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結果を出しやる気も高める「本気のコスト削減」7つのステップ

2015.9.28.(月)

 「コスト削減」と聞くと、ケチケチしたマイナスのイメージを連想する方も多いのではないでしょうか。

 ただ、見方を変えると、コスト削減は「生産活動をせずに利益を生み出すことができる」プラスの側面が見えてきます。「○○円の削減」など、誰が見ても明確な改善効果も確認できます。さらに、その成功体験を組織全体で共有すれば、コスト削減以外も含めた次の改善活動を後押しするきっかけにもなります。コスト削減活動の過程では、「調べたら他病院と検査方法が違っていた」など埋もれていた改善ポイントが発見できるかもしれません。

 GHCマネジャーの塚越篤子は、「コスト削減は最も結果を出しやすい改善活動で、その成功体験は職員の意識改革を呼び起こし、経営改善の好循環につながる」と指摘。そのためには、多職種から成るコスト削減を推進するチームを結成することが好ましく、その実現には7つのステップがあると説明します。

9/26開催のGHCセミナーで講演する塚越 ※本記事は講演内容の一部を編集して作成しました

9/26開催のGHCセミナーで講演する塚越
※本記事は講演内容の一部を編集して作成しました

(1)少数精鋭部隊を結成する

 コスト削減は単なる節約ではなく、医療の質を高めることを前提とした、コストの最適化を推進する改善活動です。GHCは「医療の価値」(質/コスト)の向上をミッションに掲げていて、コスト削減を組織的に取り組むチームを「VAT」(Value Analysis Team:価値分析)と呼んでいます。

 VATは、医師、看護師、事務スタッフなどが参加する「組織横断型のプロジェクトチーム」とすることが必須です。院長や理事長など病院トップの参謀役として、目的、目標、期限を明確にし、病院トップの直轄組織として実効性を持って活動することが必要だからです。人数は「10人を超えると当事者意識がない“ぶら下がり”が出てくる」(塚越)ため、10人以下で結成することを勧めています。

 看護師をいかに巻き込むかも重要です。チームメンバーに加えることはもちろん、看護師から情報収集できる体制づくりが欠かせません。患者に最も近い存在で、多職種と幅広く密に連携を取る看護師から入手できる情報の中には、改善に向けたヒントが多く眠っています。

(2)目的と方法論を共有する

 医療の価値を向上するコスト削減チームがまず取り組むべきは、目的と方法論の共有です。そのチームが何を目的とし、どういう役割を担い、どのような決まりやルールに則ってプロジェクトを推進していくのかを共有できていないと、チームとして機能しません。

 方法論の共有も重要です。特に、現代経済学の父、ピーター・ドラッカーが提唱する「コスト管理の5原則」(1.最大のコストに着目する、2.種類に分けて管理する、3.不要不急の活動を止める、4.事業全体で考える、5.顧客が支払うものとしてとらえる)や「コストの4分類」(1.生産的コスト、2.補助的コスト、3.監視的コスト、4.浪費的コスト)、「価値・質・コストのバランス」の理解などは必須の基本知識です。

(3)リストアップする

 準備が整ったら取り組み候補項目のリストアップです。例えば、医療材料や委託の見直しなどですが、その中でも具体的に何をするのかを細かくリストアップしていきます。観賞植物のレンタルの見直しなど、細かいことでも探せば改善項目はたくさんあります。

 塚越は「どんな病院にでも必ず100項目以上の改善項目は存在する」としており、まずは思いつくままにすべてを列挙し、100項目を超えるまで頭を捻ることを最低限の条件としています。

(4)リストの分類と優先順位付けをする

 100項目以上ある改善項目をすぐにすべて実施するわけにはいきません。それらをしっかり分類した上で、優先順位を付けていくことが必要です。

 例えば、それをやるとコストは下がるのか上がるのか、医療の質はどうか、価値(質/コスト)はどうなるのか、その項目の改善活動は実施しているのか手付かずなのか――。それらを整理してカテゴリ分けし、1つひとつの項目がどのカテゴリに属すのかを整理するとよいでしょう。

 優先順位付けでは、項目ごとに改善インパクトを算出することが理想的です。その際に最適なツールがベンチマークです。他病院と比較してどうなのかが分かれば、現状の立ち位置と改善ポテンシャルを把握できます。データに基づいて議論すれば、チームの共通理解も得やすく、院内全体にも「なぜそれをするのか」を説明しやすくなります。GHCはベンチマーク分析のパイオニアで、DPCデータの保有量は厚生労働省に次ぐ国内最大規模、分析ノウハウは常にトップランナーであると自負しています。

(5)具体的な行動計画を決定する

 優先順位が付けば、具体的な行動計画を決められます。その上で重要なことは、優先順位の高い順に、「誰が」「どのように」「いつまでに」実行するかを決定することです。

 改善項目によっては、チームのメンバーが単独で実行できることもあれば、チーム内でワークチームを編成したり、チーム外のメンバーを巻き込んだりする必要があるなど、さまざまな方法が考えられます。人件費以外のコスト削減の切り口は、「要不要の判断」「価格交渉」「標準化」「定数見直し」―のおよそ4つに分類できるので、そのうちどの切り口に該当するのかを確認します。期限を決めることも重要で、「半年以内など短いスパンで複数の改善項目を検討し、効果が出ないものはすぐに見切りを付ける」(塚越)などスピード感を持って実施していく必要があります。

(6)実行する

 計画が決まれば実行です。ただ、実行する中で新たな取り組み課題が発生する可能性は大いにあります。その場合は、(3)の「リストアップする」に戻り再度、項目を洗い出すことをお薦めします。

(7)検証・共有・次の課題の選定

 改善活動を実行し、期限を過ぎたら、その成果を検証し、共有することは欠かせません。その中から次に取り組むべき課題が見えてきますので、それも含めて今後の行動計画を決定していきます。

 リストアップから検証・共有までを繰り返していくことで、チーム内での改善風土の共有が進み、それは院内全体での改善風土の醸成へと発展させていくことができます。

 いかがでしたでしょうか。冒頭で指摘した通り、コスト削減は最も成果を出しやすい改善活動の1つです。成果が出れば、職員の意識は変わり、組織は活性化し、経営は安定し、積極的な投資につながり、そのことは「医療の価値」(質/コスト)向上に結実します。

 ここでは詳細に触れませんが、院内の取り組みを超えて、複数の病院で取り組む「GPO」(共同購買)も効果的なコスト削減の手法です。米国ではほとんどの病院が採用している手法で、その最新情報のセミナーを11月7日に開催します。以下の画像下にあるリンクからぜひご確認ください。

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GPOで医療材料費を最適化せよ―米国の現状と日本での展望

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。
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