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100床未満の小規模病院、7対1と専門特化が経営安定の鍵だが、地域ニーズの勘案も―福祉医療機構

2016.11.14.(月)

 小規模な病院では、7対1届出病院のほうが他の入院料届出病院よりも経営状況が良好だが、7対1の施設基準が厳格化されていることを踏まえて、「地域の多様なニーズの充足」と「持続可能な経営」とを両立する方策を検討していく必要がある―。

 福祉医療機構(WAM)は、11日に公表したリサーチレポート「小規模病院の経営環境について」の中でこのように提言しています(関連記事はこちらこちらこちら)(WAMのサイトはこちら)。

7対1では、医業利益率・経常利益率が高く、赤字病院割合も少ない

 我が国では200床未満の病院が病院数全体の6割強(63.1%)を占めており、99床未満の小規模病院(以下、99床未満を小規模とする)が同じく4分の1強(25.6%)となっています。WAMの調査によれば小規模病院では、他に比べて赤字病院の割合が若干多く、経営環境が厳しくなっていると言えます。

 今般、WAMでは小規模病院に焦点を合わせて、どのような病床戦略を立てるべきか分析しました。

 2014年度において、小規模病院が届け出ている一般病床の入院基本料を見ると、10対1が最も多く44.5%。次いで7対1:15.8%、15対1:15.4%、13対1:8.5%となっています。障害者施設等を届け出ている病院も15.8%あります。2年前(2012年度)と比較して7対1の割合が4ポイント減少しており、施設基準の厳格化が影響していると考えられます。

 入院基本料別に収支の状況(2014年度)を見てみると、次のように「7対1で経営状況が良い」ことが明らかになっており、WAMでは「小規模病院においては 7 対 1 の算定が経営を安定させるひとつの選択肢である」と述べています。

【医業収益対医業利益率】7対1:4.0%(12年度から1.6ポイント悪化)、10対1:1.0%(同1.3ポイント悪化)、13対1:▲2.8%(同1.7ポイント悪化)、15対1:▲1.6%(同0.1ポイント改善)

【医業収益対経常利益率】7対1:4.2%(同2.1ポイント悪化)、10対1:1.3%(同1.6ポイント悪化)、13対1:▲4.2%(同1.5ポイント悪化)、15対1:▲0.5%(同0.3ポイント改善)

【赤字病院割合】7対1:20.5%(同6.8ポイント悪化)、10対1:38.2%(同12.0ポイント悪化)、13対1:57.1%(同23.8ポイント悪化)、15対1:44.7%(同0.2ポイント改善)

【病床1床当たりの年間医業収益】7対1:3110万9000円、10対1:1797万円、13対1:1382万5000円、15対1:1167万7000円

入院基本料別に小規模病院の経営状況を見てみると、2012→14年度で悪化はしているものの、7対1で経営状況が良好なことがわかる

入院基本料別に小規模病院の経営状況を見てみると、2012→14年度で悪化はしているものの、7対1で経営状況が良好なことがわかる

入院基本料別に小規模病院の医業利益率分布を見てみると、7対1で比較的経営状況が良好なことがわかる

入院基本料別に小規模病院の医業利益率分布を見てみると、7対1で比較的経営状況が良好なことがわかる

 

 WAMでは、さらに「小規模の7対1病院では、診療科目を、単価の高い手術が行える循環器科、整形外科、脳神経外科などに特化させることで、医業収益を上げているのではないか」とも推察しています。そこで、専門特化病院(外来患者が特定の診療科目に50%以上集中している病院)と、そうでない病院(非専門特化病院)とで、収支状況を比べると、次のように専門特化病院のほうが、経営が安定している状況が伺えました。

【医業収益対医業利益率】専門特化:5.0%、非専門特化:2.1%

【医業収益対経常利益率】専門特化:5.5%、非専門特化:1.8%

【赤字病院割合】専門特化:5.3%、非専門特化:68.8%

専門特化した小規模病院では、専門特化していないところに比べて、経営状況が良好なことがわかる

専門特化した小規模病院では、専門特化していないところに比べて、経営状況が良好なことがわかる

 

 このように、小規模病院においては経営安定化のために「7対1の取得」「専門特化」の2点が重要と考えられます。

 しかし、小規模病院には「地域に密着し、地域の多様なニーズに応える」という、いわば「かかりつけ医」的な役割も求められます。高齢化がますます進展する中では、この役割がさらに求められると考えられます。また、7対1の施設基準、とくに重症患者割合(重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合)がさらに厳しくなる可能性もあります(関連記事はこちらこちら)。WAMでは、こうした状況を勘案し、「地域の多様なニーズの充足」と「持続可能な経営」とを両立する方策を検討していく必要があると訴えています。

 
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