国内初の「がん診療連携拠点病院等の現況報告書」の分析結果を発表、第17回CQI研究会総会が過去最高132病院参加で開催
2025.9.16.(火)
がん医療の均てん化を目指し、全国の約45%のがん診療連携拠点病院等で構成される「Cancer Quality Initiative(CQI)研究会」(代表世話人:藤 也寸志(とう・やすし)=九州がんセンター名誉院長)の第17回総会が2025年8月30日、東京都内の会場およびオンラインの2つの参加形式で開催されました(CQI研究会の紹介ページはこちら)。今回は過去最高の132病院180人が参加。すべてのがん診療連携拠点病院等が各診療体制や実績を国に報告する「現況報告書」をまとめたデータについて、国内初となる分析結果が報告されました。
CQI研究会は、がん医療の質向上を目指す有志病院(栃木県立がんセンター、千葉県がんセンター、神奈川県立がんセンター、愛知県がんセンター、四国がんセンター)が2007年に設立(後に岩手県立中央病院、九州がんセンター、がん研有明病院が加わり現在は8病院の代表者が世話人。以下参照)。DPCデータに基づく参加病院の診療内容・実績などのデータを実名で比較分析し、その結果を各病院の医療現場へフィードバックすることで、がん医療の質向上を目指す研究会です。
会員にはがん診療内容の分析ツール「Cancer Dashboard」が無償提供されます(「Cancer Dashboard」の詳細はこちら)。会員は「Cancer Dashboard」を用いることで、自院はもちろん気になる他病院のがん診療内容を実名で知ることができ、医療や経営の改善活動に活用することができます(以下参照)。分析および分析ツール提供はグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が担当しています。
第17回CQI研究会総会は、新代表世話人に藤氏、新たな世話人病院にがん研有明病院を迎えた新体制で開催する初めての総会になります。プログラムも新たな試みを多数盛り込み、(1)「現況報告書」に基づいた分析、(2)入院での抗がん剤治療分析、(3)入院でのがん治療(胃がん、前立線がん、肺がん)の経年変化分析――の大きく3つをテーマに、各種データ分析の結果が報告されました。
「現況報告書」に基づいた分析のテーマでは、藤氏が「がん診療連携拠点病院の現況報告の検討と今後のがん診療提供体制や評価のあり方について」と題して講演しました。
分析結果によると、患者相談(がん相談支援センター)の窓口体制、緩和ケア外来の開催頻度や地域連携推進のための多職種カンファレンスの開催・参加回数、遺伝性腫瘍外来など各種がん関連外来の設置状況などについて、それぞれ大きなばらつきの存在が確認されました。ただ、現況報告書のデータは、質問の解釈や回答の基準が各病院や各担当者によって異なりばらつきがあることによるデータ精度への懸念があると考えられました。また、今回の最新データが新型コロナウイルス感染拡大期にあたる令和4年(2022年)時点のものなので、その影響を受けているなどの可能性は否めません。一方で少子高齢化・人口減少がピークに達する「2040年問題」に向けて、国はがん診療連携拠点病院等を中心としたがん医療の集約化と均てん化を目指しているため、藤氏は「今回の分析結果を、今後のがん診療連携拠点病院等のあり方を検討する上での議論のきっかけにしてもらいたい」としています。

CQI代表世話人の藤也寸志氏(九州がんセンター名誉院長)
入院での抗がん剤治療分析のテーマについては、世話人でがん研有明病院の渡邊雅之副院長が「食道がん術前補助化学療法の現状分析」と題して講演。入院でのがん治療の経年変化については、胃がんを世話人で愛知県がんセンターの山本一仁病院長と同院入退院支援グループの柴田亜弥子師長、前立線がんを世話人で神奈川県立がんセンターの岸田健副院長・地域連携室長・泌尿器科部長、肺がんを世話人で栃木県立がんセンター呼吸器外科の中原理恵科長がそれぞれ登壇。経年変化で各病院の改善状況について確認し、その要因や背景について解説しました。
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