病院の建設コストさらに増加、300床新設の場合、2011年度から18年度にかけ25億円超の増加―福祉医療機構
2019.7.10.(水)
昨年度(2018年度)に、▼300床の病院▼100床の老健施設▼50床の特別養護老人ホーム―を建設した場合、2011年度時点に比べて、それぞれ「25億円超」「4億円超」「1.5-2億円程度」のコスト増になる―。
このような状況が、福祉医療機構(WAM)が6月28日に公表したリサーチレポート「平成30年度 福祉・医療施設の建設費について」から明らかになりました(機構のサイトはこちら)(前年度の関連記事はこちら)。
目次
2018年度に300床の病院建設、2011年度時点に比べ25億円超のコスト増
まず病院の建設費を見てみると、2018年度の「1平米当たりの建設費(以下、平米単価)」は36万5000円で、前年度に比べて1万9000円(端数の関係)上昇しています。2011年度に病院全体で20万8000円となり底を打ってから、上昇を続けています。
ついに来年度(2020年度)に迫った東京オリンピック・パラリンピック開催などを踏まえて、全国的に建設費が上昇傾向にあると考えられます。
また、「定員1人当たりの延べ床面積」を見ると、2018年度には54平米となり、前年度から3.4平米上昇しています。2017年度の50.6平米が「底」なのか、それとも単なる「踊り場」なのか、今後の状況を注視する必要があります。
さらに「定員1人当たり建設単価」を見ると、2018年度は1971万7000円で、前年度から163万3000円の増加となりました。2011年度以降、一貫して上昇傾向にあります。
300床の病院を新設する場合、「近年の底値」と言える2011年度には33億9240万円ですみましたが、2018年度には59億1510万円が必要となり、25億円超のコスト増となります(これらの数字には消費税が含まれている)。病院の「新設」「大改築」などを行う場合には、今後の東京オリンピック・パラリンピックを控えた建設費の高騰、今年(2019年)10月予定の消費税率引き上げ(8%→10%)を勘案する必要があります。もちろん、医療制度の動きとして、「地域医療構想」や「診療報酬改定」に関する情報や近隣病院の動向なども注視し、「適切な病床数」(地域の医療ニーズを踏まえ、病床過剰になっていないかなど)も考慮する必要があります。
2018年度に100床の老健施設建設、2011年度時点に比べて4億円超のコスト増
次に介護老人保健施設の状況を見ると、次のように動いています(図表は上記で病院と老健とを併記しています)。
▼平米単価:31万2000円(前年度から3万9000円上昇)
▼定員1人当たり建設単価:1299万2000円(同30万9000円上昇)
100床の老健施設を建設する場合、病院と同じく単価が底値であった2011年度には8億9140万円でしたが、2018年度には12億9920万円となり、4億円強のコスト増となる計算です。
2018年度に50床の特養建設、2011年度時点に比べ1.5-2億円のコスト増
さらに2018年度におけるユニット型の特別養護老人ホームの建設費を、(1)首都圏(2)全国―の地域別で見てみると次のような状況となっています。
(1)首都圏
【平米単価】32万4000円(前年度から2万円上昇)
【定員1人当たり建設単価】1368万3000円(同60万3000円上昇)
(2)全国
【平米単価】29万1000円(同1万3000円上昇)
【定員1人当たり建設単価】1343万8000円(同34万5000円上昇)
50床の特養ホームを建設する場合、2011年度には全国では5億1850万円、首都圏では4億6905万円でしたが、2018年度には全国で6億7190万円、首都圏では6億8415万円が必要となります。全国では1億5000万円強、首都圏では2億円強のコスト増となります。
なお、都道府県別に特養ホームの平米単価を見ると、最高は東京都の33万6000円(前年度に比べて9000円低下)、最低は北海道の22万2000円(同3万6000円低下)となっています(サンプル数が少ない自治体は除外しており、全都道府県の状況は明らかになっていない)。
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