「東北医科薬科大」の医学部新設構想を選定、琉大以来37年ぶり―文科省審査会
2015.3.25.(水)
東日本大震災からの復興や医師不足の解消を目的に、文部科学省は東北地方に医学部を新設する方向で検討を進めています。
同省の「東北地方における医学部設置に係る構想審査会」は17日、新設候補に挙がっている仙台市青葉区の「東北医科薬科大学」(応募主体は学校法人東北薬科大学)を正式に選定し、「東北6県の医師偏在の解消方策を講じる」「開学後早期に東北6県に地域サテライトを整備し、ネットワーク病院を活用することなどで地域医療への理解を深める教育を充実し続ける」などに今後取り組むよう求めています。
なお、構想審査会による選定は候補の選定という位置付けで、実際に医学部を設置するにあたってはあらためて大学設置・学校法人審議会の審査を受け、文科相の認定を受けることが必要となります。文科相が認定すれば、1979年の琉球大学医学部設置以来、37年ぶりに医学部が新設されることになります(設置は2016年4月予定)。
医学新設に向けた流れは、▽医学部新設を希望する学校法人や地方公共団体などが「施設構想」を申請する▽「構想審査会」で構想の内容を審査し1校に絞る▽あらためて文科相が医学部の設置認可に向けた審査を行う―というものです。
(図入る)
これまでに、▽国際復興記念大学(仮称)医学部医学科(福島県郡山市)▽東北医科薬科大学(東北薬科大から改称予定) 医学部医学科(仙台市宮城野区)▽宮城県立医科大学(または宮城大学) 医学部医学科(仮称)(宮城県栗原市)―の3つの構想が申請され、「東北医科薬科大学」の1構想に絞られています。
その後、構想審査会は7つの条件を示しましたが、17日に「条件について、一定の取り組みがなされている」と判断し、正式に「施設構想を選定する」ことを明らかにしたものです。
ただし、東北地方の復興にめどが立つまで、次のように「卒業した医師の地域定着」に取り組むよう要望しています。
(1)東北6県全体の医師偏在の解消のため、教育運営協議会の活用などにより、既存の医学部や県当局などと密接に連携協力し、各県の実状を踏まえた医師偏在の解消方策を講ずる
(2)既存の医学部や県当局などと連携し、開学早期に各県に地域サテライトを整備し、ネットワーク病院の活用などによって、地域医療への理解を深める教育を充実し続ける。また、初年次から十分な時間をかけて地域立脚型のカリキュラムを構築し、開学前から教員に新設医学部の目的、特徴を共有し、目指す教育の方向性を統一する努力を行うことで卒業生の地域定着を促す
(3)教員や医師、看護師などの確保について、採用地域や採用機関などのバランスに十分配慮しつつ、地域医療に支障を来さないよう、引き続き適切に対応する。その際、懸念される事例が生じた場合には速やかに関係機関と連携を図り、広く全国に積極的に人材を求めて対応を行う
(4)修学資金制度について東北各県と十分に調整し、学生に魅力がある制度としつつ、持続可能かつ地域偏在の解消に資する制度とする。奨学金を受けない学生も含めて卒後研修について各県との連携を深め、卒業生が東北地方に定着し、医師偏在の解消に寄与するための適切な方策を講ずる
(5)将来の医師需給などに対応して定員調整の要請があった場合には適切に対応する
(6)教育運営協議会を開学までの間も継続して開催し、議論が十分に尽くされていない点について検討を行う。開学後も使命を十分に果たしているか確認しつつ、新たに生じる課題も共有して議論を行えるよう、協議を行う場として毎年開催する
選定にあたっての7条件は、▽東北各県・大学、病院、医療関係者などによる「運営協議会」を立上げ、教員などの確保・地域定着策などの協議を行う▽既存大学との教育面、卒後の医師確保における役割分担と連携を整理し、仙台への医師集中を避け、医師偏在解消につなげる枠組を確立する▽総合診療医養成に取り組む―などです。