乳がんの治療法、放射線実施率など格差鮮明―CQI研究会、臨床指標20項目を調査
2014.9.4.(木)
乳がん患者への放射線やホルモン療法の実施状況には、病院による格差があるとみられることが、がんの診療プロセスを分析し、実名でベンチマークするCQI研究会の調べで分かりました。大腸がんでも化学療法やリンパ節病理検査の実施状況に差が認められました。8月23日に開かれた研究会で調査結果を発表したGHC会長のアキよしかわは、「このバリアンスがどこから来るのかを考えることは一つの重要なテーマだ」と述べました。
調査はDPCデータでは把握できないがんの治療方法の実態を明らかにするためのもので、47病院が参加しました。乳がんや大腸がんの治療にどのような方法を採用しているかなど20項目をアンケート形式で質問。設問ごとの各病院の回答を基にGHCが分析しました。
その結果、乳がんの治療法に関する質問に回答した25病院のうち、4病院ではすべての乳がん患者に術後放射線療法を実施していましたが、これに対し2病院では全く実施しておらず、平均実施率は67.2%でした。
ホルモン療法の実施率にも差が目立ち、2病院では100%でしたが、10%を割り込む病院もありました。このほかHer2検査の実施率は83.4%でした。26病院のうち16病院では浸潤乳がんの全患者に実施していましたが、2病院では実施率が60%を下回りました。
大腸がんでは、術後化学療法は実施率100%が7病院、30%を割り込んだのが3病院で、ここでも治療法の差が認められました。
今回は外来化学療法の実施状況も分析しました。外来化学療法室のベッド1床当たりの実施件数(年)は2病院で500件を上回りましたが、3病院では100件を割り込みました。
このほかアキは、手術を終えてから食事を開始するまでの日数を定期的にベンチマーク分析した結果、この期間が当初の平均4.0日から2.9日にまで短縮したケースも紹介し、「これがベンチマークのパワー。プロゴルファーがアマチュアのスイングを研究しても意味がないのと同じで、大切なのは、自分が納得する相手と比較すること」と話しました。
アキは、入院患者の数に対して看護師をどれだけ配置したかで診療報酬が決まる現在の仕組みから、将来は患者の状態を踏まえて必要なだけ看護師を配置し、それに診療報酬が支払われるような仕組みになる可能性を指摘しました。化学療法の外来へのシフトが進む中で病床稼働率を高く維持するため、「ベッドを減らして外来を増やして、スタッフを減らしてやっていくべきなのか」という、会場からの質問に答えました。
アキは「冷静に分析してみると、驚くべきことに多くの病院では(患者が通う距離は)2-3キロ。その状況ではベッド数を維持できない。スタッフを減らすべきかどうかは、急性期でやっていくかどうかの決断になる」と述べました。