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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

開発責任者が語る、がん分析ツールを開発して無償配布するたった一つの理由

2015.2.26.(木)

 がん診療連携拠点病院の病院長や医師など有志で構成される「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」の第11回会合が7月25日に開催されることを受けて、GHCはがんに特化した分析ツール「キャンサーダッシュボード」を新たに開発し、CQI研究会の参加者に無償配布することを決めました(プレスリリースはこちら)。

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 「キャンサーダッシュボード」は、データ分析のスキルやノウハウがなくても、がん医療の質向上で重要な指標について、全国平均と自病院の立ち位置を簡単に確認し、各種の改善活動につなげるためのツールです。

 開発中の「キャンサーダッシュボード」の概要や開発の背景について、開発を指揮するGHCの井口隼人マネジャー(紹介ページはこちら)に聞きました。

術後の手術開始日を2日短縮

 GHCは、2007年に初めて実施された「第1回CQI研究会」から、一貫してそのデータ分析を担当しています。日本で長年、死亡原因1位の疾患であるがんにこそ、GHCが日本に広めたベンチマーク分析の有用性を感じているためです。

 井口は、「自病院と他院の治療法を比較するベンチマーク分析を用いなければ、知り得ない重要な指標は驚くほど多い」と指摘します。日本で初めてがん医療のベンチマーク分析を行う研究会として発足したCQI研究会では、ベンチマーク分析により改善点を見つけ出し、驚くほどの改善効果を上げた事例もあります。

 例えば、胃を切除した患者の食事開始日。手術後4日目に多くの病院が集中していた中で、6日目だった病院は抗生物質の種類や投薬量を変更するなどして治療計画を見直した結果、自病院の術後の食事開始日を2日間も短縮しました。「食事開始日を短縮できれば、その分だけ患者の回復が早まり、術後感染症の発症率も低下し、在院日数も短縮することで病院の経営改善、さらには国民医療費の削減にも寄与します」(井口)。

 他病院との比較の結果、術前の処置や薬剤投与量を調整したことで、コスト削減につながったケースもあります。国内に散りばめられた英知を集め、共有することで、がん医療の質改善とコスト削減を促せれば、結果として「医療の価値(質/コスト)」を向上できる可能性があります。

プロの分析を誰でも簡単に再現

 「医療の価値」を高めるCQI研究会のこうした活動をさらに支援するため、GHCは「キャンサーダッシュボード」の開発を決定しました。「コンサル視点が瞬時に分かる」をコンセプトにGHCが独自開発した次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」で得たノウハウを、「キャンサーダッシュボード」の開発にフル活用します。

 「キャンサーダッシュボード」は、直感的な操作で簡単かつ瞬時に課題を探すことができる仕組みになっています。これまで主流だったDPCデータ分析ソフトに対して、レセプトや手術などの多様なデータも合わせて活用することで、外来や手術など状況も分析できることが特徴の一つ。また、GHCが10年間培ってきたコンサルティングと医療データ分析の経験とノウハウで重要な経営指標をあらかじめ設定し、青、黄色、赤の信号色で経営状況を瞬時に確認できます。

 今回は第11回CQI研究会で分析対象となる肺がん、大腸がんに乳がんを加えた3種類のがんの分析に特化した形で、「キャンサーダッシュボード」のサービスをリリースします。CQI研究会の参加者に無償配布する理由を井口は、「DPCデータの分析はもちろん、その他のデータも用いた分析には専門的な知識やスキルが必要で、日ごろ、診療に忙しい先生方がすぐに実施するのは難しい。プロの分析を簡単に、かつ、無償ツールで実施することができるようになれば、CQI研究会の活動をさらに推進するための一助になり得ると考えました」と話しています。

 第11回のCQI研究会は以下のページから参加申し込みすることができます。がん診療連携拠点病院あるいはそれに準じる病院は「キャンサーダッシュボード」を無償で利用することができるほか、がん医療の質の高さに定評のある米国クイーンズメディカルセンターのがんセンターで活躍するキーマンが来日して講演も予定しています。がん医療に携わる皆さんはぜひ、ご覧ください。

「第11回CQI研究会」参加申し込みページ

解説を担当したコンサルタント 井口 隼人(いぐち・はやと)

iguchi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
筑波大学生物学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。病床戦略支援、人財育成トレーニング、DPC分析、がん分析、臨床指標分析などを得意とする。東京医科大学病院(事例紹介はこちら)、相澤病院、旭川赤十字病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「ダイヤモンドQ」(関連記事はこちら)など雑誌、テレビ、新聞などへのコメントも多数。
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