膀胱留置カテーテルによる尿道損傷、11-13年に14件も発生―日本医療機能評価機構
2015.6.15.(月)
2011-13年に「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」14件、「画像診断報告書の確認不足」9件、「手術部位の左右の取り違え」「電気メスペンシルによる熱傷」各8件などが報告され、さらに14年にも類似の事例が発生しているため、日本医療機能評価機構は再発防止に向けて注意喚起を行っています。
同機構では、06年から毎月「医療安全情報」を公表し、同様の医療事故やヒヤリ・ハットが発生しないよう呼び掛けています。
しかし、過去に発生した事故と類似した事例が後を絶たないため、今般「医療安全情報」のNo.103で再発・類似件数の多い事故をピックアップし、あらためて注意を促しました。
11-13年に報告された医療事故のうち、再発・類似件数が最も多いのは、「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」で14件報告されています。具体的には、「看護師が男性患者に膀胱留置カテーテルを挿入したところ、尿の流出がなかったものの、抵抗なく挿入できたため、バルーンに滅菌蒸留水を10ミリリットル注入した。その後、尿道口から出血があり、尿道損傷と診断された」などの事例が報告されました。
膀胱留置カテーテルの留置に当たっては、▽十分な長さの挿入を行い、尿の流出を確認した後にバルーンに蒸留水を注入する▽尿の流出がない場合は時間を置き、尿の流出を確認した後、バルーンを拡張する―ことが必要です。
次に多く報告されたのは「画像診断報告書の確認不足」で、9件あります。具体的には、「術後の発熱精査のためにCT撮影を行ったところ、腹膜炎であることが分かり、治療を行ったが、その際、放射線科医の読影コメントを見ていなかった。3年後に、他院から診療情報提供書を求められた際、CTに『右肺野の結節性病変』のコメントがあることに気付いた」という事例などが報告されています。
このような確認不足を防ぐためには、関係者全員がお互いに注意し合うことが重要です。今回事例のケースでは、主治医が「放射線科専門医の画像診断報告書を確認する」こと、放射線科医が「読影で検査の主目的以外の重大な所見を発見した場合、依頼した医師に注意喚起する」ことで、治療の遅れを防止できました。
また、「手術部位の左右の取り違え」と「電気メスペンシルの誤った取り扱いによる熱傷」がそれぞれ8件報告されています。
後者は「医師が術野近くに置いていたガーゼの下に電気メスがあることに気付かず、その上に手を置いたところ、意図せず電気メスが作動し、患者に熱傷が生じた」などの事例が報告されました。
こうした事例を防止するためには、▽術野周囲の環境を整え、電気メスペンシルを術野や手術台の上に置かない▽使用しない電気メスペンシルは収納ケースに収納する―ことを徹底する必要があります。
このほか、再発・類似件数が多い事故として、次のようなものが挙げられます。
▽PTPシートの誤飲、アレルギーのある食物の提供(各5件)
▽手術中の光源コードの先端による熱傷、病理診断報告書の確認忘れ(各4件)
▽薬剤の取り違え(3件)
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