15年度介護報酬改定、新単位数2月6日諮問へ-介護給付費分科会
2015.1.10.(土)
社会保障審議会・介護給付費分科会が9日、2015年度介護報酬改定に向けたこれまでの審議報告をまとめました。介護報酬改定の内容は、「単位数」改定と「人員配置等に関する基準」改定に分けられます。このうち「単位数」については、15年度予算編成の中で決まる改定率を踏まえて具体的に設定されます。厚労省は2月6日に単位数の改定案を諮問する考えです。ここでは単位数の見直しの方向性を整理し、「人員配置等に関する基準」については、別にお伝えします。
【関連記事】
介護報酬の運営基準見直し案を了承-省令・通知を近く改正へ
【介護報酬改定2015総点検(1)】療養機能強化型の介護療養を新設
【介護報酬改定2015総点検(2)】定期巡回・随時対応サービス、より使いやすい報酬体系に
介護保険施設のうち介護療養型医療施設については、次の5つの要件を満たす施設を「療養機能強化型介護療養型医療施設」(仮称)として報酬を引き上げます。
(1)入院患者のうち、「重篤な身体疾患を有する者」と「身体合併症を有する認知症高齢者」が一定割合以上
(2)入院患者のうち、「一定の医療処置を受けている人」が一定割合以上
(3)入院患者のうち、「ターミナルケアを受けている患者」が一定割合以上
(4)生活機能を維持改善するリハビリテーションを行っている
(5)地域貢献活動を行っている
ただ、厚労省は「介護療養は17年3月末で廃止する」という方針は崩しておらず、新設する強化型は報酬上の類型である点に留意が必要です。
訪問看護については、医療ニーズの高い中重度者への対応を強化するために、「緊急時訪問看護加算」「特別管理加算」「ターミナルケア加算」のすべてを一定割合以上、算定している事業所向けの加算を新設します。これら3加算は、いずれも「医療ニーズの高い利用者へ質の高い訪問看護を提供する体制」を評価するものです。
また、▽病院・診療所による訪問看護の基本報酬引き上げ▽訪問看護ステーションの理学療法士らによる訪問と、訪問リハの基本報酬の整合性確保-も行われます。
訪問看護関連で厚労省は、理学療法士による訪問リハに「リハビリテーションマネジメント加算」を新設する方針も当初、示していましたが、今回は見送られました。充実した多職種カンファレンスの実施やプロセス確認票に沿ったリハ管理などを総合的に評価する狙いでしたが、「訪問看護の実務の中でこうしたマネジメントを行うことは難しい」という指摘があったためです。
介護老人保健施設については、12年度の改定に伴って導入された「在宅機能強化型」と「在宅復帰・在宅療養支援機能加算」の報酬が引き上げられます。
また、退所時期について入所時から積極的に相談している施設では在宅復帰率が高いことから、「入所前後訪問指導加算」の要件に次の項目が追加されます。
●本人・家族の意向を踏まえ、生活機能の具体的な改善目標を含めた施設・在宅の双方にわたる切れ目のない支援計画を策定する
●計画の策定にあたって医師、看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ケアマネジャーといった多職種によるカンファレンスを行う
特別養護老人ホームでは、「看取り介護加算」を引き上げるとともに、「入所者の日々の変化の記録を多職種が共有して連携し、看取り期の早い段階から入所者・家族らの意向を尊重して看取り介護を実施する」などの要件強化が行われます。
また、「日常生活継続支援加算」について厚労省は、「サービス提供体制加算と要件が重複することから、一元的に評価する(つまり廃止する)」とこれまでに提案していましたが、支援加算の存続を求める声が強く、存続させることとなりました。ただ、▽重度者▽認知症▽医療処置が必要な人-の積極的な受け入れを促すような要件に見直します。
一方で、特養の経営状況が比較的良好な点を考慮して基本報酬を引き下げるとともに、所得が一定以上(市町村民税課税世帯)の多床室入所者に室料負担を求めます。
定期巡回・随時対応サービスについては、サービスの利用を促進するために報酬の一部を区分支給限度基準額から外します。具体的には、利用者の生活全般に着目し、日ごろから主治医や看護師、ほかの介護事業者など多様な主体と適切に連携するための体制構築のコストを、「総合マネジメント体制強化加算」(仮称)として基本報酬から切り離し、加算の部分を区分支給限度基準額の対象外とするもので、小規模多機能型サービスや複合型サービスでも同様です。
一方、事業所と同じか隣接する敷地内のサービス付き高齢者向け住宅などに定期巡回・随時対応サービスを実施する場合には、移動コストが低いことに着目して報酬を減額する措置を取ります。
15年度改定では、「身体機能維持に偏っている」と指摘される生活期リハについて2点の大きな見直しが行われます。
(1)質の高いリハ実現のためのマネジメントの徹底
(2)リハ機能の特性を生かしたプログラムの充実
(1)は、訪問看護の項で触れた「リハビリテーションマネジメント加算」を再構築するもので、▽利用者の日常生活に着目した目標設定▽ リハカンファランスの実施など多職種協働の仕組みの導入▽プロセスマネジメントの導入▽理学療法士らによる利用者居宅の訪問評価をリハマネジメントのプロセスとして一体化-などを要件に、加算が引き上げられます。
(2)は、リハ報酬体系を見直し、▽退院(所)間もない利用者への「個別短期集中リハビリテーション」(仮称)▽認知症の特徴に合わせた「認知症短期集中リハビリテーション」(同)▽生活機能の向上に焦点を合わせた新たな「生活機能向上リハビリテーション」(同)-が新たに導入されます。
新たなリハの報酬は、▽「通所サービスの基本部分」と「リハの基本部分」▽(1)の「リハビリテーションマネジメント加算」▽(2)の各種加算-の3段構成になるイメージです。
14年度までの時限措置とされていた「介護職員処遇改善加算」は、「継続し、かつ、さらなる上乗せ加算を新設する」ことになりました。
「上乗せ加算」では、「職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備」「(スタッフの)資質向上のための計画を策定して研修の実施または研修の機会を確保」の2つ要件をいずれも満たすことなどが求められます。
なお、分科会では「処遇改善加算を維持すべき」という意見と「予定通り廃止すべき」との意見が対立したままで、処遇改善やスタッフの資質向上策を今後、幅広い視点で検討することが確認されています。