18年度改定で公立病院が飛躍する条件とは―公立病院ベンチマーク勉強会2016年春
2016.5.18.(水)
診療・介護報酬改定、医療計画・介護保険事業計画の見直しの3つが重なる2018年度は、日本の医療・介護の環境が激変すると言われています。18年度までに国内の病院はどのような対応をすれば、病院大再編時代を生き残ることができるのか――。公立病院が集まり、DPCデータによる分析結果を実名(病院名)で公開するベンチマーク勉強会がこの春、開催されました。
医療連携など実名データで議論、第3回せやCoM
直近では5月6日、「大阪府公立病院ベンチマーク勉強会(通称:せやCoM)」が開催されました。3回目となる今回は、過去最多10病院24人が参加(図表1)。16年度診療報酬改定、地域医療構想、機能評価係数Ⅱなどの最新情報を共有した上で、ベンチマーク分析を通して18年までにすべきことを議論しました。ベンチマーク分析は、主に退院調整加算やリハビリ実施率などのチーム医療に関連する項目と機能評価係数IIを取り上げ、体制強化や係数向上策について白熱した議論が展開されました。
今年3月に策定された大阪府の地域医療構想では、2025年の必要病床数は2013年と比較して大阪府全体で約1万床不足、機能別では急性期過剰、回復期不足と試算されています(図表2)。ただ、この算出ロジックには疑問点も多数あります。勉強会で講演したGHCアソシエイトマネジャーの八木保は、(1)地域の医療ニーズをデータで見極めたうえで、地域医療構想の先手を取る病床機能分化、(2)機能評価係数II向上、(3)医療提供体制の整備――の3つの視点で早めの対策を行うことが、18年度の診療・介護報酬の同時改定で飛躍するための条件であるとしました。
松坂市民の呼吸器センター立ち上げの内幕、第20回ToCoM
前年度末の3月25日には、約100人の関係者が一堂に会し、「東海地区自治体病院コンソーシアム(ToCoM)」の第20回会合が開催されました。
「『人は石垣 人は城』~病院運営の投資はハードからソフトへ~」と題して講演した松阪市民病院呼吸器センター長の畑地治氏は当時、松阪市民病院で唯一の呼吸器内科医。いかに孤軍奮闘して呼吸器センター(内科5人、外科2人)を立ち上げ、松阪市民病院の売り上げの35%を稼ぐようになったかを報告しました(座長は小牧市民病院副院長兼内科統括部長の川口克廣氏)。
ポイントは、「紹介患者には最低3回の報告書を徹底」「三重県の呼吸器関連の学会・研究会に出席して発表し続けて名前を覚えてもらう」「少ない症例数でも治験に積極参加し、治験開始日に症例を提出」などの取り組みで、「松阪に頼めばすぐにやってくれる」という実績を作る一方、三重大学の学生との積極的な交流を図ることで、人財を確保していったといいます。
「公立病院の将来像」と題したシンポジウムでは、GHCマネジャーの塚越篤子が「適正病床数を考える」をテーマに講演した上で、メディカル・データ・ビジョンの小林大士氏、豊橋市民病院副院長兼脳神経外科第一部長の雄山博文氏、中津川市民病院地域医療連携室長兼退院調整室長の大山孝子氏、大垣市民病院事務局庶務課企画経営G主幹の川崎徹雄氏の5人でのパネルディスカッションを行いました(座長は松阪市民病院副院長兼泌尿器科長の櫻井正樹氏)。
このほか、「平成28年度診療報酬改定と今後の方向性」(座長・松阪市民病院総合企画室副室長の世古口務氏)と題して、東邦大学医学部医療政策・渉外担当特任部門教授で診療報酬調査専門組織「DPC評価分科会」分科会長の小山信彌氏が講演しました。