大病院志向にメス、紹介状なし初診時5千円負担を提案―厚労省
2014.10.16.(木)
社会保障審議会医療保険部会が15日開かれ、厚生労働省は、開業医などの紹介状なしに大病院の外来を受診した患者に対し、定額での負担を求める仕組みを導入する際の論点を示しました。新たな仕組みの導入は、患者側の大病院志向に切り込むことで勤務医の負担軽減や医療資源の効率的な活用につなげるのが狙いで、患者側に負担を求める具体的な金額として厚労省は、初診時5000円、再診時1万円を提案しました。
2013年末に成立した社会保障改革のプログラム法では、医療保険の給付対象となる「療養の範囲」の適正化を今後の検討課題に挙げていて、大病院の外来を紹介状なしに受診した患者による定額負担の導入も具体策の一つです。同省ではこのほか、▽入院時食事療養費と生活療養費▽後期高齢者の保険料の軽減特例―についても見直す方針を示しました。
現在でも、紹介状なしに200床以上の病院の外来を受診した初診の患者や、ほかの医療機関を紹介したのに紹介元の病院を受診した再診患者から、病院側は自己負担として「選定療養費」を徴収できます。しかし、厚労省によると実際にこうしたスキームを活用しているのは初診では45%、再診では4%といずれも少なく、これとは別に保険給付の範囲内で定額での負担を求める仕組みの導入に踏み切ります。ただ、救急搬送などやむを得ずに受診するケースには負担を求めない方針です。
15日の会合では、新たな患者負担の導入への慎重論がありましたが、明確な反対意見はありませんでした。
同省が提示した論点は、定額負担の仕組みをどのような病院に導入するかや、患者側が負担する具体的な金額などです。このうち対象病院の範囲については、「特定機能病院」(86病院)、「地域医療支援病院」(439病院)、「DPC対象病院」(1585病院)のように病院の機能に着目して線引きする案と、「200床以上」(2656病院)や「500床以上」(450病院)など病床規模で区分けする案を示しました。
患者側の具体的な負担額としては、初再診料の相当額から一部負担金を差し引いて初診時1974円、再診時511円を目安とする案(3割負担の場合)と、外来での平均的な費用を踏まえて初診時5000円、再診時1万円とする案を示しました。
同省の研究班では、初診時に5000円以上の負担を求めると軽症での受診をかなり抑えられるという調査結果をまとめていて、15日の会合でも「初診時5000円」程度が妥当だという意見が多く上がりました。
また、新たな仕組みのスキームとして同省は、▽初再診料相当額を定額負担に付け替え、この分は給付しない(パターン1)▽一部負担金相当額に加え、保険給付の範囲内で新たな定額負担を求める(パターン2)▽「療養の給付」の費用に上乗せして定額負担を求める(パターン3)―の3パターンを示しました。