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がんの年齢調整死亡率が13.3%減少05-13年-がん対策推進協議会

2015.3.6.(金)

 新たな「がん対策推進基本計画」が2012年6月に定められ、これに基づいてさまざまながん対策が進められています。基本計画は12-16年が対象期間で、国のがん対策の方向性や目標を定めており、16年からの次期計画策定に向けて中間評価が実施されます。

 これに向けて、厚生労働省は「がん対策推進協議会」を5日開き、中間評価報告書案を提示しました。基本計画で定められた「がん医療」や「がん研究」「情報提供」「教育」などの目標に向けた進捗状況を示したもので、例えば「がんの年齢調整死亡率を20%減少させる」という目標に対しては、現在13.3%の減少実績があります。協議会では、中間評価報告書を5月にも取りまとめる予定です。

3月5日に開催された、「第47回 がん対策推進協議会」

3月5日に開催された、「第47回 がん対策推進協議会」

がんの年齢調整死亡率、目標は20%減

 中間評価では、基本計画で定められた「全体目標」と「個別目標」のそれぞれについて進捗状況が確認されます。「全体目標」は、(1)がんによる死亡者の減少(2)すべてのがん患者・家族の苦痛軽減と療養生活の質の維持向上(3)がんになっても安心して暮らせる社会の構築-の3つの柱で構成されています。

 このうち(1)の死亡者の減少については、「75歳未満のがんの年齢調整死亡率を20%減少させる」という数値目標が定められました。この点、05年から13年にかけてがんの年齢調整死亡率は13.3%減少しており、さらなる施策の推進が期待されます。

拠点病院には放射線治療・化学療法の専門家を配置

 一方、「個別目標」に関しては、▽がん医療▽がんに関する相談支援と情報提供▽がん登録▽がんの予防▽がんの早期発見▽がん研究▽小児がん▽がんの教育・普及啓発▽がん患者の就労を含めた社会的な問題-のそれぞれについて進捗状況が確認されます。

 「がん医療」において、基本計画で最重視されているのは根治です。そのため「放射線療法、化学療法、手術療法の更なる充実とチーム医療の推進」の状況を確認する必要があります。

 放射線治療については、がん診療連携拠点病院の新たな指針の中で「地域の医療機関と連携し、役割分担を図り、専門の看護師・放射線技師・医学物理士などを配置し、質の高い安全な放射線療法が提供される体制の構築」が進められています。さらに、▽微小がんの低侵襲治療を可能とする治療機器の開発▽重粒子線治療の研究と普及-も同時並行で進んでいることが報告されています。

 化学療法については、同じく拠点病院の新指針で「専門の薬剤師・看護師の配置」が促されています。新たな抗がん剤の研究開発などに対応するための方策と言えます。

 また、がんは全身疾患であることから、▽拠点病院で月1回以上のキャンサーボードの開催を義務付ける▽診療放射線技師の業務範囲を拡大する▽医科歯科連携を推進する-といったチーム医療体制の整備が進められていることも報告されています。

都道府県の拠点病院に緩和ケアセンターの整備義務

 がん医療では「専門的な医療従事者の育成」も重要課題であり、次のような取り組みが進んでいることが報告されています。

▽「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン」を12年度に立ち上げ(文部科学省)

▽がん診療の指導的役割を担う医療従事者を対象とした研修の実施(国立がん研究センターがん対策情報センター)

 さらに、わが国でも「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が重視されてきており、拠点病院では次のような体制整備が進められています。

▽がん疼痛などの症状緩和や、医療用麻薬の適正使用を目的とした院内マニュアルの整備、院内パスの整備

▽緩和ケアチームの組織上の明確な位置付けと、適切な緩和ケアの提供

▽診断時から外来・病棟において全人的な苦痛に対するスクリーニング体制の構築

▽患者への説明の際に、看護師や医療心理に携わる者の同席を基本とする

▽外来において専門的な緩和ケアを提供できる体制

▽緩和ケアセンターの整備を都道府県拠点病院で義務化する(16年3月までに設置)

がんの講演受けた子どもと親に検診受診を勧める

 がんに関する情報提供という面では、国立がん研究センターがん対策情報センターによる「がん情報サービス(Webサイト)」と「がんの冊子」などが特筆できます。ここでは、がんの解説にとどまらず、がん診療実績のある病院を検索サービスも運営されており、情報の非対称性を埋める取り組みがなされています。

 また、がんに関する情報を集積し、将来の政策に生かすために「がん登録」が法制化されました。全国がん登録制度が16年1月からスタートし、国内のがんの発症や予後などについてより正確な実態を把握できると期待されています。

 さらに、新たながん診断や治療法・予防法を確立するために、政府は「がん研究」にも力を注いでいます。具体的には次のような取り組みが挙げられます。

▽「早期・探索的臨床試験拠点」や「臨床研究品質確保体制整備病院」などの指定(厚労省)

▽「次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム」の実施(文科省)

▽次世代の革新的医療機器の開発(経済産業省)

▽「がん研究10か年戦略」の策定(厚労、文科、経産の3大臣)と、それに基づく「日本医療研究開発機構」の設置(15年4月)による切れ目のない研究支援

 一方で、子どものころからがん予防や早期発見につながるように行動変容を促すことが重要だとする考えから、「がんの教育・普及啓発」も進められています。教育については文科省が検討会を設置しており、「学校におけるがん教育の在り方」に関する報告書を近くまとめるもようです。

 この点について中川恵一委員(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)は「わたしも学校にがんの講演に行くが、講演を聞いた生徒は自分の親にがん検診の受診を勧める。がん教育の推進は、がんの早期発見にもつながる」と述べ、教育の重要性を強調しています。

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