「日本の医療費は米国に次ぐ2位」、16年度の診療報酬マイナス改定を提案―日本総研
2015.9.16.(水)
「日本の医療費はOECD加盟34か国中第8位」とされているが、それは過少推計によるもので、実際には米国に次ぐ2位の可能性がある―。このような分析結果を、日本総合研究所(日本総研)が15日に発表しました。
日本総研は「医療費が低いという認識のもと行われてきたこれまでの議論の根本的転換が必要である」と訴え、2016年度に次期診療報酬改定ではマイナス改定をすべきではないかと提案しています。
OECD(経済協力開発機構)は今年7月に「OECD Health Statistics 2015」を公表し、その中では「日本の総保健医療支出の対GDP比は10.2%で、OECD 加盟34か国中第8位である」とされています。
他国の状況を見ると、第1位は米国で16.4%、第2位はオランダ11.1%、第3位はスイス11.1%、第4位はスウェーデン11.0%、第5位はドイツ11.0%、第6位はフランス10.9%、第7位はデンマーク10.4%、第9位はベルギー10.2%、第10位はカナダ10.2%、第11位はオーストリア10.1%などとなっています。
これまで「わが国は、高所得国でありながら、医療費は相対的に低い水準に抑えられている」という認識とは、やや異なる結果をOECDが示したものと言えます。
しかし日本総研は、わが国の医療費はOECDの統計で示されているものよりも高いのではないかとの疑念を提示しています。その理由は次の3点です。
(1)総保健医療支出のうちLong-term care(LTC)について、わが国は狭義に推計されており(訪問介護、通所介護、グループホーム、特別養護老人ホームなどを計上していない)、支出全体の数値が実態より対GDP比で1.7%ポイント程度(日本総研試算)小さい
(2)わが国では、経常支出の数値から資本形成がほとんど除かれておらず、その分支出がかさ上げされている
(3)地方自治体の実施する保健衛生・公衆衛生サービス・補助金や自己負担の医療費が考慮されていない
日本総研はこうした点を加味すると、「総保健医療支出の対 GDP 比で、米国とドイツ以外の国を上回るはず」とし、さらに「ドイツも上回る可能性がある」と指摘。つまり、OECD加盟国中2位または3位であると強調します。
こうした点を踏まえると、「わが国は低医療費である」という認に基づくこれまでの議論を根本的に改める必要があり、日本総研は次のような提言を行っています。
▽わが国の医療制度に対する「費用対効果が高い」という評価を修正し、医療制度をシビアに検証し直すべきである
▽「低医療費」を有力な根拠として、診療報酬改定プラス改定が求められてきたとすれば、来年度(2016年度)の診療報酬改定に向けてはむしろ引き下げが主張されるべきである