医療機関とドラッグストアの連携を提言、経産省研究会―住民の健康増進に期待感
2015.3.17.(火)
薬局・薬剤師の力を活用した「セルフメディケーション」の推進に、政府は力を入れています。経済産業省は「セルフメディケーション推進に向けたドラッグストアのあり方に関する研究会」の報告書を13日に公表しました。
報告書では、ドラッグストアによる取り組みとして、▽医療機関などと連携する仕組みを構築する▽消費者が相談しやすい環境を整備する▽消費者への情報提供を充実させる―ことなどを提言しています。
「セルフメディケーション」について世界保健機関(WHO)は、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義しています。
政府は、膨張する医療費の伸びを抑えるために「疾病予防」や「健康増進」に力を入れ始めており、その一環として「薬局・薬剤師の力を活用したセルフメディケーションの推進」を重視しています。厚生労働省の2015年度予算案にも、「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点の推進」の費用として2億5000万円が計上されており、「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点(健康ナビステーション(仮称)の整備や、在宅医療に関するモデル事業を実施するとともに、当該拠点の基準の作成等を行う」こととしています。
そうした中で、経産省は14年11月、「セルフメディケーション推進に向けたドラッグストアのあり方に関する研究会」を立ち上げ、薬剤師や登録販売者といった専門知識のある人材を抱えるドラッグストアが、どのような役割を果たしていくべきかを検討してきました。
ドラッグストアは全国に約1万7000店舗ありますが、規制緩和によりほかの小売業者による医薬品販売が一定程度容認されるなど、経営環境は厳しくなってきています。そのため、今後は「セルフメディケーション」の推進にも力を入れることで、産業振興を図る狙いも経産省にはあります。
報告書では、ドラッグストアに対して「セルフメディケーション」を推進するための10の提言を行っています。
(1)消費者のセルフメディケーションに関する理解の醸成
(2)専門人材のさらなる育成
(3)消費者が相談しやすい環境の整備
(4)消費者への情報提供を支えるデータベースの整備
(5)提供する情報の充実
(6)情報提供の前提となる検査などのサービスの充実
(7)ほかの機関との連携
(8)医薬品などを活用した買物弱者対策などの取り組みの強化
(9)外国人旅行者などの利便性向上のための環境整備
(10)「製・配・販」の連携による返品の削減
このうち(3)では、消費者がドラッグストアに健康について相談できるようにするため「専門人材の配置」や「ブースの設置」といった物理的環境を整え、さらに「どの従業員が専門的知見を保有しているか」が消費者に分かるように伝えるよう求めています。
また(5)では、▽予防や未病(東洋医学で病気に向かいつつある状態のこと)の改善▽地域包括ケアシステム▽在宅介護―といった消費者の健康管理をサポートするための情報を充実させ、ドラッグストアが積極的に提供していくことが重要としています。
さらに(7)では、ほかのドラッグストアや医療機関などと連携して、消費者へのケアを行えるような仕組みを、業界を挙げて構築するよう要望しています。