打率7割の改善手法「対話形式」とは、平塚共済の事例で学ぶ現場を動かすデータ分析
2018.2.5.(月)
複数の経営改善プロジェクトで成果を出す「平塚共済病院」の事例が、ヘルスケアIT活用情報誌「ITVision」(2018年2月号)に掲載されましたので、ご紹介いたします(ホームページはこちら)。
16項目の改善提案を作成し、そのうち11項目で改善効果を確認。約7割の打率を誇る改善活動を支えるのは、多機能型経営分析システム「病院ダッシュボードχ」の活用に加え(事例で活用したのは前身の「病院ダッシュボード」)、実効性の高い現場への改善提案手法「対話形式(Face to Face)」がありました。本稿では、同院独自の「対話形式」に絞って解説します。
プレゼン形式5つの疑問
「ITVision」の連載「実践的データマネジメントによる病院経営ストラテジー」の枠で、同院の経営企画課課長代理の田中洋行氏と坂本陽典氏が寄稿。「分析システムと対話形式の提案で柔軟かつ効率的な経営改善を推進」と題して記事掲載されています。
平塚共済病院が最近の取り組みで改善効果を確認したのは、抗生物質製剤の使用基準の標準化による平均使用額減少(呼吸器内科:肺炎)、リハビリテーションの早期介入による早期改善(同)など計6診療科11項目。いずれも医療と経営の質向上に大きく貢献してきました。これら改善活動はデータ分析に基づくもので、具体的には(1)DPCデータを分析し、診療部門に提案書を作成(2)対話形式で診療科の部長へ提案――の大きく2つの手順に整理できます。
(1)はデータ分析に基づく経営改善の基本ですが(関連連載『病院ダッシュボード入門講座』『GHC病院経営データ分析塾』)、(2)対話形式とはどのようなものなのでしょうか。
改善活動は、データ分析と同様に提案方法が重要です。提案方法は、プレゼンテーション方式が一般的で、その強化を目指すとなると、いわゆる「プレゼン力」を鍛えることに注目されることがほとんど。しかし、平塚共済病院はそもそものこの考え方自体に疑問を投げかけました。理由は以下の通りです。
- 現場の医師や看護師たちは忙しく、関係者が集まれないことも多い
- 分析結果とそれに基づく改善提案を短時間で伝えることは困難
- プレゼン方式は一方通行のコミュニケーションとなり、意思疎通がしづらい
- 提案内容の大半は「今の現場には課題がある」という内容で、現場の医療従事者の反発を招いたり、伝えたい意図が正確に伝わらなかったりするリスクがある
- 各診療科の責任者が参加しないケースもある
付加価値生む「寄り道の議論」
特に、多忙で「5.」のような状況になると、プレゼンの場が意思決定者不在の場になってしまい、たとえプレゼンが素晴らしくても、結局は何も変わらないという事態にもなりかねません。
そこで導入した対話形式で改善提案を行うFace to Faceの面談は、必ず診療科の部長と行います(部長の予定がキャンセルになった場合は、面談も必ず延期)。また、プレゼン形式と異なり、対話形式はお互いの状況について対話を重ねながら確認し、じっくりと改善に向けた対策を検討することができます。
対話形式には思わぬ付加価値が得られることも期待できます。プレゼンは結論ありきで、そこに最短距離でたどり着くことが良しとされ、いわゆる寄り道の議論を良しとしない傾向があります。しかし、対話形式であれば、寄り道の議論を良しとし、対話の中からこれまでに分析実施者が想定もしなかった情報が得られることもあります。改善提案をすると同時に、新たな課題の発見につながることも期待できます。
「ITVision」は全国の病院へ郵送
いかがでしたでしょうか。ITVision本誌では、平塚共済病院の経営改善事例がより詳しくレポートされています。特に、現場への改善提案に悩む病院職員の方は、ご一読されることをお勧めします。ITVisionは、定期購読のほか、ホスピタルショーなどのイベントでの配布、全国の病院へ郵送されています。
また、「病院ダッシュボードχ」を活用した経営改善事例は、以下の紹介ページや関連連載でも確認できますので、是非、ご覧ください。