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「現場のモラル、モチベーションを下げる医療改革は許されない」-厚労省地域医療対策室の佐々木室長がGHCセミナーで講演

2015.3.2.(月)

 地域医療構想や非営利ホールディングカンパニー型法人の議論が進む中、GHCは2月28日、「地域医療構想下における病院の大再編」と題するセミナーを東京都内で開催しました。セミナーでは、厚生労働省医政局医師確保等地域医療対策室の佐々木昌弘室長が地域医療構想を含めた医療提供体制の再編について解説したほか、GHC会長のアキよしかわと同社長の渡辺幸子は、「医療提供体制改革の先には、病院の再編統合がある」という見通しを示し、病院を再編統合する際のポイントについて解説しています。

 なおGHCは5月23日にも「病院の再編統合」をテーマにしたセミナーを行いますのでぜひ、ご参加ください。

地域医療構想の中で、都道府県からの情報を十分に活用すべき


厚生労働省医政局の地域医療計画課・医師確保等地域医療対策室の佐々木昌弘室長

厚生労働省医政局の地域医療計画課・医師確保等地域医療対策室の佐々木昌弘室長

 厚労省の佐々木室長は「日本は世界一の医療システムを誇っているが、それは現場のモラルとモチベーションの高さで維持されている。これが下がるような医療制度改革を行うことはあってはならない」と強調。

 その上で、地域医療構想を実現するために(1)医療機関の自主的な取り組み(2)協議の場(3)地域医療介護総合確保基金-の3つが重要と指摘。特に(3)の基金は「10年後の地域の医療提供の姿を実現するもの」として、(2)の「協議の場」で使い道を議論してほしいと要望しました。

 また、厚労省が提示する、いわゆる「ワイングラス型」の現時点の医療提供の姿と、「乳酸菌飲料型」の将来の医療提供の姿に触れ、「現在の姿は看護配置を表したもの、後者は機能を表したもの」と説明しました。

 昨年11月に締め切られた初回の病床機能の報告では、▽高度急性期17万6193床▽急性期53万3078床▽回復期10万2493床▽慢性期31万7856床(今年1月16日現在の集計分)-となり、「乳酸菌飲料型」の図で示された▽高度急性期約18万床▽一般急性期約35万床▽亜急性期等約26万床▽長期療養約28万床-と比べて、「急性期と回復期以外は、大きくずれていない」と指摘。さらに「回復期はいわゆるポストアキュートも担うと整理されており、急性期と回復期の概念をきちんと説明していけば、急性期と回復期でも大きなずれはないのかもしれない」旨の推測をしています。

 地域医療構想は医療計画の一部という位置付けですが、策定プロセスにおいて▽厚労省からのデータ提示▽患者の流出入の考慮▽都道府県から病院への年2回のフィードバック-という違いがあると説明。最後の「都道府県から病院へのフィードバック」は、地域の他病院の状況を情報提供するものですが、「この情報を活用するか否かで病院に大きな差がついてくる」ことを強調しています。

◆変更履歴
厚労省佐々木室長の記事中に、「回復期はいわゆるサブアキュートも担う」とありましたが、正しくは「ポストアキュート」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。【2015/03/4更新】

地域医療構想の先には「病院の再編・統合」がある


GHC社長の渡辺幸子

GHC社長の渡辺幸子

 GHCの渡辺は、地域医療構想ガイドラインをめぐる議論の最新状況を報告するとともに、医療提供体制改革の先に「統合・再編」があるとの考えを強調しました。

 病院・病棟の機能分化を進める場合、同時に連携を推進しなければ、十分なサービスを提供できません。渡辺は、「連携」から「病院の完全統合」までさまざまなケースがあり得るとしましたが、「シームレスなケアを提供するためには、複数の病院がグループ化するIDS(integrated delivery system)の構築を考えるべきではないか」と問題提起しました。

 IDSは「異なる機能の医療機関」が統合する垂直統合と、「同じ機能の医療機関」が統合する水平統合をミックスしたもので、患者には「シームレスで質の高い医療・介護サービスが受けられる」、国には「医療費の適正化」や「病床機能のミスマッチ是正」、医療機関には「規模の経済」「臨床面での統合(クリニカルインテグレーション)」「マーケットシェアの拡大」「事業リスクの回避」などのメリットがあります。

 特に渡辺が強調したのは、「IDSを構築することで、医療の質が向上する」という点です。日本では、人口当たりの医療機関数が多いため、症例が分散してしまいます。米国のスタンフォード大学やメイヨークリニックとGHCとの共同研究によれば、病院当たりの症例数が少なくなると、術後合併症の発症率が高まるなど医療の質の低下がみられるというデータがあります。

 また、渡辺は病院の再編統合を進めるためのポイントとして、県立と市立の病院が08年に統合した日本海総合病院(山形県酒田市)の実例を挙げ「再編後に自分の居場所がなくなってもよい」という覚悟を、キーマンが持てるかどうかが非常に重要だと強調しています。

現在の日本は、米国における病院淘汰時代に近い状況


GHC会長のアキよしかわ

GHC会長のアキよしかわ

 GHCのアキは、「米国ではDRG/PPSが1983年に導入され、その後、病院の淘汰が進んだ。現在の日本はその状況に近くなっている」と指摘しました。DRG/PPSの下では、平均在院日数の短縮や手術の外来化が進み、病床が過剰となります。さらに、米国では保険者が医療の内容に介入するマネジドケアが進みました。

 こうした背景の中で、病院側には「再編・統合を進める」必要性が高まり、1980年から2004年にかけて病院数は17%、急性期の病床数は36%減少しています。ただし、単なるダウンサイジングではなく、組織化して総合的な医療サービスを提供するIDS(integrated delivery system)を構築し、質の高い医療サービスを提供しています。

 アキは、IDSを成功させるために、▽ITの活用▽調和の取れた戦略▽病診連携(シームレスケア)▽クリニカルインテグレーション▽ガバナンスの明確さ▽戦略的統廃合▽ディシーズマネジメント(疾病管理)▽ベンチマーク-など、さまざまな条件があると指摘し、特に重要なのは「クリニカルインテグレーション」と「ガバナンスの明確さ」であると強調します。

 前者の「クリニカルインテグレーション」は、「クリニカルパスの統一」に代表されます。

 ところで、米国のマネジドケアのような仕組みが日本に登場することを想像するのは難しいかもしれません。しかし、財務相の諮問機関である財政制度等審議会では昨年、保険者が医療費の目標値を設定し、それを達成できない場合には一定のペナルティを付与する仕組みを議論しています。また、今通常国会に提出される医療保険改革の関連法案では、▽国保の都道府県単位化▽医療費適正化計画の見直し―が盛り込まれるなど、保険者の力を強化していく方向が伺えます。

 こうした状況を的確に分析し、日本でも医療機関の統合・再編を検討する必要性が高まっていると考えられるのでないでしょうか。

【訂正】
 本文6パラ目の佐々木室長のコメント部分を、「『回復期はいわゆるサブアキュートも担うと整理されており、急性期と回復期の概念をきちんと説明していけば、急性期と回復期でも大きなずれはないのかもしれない』と推測しています」から、「『回復期はいわゆるポストアキュートも担うと整理されており、急性期と回復期の概念をきちんと説明していけば、急性期と回復期でも大きなずれはないのかもしれない』旨の推測をしています」に訂正しました。