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「難病等の登録法」制定し、軽症者データも集積すべきではないか―難病等研究・医療ワーキング

2019.9.3.(火)

 指定難病に罹患していても、重症度基準を満たさない場合にはデータ(臨床個人調査票)収集が行われず、病態解明や治療法開発を阻害している。がんと同様に「難病等の登録法」を制定するなどし、悉皆性のあるデータベース構築を急ぐべきではないか―。

 難病・小児慢性特定疾病研究・医療ワーキンググループが8月29日に開催され、こうした議論が始まりました。今秋(2019年秋)にも議論をとりまとめ、親組織である厚生科学審議会・疾病対策部会「難病対策委員会」と社会保障審議会・児童部会「小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」との合同会議(以下、合同会議)に報告され、その後、必要な法律改正等につなげられます。

8月29日に開催された、「第1回 難病・小児慢性特定疾病研究・医療ワーキンググループ」

 

「軽症患者のデータ」をどのように収集するかが最重要課題の1つ

 「指定難病への医療費助成」や「難病医療体制の構築」などの難病対策は、2015年1月に施行された難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)に基づいて実施されています。難病法の附則では、「施行後5年以内を目途に、施行状況を勘案して必要があれば見直しに向けた検討を行う」旨が規定されており、また、いわば小児の難病である「小児慢性特定疾患」対策を規定する改正児童福祉法にも、同様の見直し規定があることから、厚生労働省は施行から5年を迎える来年(2020年)1月をゴールとして、難病等の制度見直しに向けた検討を合同会議で始めています。

合同会議では、関係者からのヒアリングなども踏まえて、難病・小児慢性特定疾患対策の見直しに向けた「論点整理」を行うとともに、▼医療費助成の在り方、治療研究の推進、医療提供体制の整備に向けた技術的事項などを検討する「難病・小児慢性特定疾病研究・医療ワーキンググループ」▼療養生活の環境整備、就労支援、福祉支援、小児の自立支援の在り方などに関する技術的事項などを検討する「難病・小児慢性特定疾病地域共生ワーキンググループ」―を設け、今秋(2019年秋)にかけて個別具体的な検討を行う方針を固めました(関連記事はこちら)。

前者の「難病・小児慢性特定疾病研究・医療ワーキンググループ」(以下、ワーキング)では、(1)医療費助成制度(2)医療提供体制(3)調査・研究―の主に3項目について議論を深めていきます。8月29日の会合では、この3点について自由討議を行いました。

特に多くの意見が出されたのが(1)の医療費助成制度の在り方に関してです。

現行制度では、▼発症の機構が明らかでない▼治療方法が確立していない▼希少な疾病である▼長期の療養が必要である—という要件を満たす「難病」のうち、▼患者数が我が国で一定数(現在は18万人、人口の0.142%未満)に達していない▼客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している—という要件を満たした【指定難病】は、患者の置かれている状況に鑑みて、「重症の場合」および「軽症ながら高額の医療費が継続する」場合に医療費助成が行われます。

この仕組みについて、▼医療費助成をより多くの疾病に広げるべきか(対象疾病)▼「重症」の定義を疾病間で統一すべきか(認定基準)▼患者の医療費負担をさらに軽減すべきか▼軽症患者のデータ収集をどう進めるか―などが主な検討課題となっていますが、これらは互いに連関しています。

まず「対象疾病」について、患者団体サイドは「より多くの疾病を医療費助成の対象とすべき」と強く訴えますが、「財源(制度の安定性)、公平性を考慮して医療費助成対象疾病を考えるべき」(限定する方向)との意見も少なくありません。

また、指定難病に罹患する患者であっても、医療費助成が行われるのは原則として「重症度基準」に当てはまる方に限定されます。これは、限られた財源を「重症の患者に重点的に投入する」ことを目指すものです。軽症患者にも医療費助成を行えば、財源が限られている中では個々の患者への支援が薄くなり、結果として「相対的に重症患者への支援が不十分なものとなってしまう」恐れがあるのです。

しかし、この「原則として重症患者のみに医療費助成が行われる」仕組みのために、「軽症患者のデータ(臨床調査個人票、通称「臨個票」)が集積されない」という問題が生じているといいます。「申請しても助成は受けられない。にもかかわらず臨個票作成には多くの手間がかかる」として、主治医が臨個票作成を放棄するケースもあるようです。

また、「現在は指定難病であるが、医学・医療の進展で治療法開発などが進んだ場合には、指定難病の枠組みから外す」仕組みについても検討が行われますが、ワーキングでは井田博幸構成員(東京慈恵会医科大学小児科学講座教授)や小幡純子構成員(上智大学大学院法学研究科教授)らは「医療費助成のおかげで一定の治療が可能となり、それで良い状態をキープできている現状がある。医療費助成がなくなれば治療継続が困難となってしまうケースも出てしまう。『データ収集のため』という考えに立った、何らかの公的支援が必要なのではないか」という意見も出ています。患者代表の立場で参画する森幸子構成員(日本難病・疾病団体協議会代表理事)は「難病患者は就労等にも大きな苦労が伴う点にも考慮してほしい」と述べ、

 この軽症・重症含めた「全症例のデータ収集」は、難病等制度見直しの最重要視点の1つとなりそうです。この点、羽鳥裕委員(日本医師会常任理事)は、これまでに「臨個票記載に係る医師の負担軽減(オンラインでの入力を可能とするなど)策を進めるべき」と提言しているほか、「医療費助成とデータ収集は分けて考えていく必要があろう。例えば、がん登録法に倣って、難病等についても『登録法』を制定し、軽症・重症を問わず患者データを登録する仕組みを設ける必要がある。」と訴えており、多くの構成員がこの考えに賛同しています。

なお、小児においては、市町村が独自に行う医療費助成制度を利用している患者も少なくなく、このため「重症患者であってもデータが集まりにくい」という問題もあるようです。

 
また、現在333の指定難病があります(今後も新たな指定を検討していく、関連記事はこちら)が、「重症度基準にバラつきがあるのではないか」との指摘もあります。ある疾病では重症度基準が緩めに設定され(医療費助成が受けやすい)ているが、別の疾病では重症度基準が厳しい(医療費助成が受けにくい)のではないか、との指摘です。

このため「重症度基準の標準化」に向けた研究が進められています。この研究を実施している井田構成員は「すべての指定難病の重症度基準を一律の指標で標準化する」ことは困難だが、「疾患群ごとに共通の基準を導入できる」可能性があるとの研究結果を紹介しました。

例えば、神経筋疾患(82疾患)では▼BI/mRS▼食事摂取▼呼吸状態▼てんかん▼知能障害―の5つの基準を用いて、また内分泌疾患(23疾患)では▼sf3▼EQ-5D―のようなQOLを測る指標や▼mRS▼BI―のような日常生活動作を測る指標を用いて、「標準化」を図れる可能性があります。仮にこうした新指標が導入された場合、疾病によっては「重症を判断される」場面が異なってくる可能性もあります。井田構成員は「現場の混乱を避けよ、という指摘もある点に留意が必要である」旨も述べており、今後、ワーキングや親組織(合同会議)で議論が進められます。例えば新指標の導入で、「重症者」が現在よりも限定される疾病においては、「既に医療費助成が行われている患者には、重症との判定がなされなくなったとしても、一定期間、医療費助成を継続する」などの経過措置が導入される可能性もあるでしょう。

 

将来的に小児慢性特定疾患と指定難病を統合し、小児から成人まで一貫した医療提供を

 また、医療提供体制については、小児から成人への「移行期医療」について提供体制を充実すべきとの指摘が多数出ました。

 医学・医療が進展し、小児慢性特定疾患患者の予後が改善し、成人を迎える患者も少なくなってきています。しかし、ある疾病が「小児慢性特定疾患」には該当するが、成人を対象とする「指定難病」には該当しない(指定難病とされていない)ケースも少なくなく、福島慎吾構成員(難病のこども支援全国ネットワーク専務理事)は「小児慢性特定疾患の48%しか指定難病となっていない」と指摘します。

 この点、福島構成員らは「指定難病制度では『がんなど、他制度で支援が行われる疾病は対象にしない』こととなっているが、見直す時期に来ているのではないか」といった旨の考えを提示。さらに羽鳥委員は、「小児慢性特定疾患制度と指定難病制度との統合」も視野に入れた検討を行うべきと提言し、五十嵐隆座長(国立成育医療研究センター理事長)も羽鳥委員の提言に一定の理解を示しました。今回の見直し(2020年1月の見直し)には間に合わないと思われますが、将来的には「両制度の統合」が正面から検討される可能性もありそうです。

 このほか、医療提供体制に関連して、▼患者が専門医により早期に到達できる仕組みの構築(森構成員)▼遺伝子診断等の迅速な保険収載(井田構成員)―などを求める意見が出ています。

 

 

 

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