医療介護総合確保基金、14年度分は「医療従事者確保」に6割集中-医療介護連携促進会議
2015.3.9.(月)
2014年度分の「医療介護総合確保基金」は、総額904億円のうち174億円が病床の機能分化・連携、206億円が居宅などにおける医療の提供、524億円が医療従事者の確保・養成に充てられています。病床の機能分化・連携では、地域医療構想策定前のために、「急性期から回復期への移行促進」などに財政支援が行われています。
厚生労働省は地域医療介護総合確保基金の交付状況を、6日に開かれた「医療介護総合確保促進会議」に報告しました。
医療介護総合確保基金は、14年6月から順次施行されている「医療介護総合確保推進法」に規定されたもので、いわゆる「新たな財政支援」制度のこと。14年度の財政規模は904億円(うち国費が602億円)で、次の3つの医療事業に充てられます。
(1)病床の機能分化・連携に関する事業
(2)居宅などにおける医療の提供に関する事業
(3)医療従事者の確保・養成に関する事業
各事業への配分額は、(1)の病床機能分化に174億円(19.2%)、(2)の在宅医療に206億円(22.8%)、(3)の医療従事者確保に524億円(58.0%)となりました。(3)の医療従事者確保に6割が集中しています。これは、地域医療再生基金で実施されていた事業(合計で約300億円)を引き継いでいるためで、継続している事業としては、例えば山梨県の「地域医療支援センター運営事業」や東京都の「医療勤務環境改善支援センター事業」などが挙げられます。
一方、(1)の病床機能分化では、石川県の「急性期病床から地域包括ケア病床への転換促進」事業や、大分県の「急性期病棟から回復期リハ病棟への再編など、地域医療構想の達成に向けた施設整備」事業などがあります。
病床機能の分化は主に「地域医療構想の実現」を目指すものですが、14年度は構想策定前のため、「急性期から回復期への移行促進」などに財政支援が行われています。今後、都道府県が地域医療構想を順次策定する中で、「協議の場」で基金の使途も議論されることになるでしょう。
また(2)の在宅医療事業については、滋賀県の「医療・介護連携拠点機能整備事業」や徳島県の「訪問看護体制支援事業」など、在宅における医療・介護連携の推進を見越した事業も含まれています。
厚生労働省保険局医療介護連携政策課の渡辺由美子課長は、「都道府県には、自ら事業の実施状況や評価を行い、報告していただく」と述べ、評価にあたって次の視点を提示しました。
▽事業の計画には「新たな財政支援制度委員会の意見を聴く」などの評価手法が記載されており、これに則った評価となっているかを確認する(プロセス)
▽目標の達成状況を確認するとともに、未達成の場合には改善方法を確認する
▽事業の実施によって、どのような効果が得られたのか、どの程度効率的に執行できたのかなどを確認する
事後の評価を行い、それを以後の計画に反映させることで、より実効性のある事業実施が行えると期待されています。
この点、今村聡委員(日本医師会副会長)から「目標値の妥当性なども検証すべき」、井上由起子委員(日本社会事業大学専門職大学院教授)から「評価を行う際には、(1)妥当性(2)達成度(3)有効性・効率性-という順で行うべき」といった意見が出されました。渡辺課長は「いただいた意見を踏まえ、評価の指針や視点について都道府県に通知したい」との考えを述べています。事後評価の結果は、今年夏以降に開催予定の次回会合に報告されます。
なお、14年度の医療事業における財源の配分は上記の通りですが、都道府県ごとに見ると大きなばらつきがあります。国費分の配分を見ると、(1)の病床機能分化は0%(埼玉県、山口県、高知県)から73.6%(福井県)、(2)の在宅医療は0.3%(福井県)から56.9%(東京都)、(3)の医療人材確保は26.1%(福井県)から89.5%(沖縄県)、という具合です。
この状況について武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、「都道府県が思いつきで事業を計画しているようにも思える。厚労省が『こういった分野に使ってほしい』とメッセージを発信したほうがよいのではないか」といった意見を述べました。渡辺課長は、「事業の実施状況や評価を見てから考えていきたい」と答えるにとどめました。
基金は、15年度以降は医療だけでなく、介護事業を含めた次の5事業が対象となります。
(1)地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設または設備の整備に関する事業
(2)居宅などにおける医療の提供に関する事業
(3)介護施設などの整備に関する事業(地域密着サービスなど)
(4)医療従事者の確保に関する事業
(5)介護従事者の確保に関する事業
財政規模は、(1)(2)(4)の医療分で14年度と同額の904億円、(3)(5)の介護分で724億円です。ただし、介護分の内訳は(4)の施設整備に643億円、(5)の従事者確保に90億円となっており、東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)や山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)ら、多くの委員から「介護人材確保に対する財源規模が小さく懸念を覚える」との意見が相次ぎました。16年度以降の予算編成においては、財源配分に再考が求められていると言えるでしょう。
なお、(5)の介護従事者確保では、「認知症ケアに携わる人材育成のための研修」なども含まれており、ここなどには看護職など幅広い職種も対象となります。