協会けんぽの準備金、14年度には1.6か月分を確保できる見込み
2015.7.15.(水)
2014年度の協会けんぽの医療分の収支は3700億円の黒字決算となり、不測の事態に備えるための準備金を1.6か月分確保できる―。このような見通しを、協会けんぽを運営する全国健康保険協会が8日に発表しました。
協会けんぽは、主に中小企業のサラリーマンとその家族が加入する公的医療保険です。09年度に5000億円近い赤字決算となったことから、財政回復のために▽国庫補助割合の16.4%への引き上げ▽保険料率の引き上げ(現在は10.00%)▽後期高齢者支援金の計算における一部総報酬割の導入―などの特別措置が行われました。
こうした措置や、協会自身による後発医薬品の使用推進などの取り組みが功を奏し、協会けんぽの財政は10年度から黒字に転換しています。
14年度の決算見込みを見ると、収入9兆1035億円(前年度に比べて2464億円増加)に対し、支出は8兆7309億円(同1760億円増加)で、差し引き3726億円の黒字決算となりました。黒字額は前年度に比べて1860億円増加しています。
収入が増加した要因について協会は、▽被保険者の賃金(標準報酬月額)が0.6%増加した▽被保険者数が2.5%増加した―ことのほか、RFO(年金・健康保険福祉施設整理機構)の精算にともなって1000億円強の「その他収入」があったことを挙げています。
一方、支出も増加していますが、被用者保険の財政を苦しめる最大の要因とされる「高齢者医療への拠出金など」(後期高齢者支援金など)が、前年度に比べて32億円とわずかに減少。収入増が支出増を上回ったため、黒字額が増加しました。ただし協会は「高齢者医療への拠出金などは依然として支出の4割を占めている」と述べ、重い財政負担となっていることを強調しています。
ところで、健康保険法は、協会けんぽに対して「保険給付費や拠出金などの1か月分」を「準備金」を積み立てることを求めています。これは、新型インフルエンザなどが発生して医療費が高騰する場合や、大規模な天災などで保険料収入が一時的に滞る場合などにも、医療費の支払いが行えるよう備えるものです。
14年度には、黒字決算に伴って積立額が増え、準備金は1.6か月分に回復する見込みです。
なお、今般の医療保険制度改革では、「積立額が法定の準備金額を上回る場合には、国庫補助額を減額する」仕組みが導入されました。今後は、▽RFO精算に伴う「その他収入」はなくなる▽総報酬割の段階的な全面導入によって後期高齢者医療支援金の負担が軽くなる―などの要素も絡み、今後の協会けんぽの財政動向に注目が集まります。
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