの支援
このうち(3)の「緊急・重症な状態から回復することへの支援」を行うため、看護職に▽医療の高度化に対応するための質の高い看護の提供▽多職種との協働を促進するリーダーシップと職種間をつなぐマネジメント▽医療安全管理体制の整備▽移植・再生医療など医療技術・治療法の進歩に対応するための新たな知識・技術の獲得▽患者の人権と意思の尊重-などを求めています。
また(4)の「住み慣れた地域に変えることの支援」を充実するには、看護職が「患者が暮らしの場に戻ること」を常に意識する必要があると指摘しています。そのため、▽理学療法士らと連携したリハビリの実施▽入院の段階からの退院計画の策定▽退院後の生活を具体的に描いた退院支援の実施▽患者のセルフケア能力向上の支援-を行うよう提言しています。
さらに、超高齢社会の中では(6)の「穏やかに死を迎えることの支援」が極めて重要なため、ビジョン案では、人生の最終段階における医療は「専門職としての客観的な視点を持ちつつ、相手と共に存在する」という看護の本質が発揮される場面だと指摘。看護職に対して、▽「死」や「看取り」の理解を深める▽「死」に関する告知や意思決定の場面で患者・家族を支援する▽苦痛を軽減する処置を積極的に行う▽不安を緩和する▽残された家族の悲しみを和らげる(グリーフケア)▽「死」にあたって、どこまで医療介入を行うかの合意形成を促す―といった役割を果たすよう求めています。
日看協は、広く意見を募り、正式な「看護の将来ビジョン」を固めたい考えです。意見は1月末まで募集しています。