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次世代型診断群分類「CCPマトリックス」の衝撃度を探る―GHCが分析

2015.7.15.(水)

 入院患者の重症度や医療資源の必要度などを反映させながら、診断群分類を精緻化させるための新たな評価手法「CCPマトリックス」が、2016年のDPC制度の見直しで試験導入される見通しです。症例数が比較的多い「肺炎」などの診断群分類が導入先の候補に挙がっていますが、新たな仕組みの導入によって病院にはどのような影響が及ぶのでしょうか。GHCでは、新たな評価手法の導入の衝撃度を、市中肺炎にスポットを当てて分析しました。

 今回の分析は、2014 年10-12月に退院した肺炎の症例のうち、手術をしたり、救命救急入院料など一部の診療報酬を算定したりしたものを除く1 万4459 症例が対象です。

 まず、市中肺炎の重症度を「超重症」「重症」「中等症」「軽症」に分類してそれぞれのウエートを割り出した結果、全症例の6割超を「中等症」が占めました。ただ、「超重症」と「重症」が全症例の過半数を占める病院がある一方で、こうした症例を全く受け入れていない病院もあり、実際の受け入れ状況には大きな差があることも分かりました。

 また、入院13日目(040080x099x0xxでの入院期間IIの上限)までの医療費(1日当たり包括範囲出来高金額)の推移を重症度ごとに見ると、「軽症」と「超重症」との間には入院2日目の時点で5000円ほどの開きがありましたが、10日を過ぎるとこうした差は2000円程度にまで縮小していました。

 入院13日目までの医療費を積み上げた金額を、全症例に占める割合が大きい「中等症」をベースにして比較したところ、「超重症」がプラス9%、「重症」がプラス4%、「軽症」がマイナス2%となりました。さらに、現在のDPC点数と比較すると、「超重症」ではこの期間、DPC点数を常に上回ったのに対し、「重症」では入院7日目以降、DPC点数とほぼ同じ推移をたどりました。「中等症」と「軽症」では、6日目以降はDPC点数を下回っています=図表=。

スライド10

 今回の分析を担当したコンサルタントの簗取萌はこれらの結果を踏まえて、CCPマトリックスが市中肺炎に導入された場合、「超重症」の症例は現在より手厚く評価される可能性が高いものの、「重症」では大きなプラスになるとは考えにくいとみています。一方、「軽症」では現在よりも低い点数設定になる可能性もありそうです。

 CCPマトリックスは16年に肺炎のほか、症例数の多い糖尿病や心不全などの診断群分類に試験導入される見通しです。

 DPC点数と実際の医療資源投入の隔たりを解消するのが狙いの仕組みなだけに、「重症」以上の症例をどれだけ受け入れているかが収益インパクトを左右しそうです。また、入院患者の重症度は診療関連情報などを書き込む「様式1」をベースに評価される可能性が高く、簗取は「現場での入力内容の精度向上も非常に重要になる」と話しています。

※詳しい分析結果は、GHCが発行する会員向けのPDFレポート 月刊「メディ・ウォッチ」(毎月10日発行)の15年7月号に掲載。

■分析条件

 2014 年10-12 月退院症例。

<傷病名>
 040070 インフルエンザ、ウイルス肺炎/040080 肺炎、急性細気管支肺炎
 これらのうち、「医療資源を最も投入した病名」(いわゆる「最も病名」)がICD で「肺炎」に該当。

<除外条件>
 次のどれか1つにでも当てはまる場合は対象から除外。
 手術あり/救命救急入院料の算定あり/特定集中治療室管理料の算定あり/ハイケアユニット入院管理料の算定あり/入院後発症疾患名にICD10 コードで肺炎に該当する病名あり/入院後24 時間以内死亡/15 歳未満/DPC対象外の病棟に転棟した症例

<肺炎の重症度分類>
 日本呼吸器学会の成人市中肺炎診療ガイドラインに従った。

<その他>
 データ対象期間とDPC 外病棟転棟症例「以外」の条件については、DPC 研究班の市中肺炎の分析条件に準拠した。

 これらを踏まえて最終的に1 万4459 症例を対象にした。

■分析結果のポイント

・市中肺炎の重症度を「超重症」「重症」「中等症」「軽症」に分類すると、全症例の6割超を「中等症」が占めたが、病院によって受け入れ状況には大きな差が認められた。

・入院13日目までの医療費(1日当たり包括範囲出来高金額)を積み上げて、「中等症」をベースにして比較すると、「超重症」はプラス9%、「重症」はプラス4%、「軽症」がマイナス2%となった。

・現在のDPC点数と比較すると、「超重症」では入院13日目まで一貫してDPC点数を上回ったのに対し、「重症」では入院7日目以降、DPC点数とほぼ同じ推移をたどった。「中等症」と「軽症」では6日目以降、DPC点数を下回った。

分析を担当したコンサルタント 簗取 萌(やなとり・もえ)

yanatori 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルタント。看護師、経営学修士(MBA)。
国立看護大学校看護学科卒業。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。ナショナルセンターの集中治療室での勤務を経て、MBA取得後、現職。DPC環境下における病院戦略、クリニカルパス、看護必要度などデータに基づいた実証的分析、クリティカルケア領域の経験を踏まえた実践的な分析などを得意とする。名古屋第一赤十字病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「AERA」など雑誌(掲載報告はこちら)、新聞への取材協力多数。「月刊ナースマネジャー」に「一歩先を行く! 師長のための医療看護トレンドナビ」を好評連載中。
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