軽症者の救急搬送を有料化―財政審に提案、財務省
2015.5.12.(火)
軽症の場合、救急サービスの有料化の検討を―。財政の健全化に向けてこのような提言を財務省が行っています。
これは11日に開かれた財政制度等審議会の財政制度分科会で、財務省が行った提言の一つで、年末の2016年度予算編成の建議取りまとめに向けて今後、検討が進められます。
わが国の一般会計歳出(支出)は、15年度には96兆3000億円に上っています。これらは、税収や公債などで賄われますが、公債金、つまり借金は15年度には36兆9000億円に膨らんでおり、財政の健全化が喫緊の課題となっています。
このため歳出の適正化として、例えば社会保障費の伸びを抑制するため、医療・介護がターゲットになっていることは何度もお伝えしています。
歳出のうち10兆円を超えているのは、社会保障費の31兆5000億円のほか、国債費(借金の返済)23兆5000億円や、地方の財源不足を補てんするための地方交付税交付金15兆4000億円があり、この3つの経費で歳出全体の約4分の3を占めています。
11日の財政制度分科会では、地方財政を健全化し、地方交付税交付金を適正化することに焦点が合わせられました。
財務省は、地方財政を健全化させるためには行政サービスの効率化が不可欠だとし、「救急出動の一部有料化」などを打ち出しています。
救急出動件数は、13年には591万5956件で、過去10年間で20%増加し、今後も増大することが予想されます。しかし、救急車で搬送された人のうち49.9%は軽症と判断されており、「真に緊急を要する傷病者への対応が遅れ、救命に影響が出かねない」と危ぐする声も少なくありません。
また、救急出動件数の増加は、地方自治体の支出が増加することも意味しており、財務省は「消防費は約2兆円に上っている」と指摘します。
こうした点を踏まえて同省では、救急出動について「軽症の場合の有料化などを検討すべき」と提言しました。
財務省は外国の事例を紹介しており、例えば仏では主にSAMUという、おおむね県単位で組織される救急医療本部が救急対応しており、救急車の利用は有料です。独でも救急車の利用は有料で、重症度や医師が同乗の有無などで料金が変わってきます。財務省は、こうした事例も参考に有料化を検討すべきと提言しているのです。
もっとも、軽症かどうかは患者側には正確には判断できないため、「料金発生を危ぐして救急車を呼ばず、結果として重症化してしまう」ことなども懸念されることから、慎重な検討が求められそうです。
【関連記事】