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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

画期的抗がん剤「テセントリク」を小細胞肺がんにも適応拡大、最適使用推進GLや保険診療上の留意事項示す―厚労省

2019.8.26.(月)

 オプジーボやキイトルーダなどの類薬である、画期的な抗がん剤(抗PD-L1抗体抗悪性腫瘍剤)「テセントリク点滴静注1200mg」(一般名:アテゾリズマブ(遺伝子組換え))について、従前の「非小細胞肺がん」に加え、新たに「小細胞肺がん」にも適応が拡大された。小細胞肺がん治療に本剤を使用する場合、肺がん治療の十分な経験を有する医師を治療責任者として配置した、がん診療連携拠点病院等で行うことが求められる―。

 厚生労働省は8月22日に通知「抗PD-L1抗体抗悪性腫瘍剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項の一部改正について」を発出し、こうした点を明らかにしました(厚労省のサイトはこちら)。

間質性肺疾患などの副作用が知られており、マネジメントに留意すること

 切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん治療に用いる抗PD-L1抗体抗悪性腫瘍剤「テセントリク点滴静注1200mg」(一般名:アテゾリズマブ(遺伝子組換え))は、昨年(2018年)4月18日に薬価収載され、保険診療での使用が可能となりました。

この「テセントリク点滴静注1200mg」は、オプジーボの類薬として、20mL1瓶で62万5567円という高額な薬価が設定され、医療保険財政への影響が大きなことから、一定の要件を満たした医療機関で、奏効が期待される患者に適正に使用することが求められ、最適使用推進ガイドラインが設定されています(関連記事はこちら

今般、「テセントリク点滴静注1200mg」の効能・効果が「小細胞肺がん」にも拡大され、新たな最適使用推進ガイドラインが設けられたことなどを踏まえ、保険診療上の留意事項も見直されました。

小細胞肺がんに本剤を用いる場合には、まず施設要件としてオプジーボやキイトルーダと同様に次の(a)-(c)をすべて満たすことが求められます。

(a)がん診療連携拠点病院や特定機能病院、都道府県の指定するがん診療連携病院、外来化学療法室を設置し、外来化学療法加算1または2を取得している施設で、「肺がんの化学療法および副作用発現時の対応に十分な知識と経験を持つ医師」(医師免許取得・2年の初期研修修了後に5年以上のがん治療の臨床研修を行っており、うち2年以上は「がん薬物療法を主とした臨床腫瘍学」の研修を行っている医師、または、医師免許取得・2年の初期研修修了後に4年以上の臨床経験を有し、うち3年以上は「肺がんのがん薬物療法を含む呼吸器病学」の臨床研修を行っている医師)が、当該診療科の本剤治療の責任者として配置されていること

(b)医薬品情報管理の専任者が配置され、製薬企業からの情報窓口、有効性・安全性など薬学的情報の管理および医師などに対する情報提供、有害事象が発生した場合の報告業務などを速やかに行う体制が整っていること

(c)副作用(▼間質性肺疾患▼肝機能障害▼大腸炎・重度の下痢▼膵炎▼1型糖尿病▼内分泌障害(甲状腺機能障害、副腎機能障害、下垂体機能障害)▼神経障害(ギラン・バレー症候群含む)▼重症筋無力症▼脳炎・髄膜炎▼infusion reaction▼筋炎・横紋筋融解症▼腎機能障害(尿細管間質性腎炎等)▼重度の皮膚障害▼心筋炎▼溶血性貧血▼免疫性血小板減少性紫斑病▼化学療法併用時の血液毒性(好中球減少、発熱性好中球減少症)―など)に速やかに対応するために、「間質性肺疾患などの重篤な副作用が発生した際に、24時間診療体制の下、入院管理およびCTなど鑑別に必要な検査の結果が当日中に得られ、直ちに対応可能な体制が整って」おり、「間質性肺疾患などの副作用に対して、専門性を有する医師と連携し、直ちに適切な処置ができる体制が整って」いること

 
また、保険診療で本剤を用いる場合、(a)について、次の点をレセプトの摘要欄に記載することが求められます。要件を満たす施設での使用が行われているか、審査時点で確認するための規定です。

▽どの施設要件に該当しているか(「施設要件ア」から「施設要件オ」までのうち該当するものを記載する)
(ア)がん診療連携拠点病院等(都道府県がん診療連携拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、地域がん診療病院など)
(イ)特定機能病院
(ウ)都道府県知事が指定するがん診療連携病院(がん診療連携指定病院、がん診療連携協力病院、がん診療連携推進病院など)
(エ)外来化学療法室を設置し、【外来化学療法加算1】または【外来化学療法加算2】の施設基準に係る届け出を行っている施設
(オ)【抗悪性腫瘍剤処方管理加算】の施設基準に係る届け出を行っている施設

▽治療責任者がどの医師要件に該当しているか(「医師要件ア」または「医師要件イ」と記載する)
(ア)医師免許取得・2年の初期研修修了後に5年以上のがん治療の臨床研修を有し、うち2年以上は「がん薬物療法を主とした臨床腫瘍学」の研修を行っている医師
(イ)医師免許取得・2年の初期研修修了後に4年以上の臨床経験を有し、うち3年以上は「肺がんのがん薬物療法を含む呼吸器病学」の臨床研修を行っている医師

 
 
 投与対象となる患者について、最適使用推進ガイドラインでは次のように規定されています。
【有効性に関して】
(1)化学療法歴のない進展型小細胞肺癌患者において本剤、カルボプラチンおよびエトポ シドとの併用投与の有効性が示されている
(2)「(1)で本剤の有効性が示されていない他の抗悪性腫瘍剤との併用投与」については、有効性が確立されておらず、本剤の投与対象とならない

【安全性に関して】
(1)「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」は、本剤の投与が「禁忌」とされており、投与を行わない
(2)治療前の評価で、▼間質性肺疾患の合併またはその既往がある▼胸部画像検査で間質影を認める▼活動性の放射線肺臓炎や感染性肺炎等の肺に炎症性変化が見られる▼自己免疫疾患がある▼慢性的もしくは再発性の自己免疫疾患の既往歴がある▼ECOG Performance Status 3-4―の患者については、本剤の投与は推奨されないが、他の治療選択肢がない場合に限り、慎重に本剤を使用することを考慮できる。

 
 
 さらに、本剤投与に伴う副作用のマネジメントについて、最適使用推進ガイドラインは次のような点を掲げています。

▼間質性肺疾患が現れることがあり、臨床症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認、胸部X線検査の実施など観察を十分に行う。必要に応じて胸部CT、血清マーカー等の検査を実施する
▼重度のinfusion reactionに備えて緊急時に十分な対応のできる準備を行った上で投与を開始し、投与中・投与終了後はバイタルサイン測定など、患者の状態を十分に観察する。infusion reaction発現の場合には、全ての徴候・症状が完全に回復するまで患者を十分観察する
▼肝機能障害が現れることがあり、投与開始前・投与期間中は定期的に肝機能検査(AST、ALT、γ-GTP、Al-P、ビリルビン等の測定)を実施する
▼甲状腺機能障害、副腎機能障害および下垂体機能障害が現れることがあり、投与開始前・投与期間中は定期的に内分泌機能検査(TSH、遊離T3、遊離T4、ACTH、血中コルチゾール等の測定)を実施する
▼過度の免疫反応に起因すると考えられる様々な疾患や病態が現れることがあり、異常が認められた場合には、発現した事象に応じた専門的な知識と経験を持つ医師と連携して適切な鑑別診断を行い、過度の免疫反応による副作用が疑われる場合には、休薬・中止、副腎皮質ホルモン剤の投与等を考慮する。副腎皮質ホルモン投与で副作用改善が認められない場合には、他の免疫抑制剤の追加も考慮する
▼投与終了から数週間・数か月経過後にから副作用が発現することがあるため、投与終了後にも副作用の発現に十分に注意する
▼1型糖尿病が現れ、糖尿病性ケトアシドーシスに至ることがあるので、口渇、悪心、嘔吐等の症状の発現や血糖値の上昇に十分注意する。1型糖尿病が疑われた場合には投与を中止し、インスリン製剤投与などの適切な処置を行う

 

 

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