「ダ・ヴィンチ旋風」で前立腺がん手術が大激変、従来術式追い抜く
2015.4.16.(木)
手術支援ロボットシステム「ダ・ヴィンチ」を活用した手術が急増しています。2012年度の診療報酬改定で、ダ・ヴィンチを用いた前立腺がん全摘出手術に公的保険が適用されたためです。GHCの調査では、直近で開腹・腹腔鏡を追い抜く勢いになっており、まさに「ダ・ヴィンチ旋風」が吹き荒れています。
4月13日発売の「週刊ダイヤモンド」の巻頭特集「がん最前線―変貌するがん三大療法(薬、手術、放射線)」(ホームページはこちら)で取り上られている三大療法のうち、手術の最前線をレポートしたパートの中で、GHCの井口隼人マネジャーが担当した分析が掲載されました。
井口は、開腹、腹腔鏡、腹腔鏡(小切開)、ダ・ヴィンチの術式ごとに、前立腺がんの症例数を経年比較(10月単月ベース)し、平均在院日数や費用、感染症発症率についても分析しました(図表1)。
それによると、ダ・ヴィンチのシェアは、保険適用された直後の12年10月時点では15%程度でしたが、13年10月に40%弱、14年10月には開腹や腹腔鏡など従来の術式を追い抜き、50%強になっています。
さらに、医療の価値(質/コスト)に関する分析では、在院日数の短縮と術後感染症の発症割合が低下する可能性も示しています=図表2=。費用に関しては、患者の視点では高額医療費制度の対象となり、どの術式でも変わりませんが、ダ・ヴィンチは最もコストが掛かる術式です。「週刊ダイヤモンド」では、「年間100件は手術を行わないと、ダ・ヴィンチの元は取れない」と、ある病院関係者の声を紹介し、ダ・ヴィンチの唯一の弱点として経済的な問題を取り上げています。
同誌に掲載されたインテュイティブ・サージカル合同会社社長の上条誠二氏によると、腎部分切除術や胃がん、それ以外も肺がんや直腸がんなどについて、保険適用を目指して多くの医師が働き掛けており、腎がん、胃がんについては、先進医療の対象になっています。経済的な問題が残る一方、医療の質向上が確認できたロボット手術は今後も注目の技術であり、ダ・ヴィンチ旋風の勢いはしばらくは収まりそうにありません。