地域包括ケアシステムの構築に向け、地域包括支援センターの体制を強化―厚労省
2016.1.26.(火)
地域包括ケアシステムの構築に向けて、厚生労働省はこのほど地域包括支援センターの体制強化や関係機関との連携強化などを進めるために設置運営要綱の改正を行いました。
地域包括支援センターは、高齢者が要介護状態になっても住み慣れた地域で暮らせるよう「保健・医療・福祉の向上」「介護予防マネジメント」「高齢者からの相談受け付け」などを総合的に行う施設で、各市町村に設置されています。
設置の根拠は介護保険法第115条の46に規定されていますが、どのような人員体制を整備するのか、どのような運営を行うのか、具体的な業務はどのようなものなのかなどは設置運営要綱(厚労省の通知「地域包括支援センターの設置運営について」)に記載されています。
ところで厚労省は、地域包括ケアシステムの構築を最重要施策の一つに位置付けており、その一環として2015年に介護保険法の改正を行いました。今般、改正法の趣旨も踏まえて地域包括支援センターの体制強化などをめざし、設置運営要綱の改正を行いました。主な改正点は次の4点です。
(1)「地域包括支援センターの体制強化」を市町村の責務に加える
(2)地域ケア会議の実施に関する内容を加える
(3)関係機関との連携に関する内容を加える
(4)「新しい総合事業」創設に伴う見直しを行う
(1)の体制強化については、▽適切な人員の確保▽市町村との役割分担・機能強化▽センター同士の役割分担と機能強化▽効果的なセンター運営―に関する規定が置かれました。
地域包括支援センターの人員は、業務量に応じて配置する必要があります。例えば、高齢化が進展すれば、それに伴って相談件数が増加することが考えられるため、人員増を検討しなければいけません。
この点、市町村の行う包括的支援事業・任意事業の上限額については、2014年度までは「介護給付費見込額の2%」とされていましたが、2015年度からは「介護給付費見込額の2%に、その市町村における『65歳以上高齢者数の伸び率』を掛けた金額」に引き上げられています。
設置運営要綱では、この上限額引き上げの枠組みも活用しながら、適切な人員を確保することを求めています。
(2)の地域ケア会議は、地域の個別事例のうち、地域全体で解決するべき課題をテーマに、多職種で解決方法を検討するものです。Aさんへの介護サービスを行うには大きな課題があり(例えば医療・介護の連携が上手くいっていないなど)、それを解決することが地域全体の介護サービスを向上させるケースなどが代表的でしょう。
2015年の介護保険法改正で、地域ケア会議の設置・開催が「法律上の制度」(市町村の努力義務)に位置付けられ(法第115条の48)、地域包括支援センターがその運営を担います。
設置運営要綱では、地域ケア会議の留意点として次のような項目が付加されました。
▽会議で検討するために、必要に応じて関係者に資料や情報提供などの協力を求めることができ、関係者は協力するよう努めなければならない
▽会議の参加者は、正当な理由なく会議で知り得た情報を漏らしてはならず、違反者には罰則がある
▽会議の目的や、管内で統一すべきルールなどを市町村と地域包括支援センターが共有し、センターが抽出した課題(前述の例であれば、医療・介護連携の不足)を、市町村が適切に集約し、課題の活用方法なども併せて提示する
▽地域包括支援センターは、関係機関(在宅医療・介護連携推進事業、生活支援体制整備事業、認知症総合支援事業などを推進する関係者)との緊密な連携を図る必要がある
2015年の介護保険法改正では、新たな総合事業が創設されました。これは、高齢者が要介護状態になることを防ぐ(介護予防)ために市町村に実施が義務付けられたもので、要支援者などに対する「介護予防・日常生活支援総合事業」と、すべての高齢者を対象とした「一般介護予防事業」で構成されます。
この新たな総合事業の創設によって、従前の「介護予防ケアマネジメント事業」が「第一号介護予防支援事業」(前述の要支援者などに対する事業の一環)に変更されます。
そこで設置運営要綱では、この事業を実施するに当たって地域包括支援センターの業務内容を整理しています。