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小規模多機能型、登録率と平均要介護度上げることが経営改善の最重要ポイント―福祉医療機構

2015.9.24.(木)

 小規模多機能型居宅介護の経営を好転させるには「利用者の登録率」を上昇させることが重要で、そのためには「訪問サービスの強化」が望ましい。また黒字施設では経営安定化に向けて「利用者の平均要介護度を上げる」ことも重要―。こういった分析結果を福祉医療機構(WAM)が17日に発表しました。

小規模多機能型、13年度は黒字施設が減少し、収支も悪化

 WAMでは、医療・福祉事業に対する資金貸付を行っており、債権管理の一環として貸付先の法人や施設から財務諸表と事業報告書の提出を求めています。今般、小規模多機能型の2013年度決算状況をまとめ、分析を加えたリサーチレポートを公表しました。

 小規模多機能型は、介護保険サービスのうちの「地域密着型」サービスの一類型で、▽通い▽宿泊▽訪問―の3サービスを1つの事業所が実施します。同じ事業所で複数のサービスを受けられることから、利用者と介護者との間に「顔なじみ」の関係が生まれ、利用者が安心してサービスを受けられ、ひいては要介護度の改善に向けて利用者がより積極的に活動することや、要介護度が重くなっても在宅生活を継続できることなどが期待されています。

 小規模多機能型を利用するためには登録することが必要で、定員は最大で29名まで、そのうち▽通いは18名まで▽宿泊は9名まで(いずれも1日当たり)―という利用人数の上限が設けられています。ただし15年度の介護報酬改定以前は、定員が25名までとなっていました。

 13年度における小規模多機能型利用者の要介護度を見ると、▽要支援1が4.0%▽要支援2が5.6%▽要介護1が24.8%▽要介護2が25.5%▽要介護3が21.0%▽要介護4が12.6%▽要介護5が6.4%―で、平均2.21となりました。前年度に比べて0.08ポイント低下しています。平均要介護度が下がったため、登録者1人当たり・1か月当たりの収益は22万4401円で、前年度に比べて4276円低下しています。

 一方、登録率は前年度に比べて3.4ポイント上昇し、79.9%となりました。このため、1施設当たりの収益は、前年度に比べて105万6000円増加し、5268万9000円となりました。

 また、支出が前年度に比べて197万5000円増加し、5218万円となったことから、収支差は91万9000円減少し、51万円の黒字となっています。収支差率は0.7%(前年度比1.8ポイント悪化)です。

2013年度(平成25年度)において、小規模多機能型の経営は悪化し、収支差率は前年度に比べて1.8ポイント低下した

2013年度(平成25年度)において、小規模多機能型の経営は悪化し、収支差率は前年度に比べて1.8ポイント低下した

赤字施設と黒字施設の差は「登録率」と「平均要介護度」

 13年度決算で黒字を計上した小規模多機能は75施設で、全体の51%。前年度から8ポイント減少しました。逆に72施設が赤字となり、全体の49%(前年度から8ポイント増加)となりました。

 黒字施設と赤字施設を比べると、次のような差異があることが分かります。

(1)登録率は、赤字75.0%に対し、黒字84.5%で、9.5ポイントの開き

(2)平均要介護度は、赤字2.15に対し、黒字2.26で、0.11ポイントの開き

(3)人件費比率は、赤字84.5%に対し、黒字66.7%で、17.9ポイントの開き

 WAMでは、「平均要介護度が高ければ介護報酬の単価が高くなる」「登録率の上昇で収益全体が増加する」ことから、(1)と(2)の違いが大きな収益差を生んでいると分析。さらに、従事者1人当たりの人件費が赤字施設では、黒字施設に比べて29万7000円高いことも手伝って、(3)の人件費比率の差につながっていると見ています。

小規模多機能型を黒字・赤字別に見ると、黒字施設では「登録率が高く」「平均要介護度も高い」ことが伺える

小規模多機能型を黒字・赤字別に見ると、黒字施設では「登録率が高く」「平均要介護度も高い」ことが伺える

赤字施設は、まず訪問強化により登録率の上昇を

 (1)の登録率を上げるためには、どのような取り組みをすればよいのでしょうか。

 登録率別に小規模多機能の経営状況を見ると、「登録率が高いほど、収支差率も高い」ことが分かります。登録率が80%以上の施設では平均収支差率が10.1%なのに対し、60%以上80%未満の施設では1.5%、40%以上60%未満の施設では0.6%、20%以上40%未満の施設ではマイナス5.0%、20%未満の施設ではマイナス7.6%という状況です。

小規模多機能型では、登録率が高いほど、収支が良いことが分かる

小規模多機能型では、登録率が高いほど、収支が良いことが分かる

 ここからWAMは「登録率は80%以上を保持することが必要」と提言。さらに「利用定員のない訪問サービスを強化することで、より多くの地域の要介護者・要支援者と関わる機会が増え、登録に繋がりやすい」と述べ、訪問に力を入れるべきと強調しています。実際に、登録率の高い施設では、「訪問」の利用者の割合が高くなっています。

 特に赤字の施設では、収支差率の違いが登録率に大きな影響を受けていることから、WAMは「赤字施設が経営状況を回復するためには、まず登録率を上昇させることが必要」と述べています。

黒字施設では、中重度者受け入れを強化し、単価上昇を

 一方、(2)の要介護度については、「平均要介護度が高いほど、登録者1人当たり収益が増加し、収支差率も高い」傾向があります。

 平均要介護度が3.0以上の施設では収支差率が3.7%であるのに対し、2.5以上3.0未満の施設では3.3%、2.0以上2.5未満の施設では1.5%、1.5以上2.0未満の施設ではマイナス2.5%、1.5未満の施設ではマイナス10.4%という状況です。この状況に鑑みてWAMは「平均要介護度2.0以上が望ましい」と提言。

 更に、ここで注目すべきなのは「登録率が高くても、平均要介護度が低ければ収支差率は悪い」という点です。収支差率がマイナス10.7%である「平均要介護度1.5未満」の施設の登録率は83.4%ですが、平均要介護度3.0以上の施設(収支差率は3.7%)では登録率は71.9%に過ぎません。つまり、小規模多機能型において経営を最も左右するのは「利用者の平均要介護度」と言えるのです。

小規模多機能では、利用者の平均要介護度が高いほど、収支差率が高い状況にある

小規模多機能では、利用者の平均要介護度が高いほど、収支差率が高い状況にある

 WAMは「黒字施設が経営を安定させるためには、登録率と平均要介護度を上げることが重要」と分析しています。

 こうした点を踏まえてWAMは、小規模多機能型の経営を改善させるために次のような提言を行っています。

▽積極的に訪問サービスを行い、また地域の医療機関や自治体などとの連携を進め、登録率を上昇させる

▽地域のニーズや自施設の特性を踏まえて、中重度の要介護者を主な対象とし、施設の体制を強化して手厚いサービスを提供していく方向もある

▽赤字施設、黒字施設ともに経費のコントロールも重要である

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