高品質ながん医療を行う米国の病院が参加する「QOPI」とは
2015.3.24.(火)
米国では、がんの標準的な医療として実施すべき項目を細かく定め、その項目が適切に行われているかを調べる手法が複数あります。中でも最大の評価指標なのが「QOPI(Quality Oncology Practice Initiative)」です。
QOPIは、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が推進するがん医療の質を計測し、改善の目安にするための評価指標です。現在、QOPIは約100項目あり、項目ごとに細分化されていて、がん医療の質の見える化やばらつきの均てん化に貢献しています。
GHCのマネジャーである井口隼人によると、米国ではがん医療の質を評価する指標として、学会や病院が独自に展開しているものが複数あり、当然のように2つ以上の評価指標の計測に参加する病院は多いということです。QOPIは、こうした複数あるがん医療の評価指標の中でも最大のものという位置付けです。
米国の病院が医療の質の評価に積極的なのは、医療制度の影響が大きいようです。特定の診断名に施された一連の医療行為に報酬を支払う「EDRG」(Extended Diagnosis Related Group:拡大版DRG)では、合併症の発生率が高いなど医療の質に問題がある医療機関では、保険者からの医療費支払いが一定割合減額されます(関連記事『EDRGの日本への導入の可能性は? 医療費に占める割合の高いDPCが対象候補』)。
明確なインセンティブによって、包括支払いによるコスト削減と同時に医療の質向上も目指す米国ですが、日本は医療の質を向上させるためのここまで明確なインセンティブがありません。そのため、米国のようにがん医療の評価指標が複数あったり、それらに積極参加する病院が少なかったりするのが現状と言えます。
一方、日本でもがんの医療の質を計測する活動はあります。GHCがデータ分析を支援している「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」などがそうです(詳細はこちら)。CQI研究会は栃木県立がんセンター、千葉県がんセンター、神奈川県立がんセンター、愛知県がんセンター、四国がんセンター、岩手県立中央病院の有志が集まって2007年に設立し、昨年の第10回の同会には88施設の医療機関が参加しました。
今年7月25日には第11回CQI研究会が開催される予定で、参加施設間でQOPIの一部を使ったデータ分析を実施するのが見所の一つです。そのほかにも実際にQOPIを用いたがん医療の質の改善活動を精力的に行う米クイーンズメディカルセンターの担当者による講演、自病院のがん医療の質を簡単に計測することができる「CancerDashboard」の無償配布なども行います(「CancerDashboard」の詳細はこちら)。
第11回CQI研究会でQOPIを用いたデータ分析を行うことについて、井口は「先行する米国の評価指標QOPIを使って、日本のがん拠点病院のデータ分析を行う意義は大きい。CQI研究会は会員病院間の中で実名公開されるため、目標とする特定の病院と比較することができる」と話しています。