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メディ・ウォッチはGemMed(ジェムメド)に生まれ変わりました 運営会社 GLOBAL HEALTH CONSULTING

現場の声を大切にしたきっかけが効果的な指標提示に―倉敷中央病院と回生病院が講演、DBユーザー会

2015.12.2.(水)

 GHCは11月30日、社会医療法人財団大樹会回生病院(香川県坂出市)で次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」を導入済みの病院向けにユーザー会を開き、中国・四国地方で急性期医療をカバーする2病院の担当者が実際の活用事例を報告しました。どちらも急性期医療をメーンにカバーする病院で、診療報酬改定の影響を事前にシミュレーションした結果を院内で共有することで早期対応につなげたり、ベッドコントロールを徹底させて医療の効率化に役立てたりしています。

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  今回、活用事例を発表したのは、会場となった回生病院と倉敷中央病院(岡山県倉敷市)です。このうち倉敷中央病院の事例発表は、同病院の中島雄一・経営企画部長が行いました。同病院では病院ダッシュボードなどのツールを使って診療報酬改定による影響をあらかじめシミュレーションし、早期の対応につなげているということです。

分析結果を独自にアレンジ、運営改善に一役

 例えば2014年度診療報酬改定で短期滞在手術等基本料3(短手3)が白内障の手術に適用されるのに先立って行ったシミュレーションでは、仮に何も対応を取らなければ、一連の見直しによって年間での収支が7500万円程度悪化することが分かりました。院内には当初、短手3の見直しで大きく減額される「両眼」の症例が多かったといいます。このため大幅な収支悪化がもたらされるところでしたが、眼科側からの心配の声をいち早くキャッチして、同病院ではシミュレーションの結果を眼科と共有してクリティカルパスの「両眼7日」の適用割合を大幅に減らすことで、これを未然に防ぐことができました。

2015.11.30ユーザー会①

 診療報酬改定に関連するもの以外の分析にも病院ダッシュボードを活用しています。例えば心不全の症例の分析では、特定集中治療室管理料を算定している入院初期にも赤字になっていることが明らかになりました。同規模のほかの病院との比較分析では、処置や検査が多いとが分かりました。高齢化、地域の救急機能という事業性としては非効率でも重要な役割を担っている当院のような病院は、今後、ますます厳しい立場にあるといいます。

 中島氏は「(倉敷中央病院は)どちらかというと現場主導の病院」と指摘し、こうした病院の中での経営企画部の役割を「改善の推進役」と位置付けました。中島氏は、病院ダッシュボードなどのツールを使って分析した結果をそのまま提示しても現場の反応は薄いと感じており、「現場の声や事情に配慮したいろいろなデータを加工しないと(改善策の検討に)つなげてもらうのは難しい」と、分析結果を独自にアレンジするなど工夫する重要性を指摘しました。

 中島氏は、自動車メーカーで部品の管理会計に携わってきた経歴の持ち主です。自動車メーカー時代には、コストを維持・低下させながら機能を高める「価値科学」(バリュー・エンジニアリング)と呼ばれる概念身につけてきたといい、中島氏はこうした考えが医療の効率化を進めるためにも重要な時代が来たと感じていると強調しました。

 中島氏は「『倉敷中央病院ならそれほど経営を心配する必要はないだろう』とよく言われるが、実際にはわれわれも急性期の高度な機能への投資もあり非常に厳しい経営を迫られている」と強調しました。同病院では最新の医療設備を整備していることもあって、例えば病床の稼働率が少し落ち込むだけで収支に大きく影響しかねないといいます。そのため中島氏は、価値マネジメントの重要性がこれから先、一層高まると指摘しました。

回生病院、入院期間に短縮の兆し

2015.11.30ユーザー会② 一方、回生病院が病院ダッシュボードを導入したのは14年12月で、入院期間の短縮に効果を発揮しています。活用事例を発表した竹北隼人・医事課主任によりますと、同病院では入院の長期化がかねてから問題になっていました。同病院の14年度の平均在院日数は15日、DPC病棟では入院期間IIを超える症例の割合が全体の34.1%で、病院ダッシュボードによる分析では、全国の同規模病院の水準をそろって上回っていることが分かりました。

 回生病院がある「中讃医療圏」では、同病院を含め計7病院が急性期医療を担っていますが、退院後の受け皿となる回復期の機能を持つ病院は少なく、竹北氏は、医療体制のこうした歪みが早期退院を困難にしている要素の1つと考えました。

 そこで同病院では今年5月、14年度の診療報酬改定で新設された「地域包括ケア病棟」にまず1病棟(46床)を切り替え、急性期の治療が一段落した患者の転棟を進めてきました。転棟の対象にしたのは▽全国的に症例数が多い肺炎や脳梗塞などの疾患▽1日当たりのDPC点数が1800点未満―のいずれかに該当する患者で、これら両方の基準に該当する患者は最優先で転棟させています。全国的に症例数が多い肺炎などの患者をピックアップしたのは、機能評価係数IIのうち「効率性係数」を高めるのが狙いだったということです。

 入院期間を短縮させるため、入院早期からの退院調整にも積極的に取り組んでいます。同病院ではまず、すべての患者のスクリーニングを入院後すぐに実施し、入院後7日目までに「退院支援計画書」を作成するフローを徹底させました。さらに、退院支援計画書の様式を見直し、早期退院を目指す上での課題を記入する欄をつくりました。早期退院を目指す上でどのような課題があるか、患者や家族に具体的に説明できるようにするためです。

 これらの取り組みを進めてきた結果、今年5-9月の平均在院日数は14年度(通年)に比べ2日程度減少し、入院症例の1日単価が5000円アップするなど改善の兆しが見えてきました。ただ、同規模他病院の水準に比べると入院期間はまだ長く、引き続き短縮を進める方針です。その一環として同病院ではこの12月、さらに1病棟(42床)を地域包括ケア病棟に切り替えました。

 竹北氏は発表で、「地域包括ケア病棟を88床に増やすことで、一連のベッドコントロールの精度をさらに高める必要がある。退院調整のノウハウも積み上げて効率的に運営できるようにしたい」と話しました。

「富士山の5合目から登頂スタート」

2015.11.30ユーザー会③ GHCの湯浅大介マネジャーはこの日、院内の課題をすぐ洗い出せることが、病院ダッシュボードの最大の強みだと強調しました。その上で湯浅は「富士山の頂上が課題解決のゴールだとすると、病院ダッシュボードは1合目からではなく、5合目からスタートさせてくれる」と話しました。

 例えば「DPC俯瞰マップ」のトップ画面では、「医業収益」「入院1日単価」「期間II超割合」など12通りの指標について、その病院の状況が青-赤-黄で表示されます。青に表示されている指標は、同規模他病院との比較で上位から25%以内に自病院がランクしていて、良好な状況にあることが分かります。これに対して、赤く表示されるのは下位25%以内にランクしている指標ですぐにでも対応を図る必要があります。

 これらの指標は互いに関連していて、例えば「入院1日単価」が赤く表示されていたら「期間II超割合」の値が高かったり、「手術症例数」が少なかったりすることなどが影響している可能性があります。そこで、DPC俯瞰マップの「ベンチマーク分析」の機能を使って診療科ごとに分析を深掘りしてどこに課題があるのかを突き止める、という流れです。

 湯浅は、こうした分析結果を院内で共有することで、改善策の立案に役立ててほしいと参加者らに呼び掛けました。

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