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2018年、「抗ウイルス剤」や「その他の腫瘍用剤」などの生産額が大幅増—薬事工業生産動態統計

2019.9.3.(火)

 2018年の医薬品の国内生産額は6兆9077億円、輸入額は3兆1481億円となった。薬効別に見ると、「腫瘍用薬」「体外診断用医薬品」の生産金額増加が目立ち、優れた抗がん剤の開発・使用が進んでいる状況が伺える。また「抗ウイルス剤」の生産金額は前年比160%の大幅増となった―。

 こういった状況が、厚生労働省が8月30日に発表した2018年の「薬事工業生産動態統計年報の概要」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちらととこちら(一部図表の訂正))(前年の関連記事はこちら)。

医薬品の国内生産は6兆9077億円、抗ウイルス剤は前年比159%増

 薬事工業生産動態統計は、医薬品や医療機器の生産・輸入の実態を明らかにするために毎年行われている調査です。

 まず医薬品の生産・輸入状況を見てみましょう。

 2018年の国内生産金額は6兆9077億円で、前年に比べて1864億円・2.8%増加しました。また、外国からの輸入金額は3兆1481億円で、前年に比べて2901億円・8.4%減少しています。生産額と輸入額の合計は10兆558億円で、前年に比べて1011億円・1.0%の減少となっています。

 
 国内生産金額のうち、医療用医薬品は6兆1726億円(前年に比べて2.7%増)、一般用医薬品は7209億円(同3.0%増)となりました。医療医薬品が89.4%を占め、前年からの増減はありません。

 
 国内生産金額を薬効大分類別に見ると、「その他の代謝性医薬品」が前年から8.6%増加の8585億円で最多となりました。医薬品生産額全体に占めるシェアは前年の11.8%から12.4%に拡大しています。以下、「化学療法剤」「腫瘍用薬」「体外診断用医薬品」が大幅に伸びており、優れたがん治療薬とその診断薬の開発・使用が進んでいることが分かります。

▼循環器官用薬:8026億円(前年から14.1%減、シェアは13.9%→11.6%で2.3ポイント低下)
▼中枢神経系用薬(同3.6%増、同11.3%→11.4%で0.1ポイント上昇)
▼腫瘍用薬(同38.3%増、同6.6%→8.9%で2.3ポイント上昇)
▼血液・体液用薬(同11.5%増、同6.3%→6.8%で0.5ポイント上昇)
▼外皮用薬(同0.6%増、同5.7%→5.6%で0.1ポイント低下)
▼消化器官用薬(同6.9%減、同6.0%→5.4%で0.6ポイント低下)
▼生物学的製剤(同1.6%増、同5.2%→5.2%で増減なし)
▼化学療法剤(同76.6%増、同2.3%→4.0%で1.7ポイント上昇)
▼体外診断用医薬品(同20.5%増、同3.3%→3.9%で0.6ポイント上昇)

 
 構成割合の大きな医薬品を見ると、(1)その他の代謝性医薬品:11.8%(2)循環器官用薬:11.6%(3)中枢神経系用薬:11.4%(4)腫瘍用薬:8.9%(5)血液・体液用薬:6.8%―となっており、上位5分類で50.5%を占めています。前年(上位5分類で49.9%)に比べて集中度が高まっています。

 
 さらに各大分類項目の内訳を見てみると、次のようになっています。

●その他の代謝性医薬品:「他に分類されない代謝性医薬品」4819億円(前年に比べて生産金額が0.7%増)、「糖尿病用剤」2753億円(同30.0%増)、「痛風治療剤」461億円(同2.3%増)ほか

●循環器官用薬:「血圧降下剤」3198億円(同25.0%減)、「高脂血症用剤」1511億円(同7.0%減)、「血管拡張剤」1180億円(同10.6%減)ほか

●中枢神経系用薬:「その他の中枢神経系用薬」2072億円(同14.3%増)、「解熱鎮痛消炎剤」1908億円(同22.6%増)、「精神神経用剤」1495億円(同13.0%減)ほか

●腫瘍用薬:「その他の腫瘍用薬」5538億円(同50.1%増)、「代謝拮抗剤」307億円(同27.5%減)、「抗腫瘍性植物成分製剤」154億円(同22.0%減)ほか

●血液・体液用薬:「血液凝固阻止剤」2104億円(同42.8%増)、「その他の血液・体液用薬」1778億円(同8.8%減)、「血液代用剤」686億円(同2.4%増)ほか

●外皮用薬:「鎮痛,鎮痒,収斂,消炎剤」2614億円(同2.7%減)、「外皮用殺菌消毒剤」332億円(同6.9%増)、「その他の外皮用薬」244億円(同1.5%増)ほか

●消化器官用薬:「消化性潰瘍用剤」1760億円(同10.9%減)、「その他の消化器官用薬」705億円(同0.6%増)、「複合胃腸剤」330億円(同12.6%増)ほか

●生物学的製剤:「血液製剤類」2212億円(同9.7%増)、「ワクチン類」637億円(同24.6%減)、「その他の生物学的製剤」440億円(同21.2%増)ほか

●化学療法剤:「抗ウイルス剤」2098億円(同159.4%減)、「その他の化学療法剤」391億円(同12.2%増)、「合成抗菌剤」252億円(同31.6%減)ほか

●体外診断用医薬品:「免疫血清学的検査用剤」1165億円(同14.2%増)、「生化学的検査用剤」1059億円(同26.5%増)、「血液学的検査用試薬」252億円(同22.5%増)ほか


 
 また薬効中分類別では、多いほうから次のようになっています。
▼その他の腫瘍用薬:5538億円(前年度から50.1%増、シェア5.5%→8.0%で2.5ポイント上昇)
▼他に分類されない代謝性医薬品:4819億円(同0.7%増、シェア7.1%→7.0%で0.1ポイント低下)
▼血圧降下剤:3198億円(同25.0%減、シェア6.3%→4.6%で1.7ポイント低下)
▼糖尿病用剤:2753億円(同30.0%増、シェア3.2%→4.0%で0.8ポイント上昇)
▼鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤:2614億円(同2.7%減、同4.0%→3.8%で0.2ポイント低下)

輸入薬、抗がん剤は減少し、眼科用剤やホルモン剤が増加

 また、輸入金額が多い医薬品を見てみると、▼その他の腫瘍用薬:6337億円(前年から8.2%減)▼他に分類されない代謝性医薬品:2516億円(同4.0%減)▼眼科用剤:1629億円(同15.4%増)▼その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む):1598億円(同14.8%増)▼血液凝固阻止剤:1366億円(同9.2%減)▼抗ウイルス剤:1129億円(同24.8%減)―などとなっています。
 
 輸入元としては、▼米国:7384億円(前年に比べて1.6%増、輸入金額の23.5%を占める)▼ドイツ:5061億円(同14.1%減、同16.1%)▼フランス:3060億円(同13.9%増、同9.7%)▼スイス:2311億円(同49.3%減、同7.3%)―が多くなっています。より広範な国から医薬品を輸入する方向に動きました。

医療機器、国内生産が55%、輸入が45%の構図は変わらず

 医療機器の国内での生産金額は1兆9498億円(前年に比べて2.0%減)、輸入金額は1兆6206億円(同1.7%減)で、合計3兆5703億円(同1.9%減)となりました。全体に占める輸入金額の割合は、医療機器では45.4%で、前年から微増(0.1ポイント増加)となっています。

 
 国内生産金額を大分類別に見ると、「処置用機器」が最も多く5293億円(前年比0.0%増)・シェア27.1%(同0.5ポイント増)でした。次いで、▼画像診断システム:3071億円(同3.6%増)・シェア15.8%(同0.9ポイント増)▼生体機能補助・代行機器:2958億円(同10.5%減)・シェア15.2%(同1.7ポイント増)▼医用検体検査機器:1832億円(同5.9%減)・シェア9.4%(同0.7ポイント増)▼生体現象計測・監視システム:1813億円(同13.9%減)・シェア9.3%(同1.3ポイント減)―となりました。

 また輸入金額を大分類別に見ると、▼生体機能補助・代行機器:4417億円(同0.3%増)▼処置用機器:4264億円(同4.3%減)▼眼科用品および関連製品:2180億円(同1.0%減)▼治療用または手術用機器:1247億円(同13.4%減)▼画像診断システム:1073億円(同9.9%増)―などが多いことが分かります。

 輸入元としては、▼米国:7883億円(輸入金額の48.6%を占める)▼アイルランド:1778億円(同11.0%)▼ドイツ:1016億円(同6.3%)▼中国:980億円(同6.0%)となっており、上位について前年からの順位変動はありません。

 

 

 

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