介護報酬の運営基準見直し案を了承-省令・通知を近く改正へ
2015.1.10.(土)
社会保障審議会・介護給付費分科会は9日、2015年度の介護報酬改定に向けてサービスの運営基準などに関する諮問案を了承しました。厚生労働省は、関係省令と通知を近く改正します。介護サービスの運営基準の策定は、地方分権の一環で市町村に委譲されており、市町村は今回の改定内容を参考にして条例改正を行います。
運営基準の改定案は、14年11月26日に分科会に示され、その後パブリックコメント(意見募集)に掛けられていました。運営基準の改定内容の重要部分を見ていきましょう。
【関連記事】
15年度介護報酬改定、新単位数の2月6日諮問へ-介護給付費分科会
通所リハビリテーションや訪問リハビリなどいわゆる生活期のリハについては、これまで「心身機能維持に偏っている」と指摘されたことから、再構築を図ります。
まず、通所リハの基本方針に「心身機能」「活動」「参加」といった生活機能の維持・向上を図るものでなければならないことが規定されます(訪問看護、通所介護、認知症対応型通所介護でも同様)。
また、訪問・通所リハを同一事業所が提供する場合の運営効率化を推進するため、リハ計画、利用者の同意書、サービス実施状況の診療記録への記載などを効果的・効率的に実施できるよう基準が見直されます。
さらに、ケアマネジャーやサービス担当者らがリハカンファレンスに参画し、利用者主体の日常生活に着目した支援方針や目標、計画を共有する努力義務が訪問・通所リハを提供する事業者に課されます。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護(定期巡回・随時対応サービス)については、夜間のオペレーター(利用者からの電話等を受け、随時対応サービスの発動を指示)の配置基準が緩和されます。具体的には、これまで「併設する施設・事業所」に限定されていた午後6時から翌日午前8時までのオペレーター配置について、「同一敷地または隣接する施設・事業所」も対象となります。
小規模多機能型居宅介護については、利用者として登録できる定員を現在の「25人以下」から「29人以下」に緩和します。
これに併せて登録定員が26人以上の事業所では、通いの定員も18人以下(現在は15人以下)に緩和されます。ただし、利用者への適切なサービスを確保するために、「十分な広さ」を確保しなければならず、厚労省は「概ね通いの利用者1人当たり3平方メートル以上」という規定を通知に書き込む考えです。
この見直し内容は、小規模多機能型に訪問看護を組み合わせた「複合型サービス」(名称を「介護小規模多機能型居宅介護」に変更予定)でも同様です。
また、認知症対応型通所介護(いわゆる「認デイ」)については、利用定員を「1ユニット3人以下」(現行は「1事業所3人以下」)に見直し、運営推進介護の設置を16年度から義務付けます。
短期入所生活介護(ショートステイ)では、緊急時の受け入れを促進するために次の2つの見直しが行われます。
(1)利用者の状態や家族などの事情によって、ケアマネが「緊急止むを得ない」と認めるなど一定の条件下で、専用の居室以外の静養室での受け入れを容認する
(2)基準該当短期入所生活介護について、一定の条件で静養室での実施を容認し、小規模多機能型居宅介護事業所への併設実施を可能とする
通所介護のうち、1か月当たりの平均利用延べ人数が300人以内の小規模な事業所は、16年度から「地域密着型通所介護(新類型)となる」「利用人数を拡大して通常規模型の通所介護に移行する」「小規模多機能型居宅介護のサテライト事業所になる」のいずれかの道を選ぶ必要があります。
そこで、15年度改定では、▽「地域密着型通所介護」の基準▽「小規模多機能型居宅介護のサテライト事業所」に移行するに当たっての17年度末までの経過措置-が設けられます。経過措置は、17年度末まで「本体施設の宿泊設備を利用できる」「将来的に宿泊設備を整備できる」などを条件に、宿泊設備を備えなくても小規模多機能型居宅介護のサテライト事業所となることを認めるものです。
また、いわゆる「お泊りデイ」を実施している事業所について、利用者保護の観点から、▽事業所の電話番号▽宿泊サービスの利用定員や提供時間▽宿泊サービスの人員配置状況▽個室かどうかなど宿泊室の状況▽消防設備の設置状況-などの届け出が15年度から義務付けられます。認知症対応型通所介護でも同様です。
訪問介護については、「サービス提供責任者」(「サ責」)の配置基準が、現在の「利用者40人に対して1人以上」から「利用者50人に対し1人以上」に緩和されます。ただし、「単なる配置基準緩和では業務過多になってしまう」との指摘を受け、次の2要件を満たす場合に限定されました。
●訪問介護事業所に置かなければならない「サ責」が3人以上
●サ責の業務に主として従事する者を1人以上配置
このほか、要支援者への訪問介護が、介護保険給付から市町村の総合事業へ移管されることを受け、運営基準が整理されました。