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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

16年度改定、急性期病床の「高度な医療必要な患者受け入れ」を評価-中医協総会

2015.3.4.(水)

 中央社会保険医療協議会の総会は4日、2016年度診療報酬改定に向けて入院医療に関する総括的な議論を交わしました。厚生労働省は、▽急性期病床における「緊急性の高い患者」「高度な医療を要する患者」の受け入れに対する評価▽地域包括ケア体制の強化や円滑な医療連携を進めるための方策▽慢性期病床における「患者の状態像に応じた評価」-などを検討してはどうかと提案しています。

3月4日に開催された、「第292中央社会保険医療協議会・総会」

3月4日に開催された、「第292中央社会保険医療協議会・総会」

急性期で、緊急性の高い患者などの受け入れを評価

 厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は、現在の急性期病床には次のような特徴・課題があることを説明しました。

▽平均在院日数を見ると、7対1の13.8日(標準偏差は2.8日)に対し、10対1は16.3日(同3.9日)とばらつきが大きい

一般病棟7対1の平均在院日数は13.8日、同10対1の平均在院日数は16.9日

一般病棟7対1の平均在院日数は13.8日、同10対1の平均在院日数は16.9日

▽幅広い疾患に対応する病院の平均在院日数は10-15日程度だが、少数の傷病を中心に見る専門病院ではばらつきが大きい(診療科による違いももちろんある)

専門病院では、診療科による違いもあり、平均在院日数の短い病院から長い病院まで多様である

専門病院では、診療科による違いもあり、平均在院日数の短い病院から長い病院まで多様である

▽重症度の高い患者の割合を見ると、7対1よりも10対1でばらつきが大きい

「重症度、医療・看護必要度」のばらつきは、7対1よりも10対1で大きい

「重症度、医療・看護必要度」のばらつきは、7対1よりも10対1で大きい

▽救急患者の受け入れ状況を見ると、年間300件程度の病院が多いが、3000件以上の病院も存在する

救急患者の受け入れ状況を見ると、年間300件程度の病院が多いが、年間3000件を超える病院もある

救急患者の受け入れ状況を見ると、年間300件程度の病院が多いが、年間3000件を超える病院もある

 こうした点を踏まえて宮嵜課長は、次期改定に向けて「緊急性の高い患者や、高度な医療を要する患者の受け入れの評価」「連携や在宅復帰の推進を図る方策」などを検討してはどうかと提案しました。

 この点に関連して、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)からは「空床を埋めるためにケアミックスのような体制をとっている大規模な公立病院がある。この場合は病床を減らし、高度急性期・急性期医療の提供に特化すべきだろう」といった指摘がなされています。

回復期リハ、患者像の明確化などが検討テーマに

 14年度の改定では「地域包括ケア病棟・病床」の創設も入院機能の分化を促す目玉となりました。これらの病棟や病床には(1)急性期治療を終えた患者の受け皿(2)在宅療養患者が急変した場合の受け入れ(3)在宅復帰の支援-という3つの機能を果たすことが期待されるほか、7対1からの移行先の候補として高い報酬が設定されています。

 14年10月時点での地域包括ケア病棟・病床の届け出状況を厚労省が調べたところ、▽全体で約2万4600床▽入院料1(病棟単位)が約1万4400床▽入院料2(同)が約1000床▽入院医療管理料1(病室単位)が約8400床▽入院医療管理料2(同)が約800-という結果です。届け出を行った病院では、7対1が約9100床、10対1が約1900床減少しています。

地域包括ケア病棟・病床の届出、2014年10月時点で約2万4600床に(図中の数値は誤植)

地域包括ケア病棟・病床の届出、2014年10月時点で約2万4600床に(図中の数値は誤植)

 入院医療管理料は200床未満の病院でしか届け出ができず、病床数は少ないことが分かります。この点について、鈴木委員は「地域包括ケア病棟・病床は本来、かかりつけ医の機能も持つ200床未満の中小病院のために創設されたものと理解している」と述べ、次期改定での対応を求めました。地域包括ケア入院医療管理料の算定病床を増やしていく方策が検討される可能性もあります。

 また、急性期医療と在宅医療をつなぐ「回復期リハビリテーション病棟」の病床数は2000年には1675床でしたが、13年には6万6878床に伸びており、リハの提供の単位数も増加している状況が伺えます。

回復期リハビリ病棟におけるリハビリの実施状況を見ると、年次を追って増加していることがうかがえる

回復期リハビリ病棟におけるリハビリの実施状況を見ると、年次を追って増加していることがうかがえる

 しかし、患者像を見ると「入院時のADL(日常生活動作)や看護必要度、入院中のADL向上の度合いに病院間で大きなばらつきがある」ことが分かりました。

回復期リハ病棟における入院患者の入院時のADL、ばらつきの大きなことがわかる

回復期リハ病棟における入院患者の入院時のADL、ばらつきの大きなことがわかる

回復期リハビリ病棟における入院患者の看護必要度、やはりばらつきが大きい

回復期リハビリ病棟における入院患者の看護必要度、やはりばらつきが大きい

回復期リハ病棟における入院患者のADL向上の度合い、こちらもばらつきが大きい

回復期リハ病棟における入院患者のADL向上の度合い、こちらもばらつきが大きい

 鈴木委員や支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は「急性期後の集中的なリハビリ提供」の必要性を確認した上で、「一部で不適切なリハビリ提供や請求がなされている可能性もある」と述べ、患者像の明確化などを提案しています。今後、アウトカム(リハの効果)評価などを検討していく可能性もあります。

障害者病棟の脳卒中患者、次期改定で適正化を検討

 14年度の改定では、療養病棟入院基本料1に「在宅復帰機能強化加算」が新設されるなど、慢性期の入院医療でも在宅復帰が重視されてきています。また、療養病棟1(20対1)と療養病棟2(25対1)では、入院患者の医療区分に大きな差があることも分かっています。こうした点を踏まえて宮嵜課長は「可能な限り在宅復帰を促すための評価」を次期改定の検討テーマの一つとしてはどうかと提案しています。

療養病棟1(20対1)と療養病棟2(25対1)の患者では、医療区分の状況が大きく異なる

療養病棟1(20対1)と療養病棟2(25対1)の患者では、医療区分の状況が大きく異なる

 なお、「入院患者の状態が不安定だったり、医療必要度が高かったりすることなどから出来高支払いの障害者施設や特殊疾患病棟にも、療養病棟と同じような脳卒中後の患者が入院している実態があるといった指摘や、包括支払いの療養病棟と不整合があるといった指摘があります。これを受けて宮崎課長からは「患者の状態像に応じた評価のあり方」が検討課題として提示されました。白川委員もこの提案に賛同し「入院患者の状態などを疾病別に分析する必要がある」と述べています。

脳血管疾患の患者や神経系疾患の患者は、療養病棟にも、障害者施設や特殊疾患病棟にも入院している

脳血管疾患の患者や神経系疾患の患者は、療養病棟にも、障害者施設や特殊疾患病棟にも入院している

 一方、鈴木委員は「障害者施設には療養病棟よりも重症の患者が、特殊疾患病棟には神経難病患者など、医療必要度が高く病態の変動が著しい患者が入院しており、出来高算定は継続すべきだ」との考えを強調しました。

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