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女子医大病院と群馬大病院の特定機能病院の承認取り消し決定、特定機能病院の承認要件見直しも検討―塩崎厚労相

2015.4.30.(木)

 医療安全上の問題が指摘されている東京女子医科大学病院と群馬大学医学部附属病院の両病院について、特定機能病院の承認が5月中にも取り消されることが決まりました。社会保障審議会の医療分科会が30日、「承認取り消しが相当」と判断し、塩崎恭久厚生労働大臣に提出したものです。

 塩崎厚労相は同日に会見を開き、両病院の特定機能病院の承認を取り消すこと、あわせて大学附属病院などの医療安全体制について集中的に立ち入り検査を行うこと、さらに特定機能病院の承認要件見直しに向けた検討を行うことなどを明らかにしています。

4月30日に、東京女子医大病院と群馬大病院の特定機能病院承認取り消しなどについて会見した塩崎恭久厚生労働大臣

4月30日に、東京女子医大病院と群馬大病院の特定機能病院承認取り消しなどについて会見した塩崎恭久厚生労働大臣

チーム医療が機能不全、ガバナンスに問題

 塩崎厚労相は「高度な医療を提供する特定機能病院において医療安全上の重大な問題が相次いで発生しており、遺憾である」として、東京女子医大病院と群馬大病院について、医療分科会の意見書を踏まえて、5月中を目途に特定機能病院の承認を取り消すことを明言しました。

 分科会の楠岡英雄分科会長(国立病院機構大阪医療センター院長)は、承認取り消し相当と判断した理由を次のように説明しています。

【東京女子医科大学病院】

▽医薬品の安全使用のためのルールに基づいた対応ができず、そのための基本的な体制が確保できていない(集中治療における人工呼吸中の鎮静に用いるプロポフォールが小児に禁忌であることを一部の医師しか知らなかった)

▽「病院管理者の責務を十分に果たせない状態であった」というガバナンス上の問題があった

▽インフォームド・コンセントが丁寧に行われていなかった

▽院内における連携や情報交換・共有体制が十分でなかった

▽チーム医療の機能不全などの問題点に係る要因分析が不十分である

【群馬大学医学部附属病院】

▽院内の事故報告制度やチーム医療が機能していないなど、医療安全管理の体制が確保されていなかった(特定の医師による腹腔鏡での肝臓手術において患者8名が死亡したが、事故報告がなされず、病院長らはこれを十分に把握していなかった)

▽倫理審査体制が不十分で、臨床研究に係る手続きをチェックする体制が存在しなかった

▽チーム医療が機能しておらず、医療事故の要因分析も不十分である

▽事故調査報告書の作成過程に問題があった

▽診療録などへの記載が不徹底であった

 5月中に特定機能病院の承認が取り消された場合、6月1日から特定機能病院入院基本料などが算定できなくなります。また、DPCにおいては、機能評価係数Iの特定機能病院に係る係数を取得できなくなります。

 なお指定取り消しとなった後も、医療事故の要因分析を行い再発防止策を見直すことや、医療安全体制の確保に向けての継続的な検査・指導などが行われます。

 

特定機能病院についてガバナンス面での集中立入検査

 また、塩崎厚労相は今回の事案などを重く見て、大学医学部および附属病院のガバナンスを強化し、医療安全対策を充実させる観点から、体制を抜本的に見直すための「タスクフォース」(大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース)を設置したことも紹介しました。5月中旬(11日の週)にも第1回会合が開かれます。

 塩崎厚労相は、「事案の背景には、病院管理者が権限と責任をもって病院を管理運営するために必要なガバナンスに問題があることが明らかになった。厚労省と文部科学省が連携して対応策を講じる必要がある」とし、タスクフォースではまず、特定機能病院の承認を受けている大学病院などに集中的な立入検査を行うことを強調しました。「組織としての管理運営面に絞った検査、実態把握」が主眼となります。

 さらに、塩崎厚労相は立入検査結果などを踏まえて、▽特定機能病院の承認要件▽立入検査項目▽高難度の指揮医療技術導入のプロセス―について見直しを検討することも明らかにしました。

 特定機能病院の承認要件については14年4月に、▽内科、外科、精神科、小児科、産科、婦人科、放射線科、麻酔科、救急科など全16診療科の標榜を義務付ける▽医師の半数以上を専門医とする▽逆紹介率を設定する(通常は40%以上、特定領域の病院では60%以上)▽紹介率を引上げる(通常は50%以上、特定領域の病院では80%以上)▽英語論文年間70件以上を要件に加える―などの見直しが行われています。

 これらは医療提供という観点からの見直しでしたが、今後は「ガバナンス」「医療安全」という観点からの見直しが検討される見込みです。厚生労働省医政局地域医療計画課の担当者は、「タスクフォースで見直しに向けた検討を7~8割程度行い、その後に、社会保障審議会の医療部会などの関係審議会で議論することになるのではないか」と見通しています。

 タスクフォースの本部長には、塩崎厚労相が就き、医政局や健康局、保険局、さらに文部科学省の幹部がメンバーとなるほか、次の3氏が顧問となりました。

▽野村修也氏(中央大学法科大学院教授、弁護士)

▽楠岡英雄氏(社会保障審議会医療分科会長、国立病院機構大阪医療センター院長)

▽山口育子氏(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)

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