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一般病院の定員当たり建設費は2000万円超、300床では25億円のコスト増に―福祉医療機構

2017.5.22.(月)

一般病院を建設する際の「定員1人当たり建設費」は、2018年度には2033万8000円となり、5年前に比べて69.3%も増加した。300床の一般病院を新設する場合、5年前に比べて建設費だけで25億円程度のコスト増になる―。

このような状況が、福祉医療機構(WAM)が19日に公表したリサーチレポート「平成28年度 福祉・医療施設の建設費について」から明らかになりました(機構のサイトはこちら)。今後の入院・入所も踏まえて、病院や介護施設の建設計画が適切かをしっかり検討する必要があります(前年度の状況はこちら)。

一般病院の「定員1人当たり建設単価」、2011年度から約70%上昇

まず病院の建設費を見てみると、今般の調査では、平米単価が2011年度に病院全体で20万8000円、一般病院(全病床に占める一般病床の割合が5割以上の病院)で20万9000円となり底を打ちました。しかし、その後、上昇を続け、2016年度には病院全体で34万6000円(2011年度から13万8000円・66.3%増か)、一般病院で35万1000円(同14万2000円・67.9%増)となりました。WAMでは、「2016年度は建設費水準が高い首都圏のサンプルが増加しており、これが全体平均を押し上げた」と注意書きをしていますが、東京オリンピック開催などを踏まえて、全国的に建設費が上昇していること自体は否定できないでしょう。

 一方、定員1人当たりの延べ床面積を見ると、病院全体では55から60平米程度、一般病院では60から70平米程度で推移しており、それほど大きな変動はないことから「定員1人当たり建設単価」も上昇傾向にあると言えます。2011年度には病院全体の「1人当たり建設費」は1130万8000円、一般病院では1201万円という状況でした。

これが2018年度になると、病院全体では1746万8000円(同616万円・54.5%増)、一般病院では2033万8000円(同832万8000円・69.3%増)という状況です。

病院における平米当たり建設費、定員1人当たり建設費の推移

病院における平米当たり建設費、定員1人当たり建設費の推移

300床の一般病院を新築する場合には、建設費のみに着目しても2011年度(今から5年前)に比べて25億円程度のコスト増になる計算です。一方で、2011年度に比べて、「患者1人当たりの単価が60%、70%も上昇している」わけではないので、病院を新築・改築するにあたっては、どのようにコストを抑えることができるかが非常に重要になります。

老健施設の「定員1人当たり建設単価」は2011年度から50%超の増加

老健施設についても同様に見てみると、平米単価は2011年度に19万1000円と底を打ちましたが、2016年度には29万1000円で、10万円・52.4%増。定員1人当たり建設単価は、2011年度に891万4000円でしたが、2016年度には1347万7000円(同456万3000円・51.2%増)となりました。

介護老健施設における平米当たり建設費、定員1人当たり建設費の推移

介護老健施設における平米当たり建設費、定員1人当たり建設費の推移

100床の老健施設を新築する場合、5年前と比べて建設費だけに限っても5億円弱のコスト増となる計算です。

特養ホームの建設単価(平米当たり)、東京が最高、岐阜が最低

さらに特養ホーム(ユニット型)について、(1)首都圏(2)全国―の地域別に見てみると、首都圏で建設単価が高騰している状況が明確になっています。なお、今回調査では特養ホームの建設単価の底が2010年度でしたが、病院や老健施設と揃えるために、2011年度を比較対象にしています。

(1)首都圏

【平米単価】2011年度:22万7000円 → 2016年度:32万1000円(9万4000円・41.4%増)

【定員1人当たり建設単価】2010年度:938万1000円 → 2016年度:1239万7000円(301万6000円・32.2%増)

2)全国

【平米単価】2010年度:20万2000円 → 2016年度:28万3000円(8万1000円・40.1%増)

【定員1人当たり建設単価】2010年度:1037万円 → 2016年度:1259万円(222万円・21.4%増)

特養ホームにおける平米当たり建設費、定員1人当たり建設費の推移

特養ホームにおける平米当たり建設費、定員1人当たり建設費の推移

なお、都道府県別に特養ホームの平米単価を見ると、最高は東京都の35万円、最低は岐阜県の18万9000円となっています。

医療施設・福祉施設に限らず、「建設費は東京五輪までは高止まりする」ことは避けられないでしょう。コスト低減のための別の方法(例えば資材の見直しなど)も検討するようWAMは求めています。

なお、今後の人口減少(地域によってはすでに始まっている)や地域包括ケアシステムの推進を踏まえ、入院・入所需要がどう変化するのか(すでに減少が始まっている地域もある)を見極めた上で病院や介護保険施設の建設をする必要があります。老朽化により新設が余儀なくされる場合であっても、規模(ベッド数)を再度見直すなどの慎重な対応が求められます。

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