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0819ミニセミナーGemMed塾

病院の消費税問題、「非課税・診療報酬での補填」では過不足が生じるため、「軽減税率」による適切な対応が必要―四病協

2025.8.6.(水)

病院の消費税問題については、現在の「非課税・診療報酬での補填」ではどのようにしても過不足が生じる。「軽減税率」による抜本的な解決」を行うことを検討してほしい―。

地域医療構想の実現に向け「病院再編」を支援する税制上の整備を行ってほしい—。

日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会(四病協)の総合部会が7月30日に開かれ、こうした内容を盛り込んだ来年度(2026年度)の税制改正要望案を固めたことが、日本医療法人協会の伊藤伸一会長から報告されました。近く福岡資麿厚生労働大臣に宛てて提出する予定です。

7月30日の四病院団体協議会・総合部会後の記者会見に臨んだ日本医療法人協会の伊藤伸一会長

医療DXの推進に向け、税制上の優遇措置を設けて医療機関での整備を促進せよ

四病協の税制改正要望は、次の16項目です。
(1)社会保険診療報酬等の非課税に伴う控除対象外消費税問題の抜本的な解決
(2)医療機関に対する事業税の非課税措置及び軽減措置の存続
(3)認定医療法人制度の存続と認定期限の緩和等
(4)持分のある医療法人に係る相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の創設
(5)社団医療法人の出資評価の見直し
(6)中小企業関係設備投資減税の医療界への適用拡大
(7)病院用建物等の耐用年数の短縮
(8)医療機関における医療DXへの対応および省エネルギー対策への設備投資等に対する税制措置
(9)医療法人の法人税率軽減と特定医療法人の法人税非課税
(10)介護医療院への転換時の改修等に関する税制上の支援措置の創設
(11)介護医療院への転換時の改修等に関する税制上の支援措置の創設
(12)社会医療法人等における訪日外国人に対する自費診療要件の見直し
(13)賃上げ促進税制における税額控除上限の緩和要望
(14)社会医療法人に対する寄附金税制の整備および非課税範囲の拡大等
(15)医療機関同士での再編による資産の取得を行った場合における登録免許税、不動産取得税及び固定資産税の軽減措置
(16)医療従事者確保対策用資産および公益社団法人等に対する固定資産税等の減免措置



多岐にわたるため、ポイントを絞って眺めてみましょう。

まず(1)は、従前と同様に「診療報酬プラス改定では控除対象外消費税の補填の過不足が解消できないため、保険診療にも消費税を課税する」よう求めるものです。日本医師会は「診療報酬での対応の精緻化により控除対象外消費税問題は解消した」との立場をとっていますが、病院、とりわけ急性期の大規模病院では「物品購入に伴って生じる消費税負担が大きい」点を踏まえ「抜本的な対応を行う」よう求めています。

医療機関等が物品を購入した際にも、当然「消費税」を負担します。ただし、保険医療について「消費税は非課税」となっているため、医療機関等が納入業者から物品等を購入する際に支払った消費税は、患者や保険者に転嫁できず、中間消費者である医療機関等が最終負担をしています(いわゆる「控除対象外消費税」)。この負担を補填するために診療報酬での手当てが行われていますが、▼診療報酬の算定状況▼物品の購入状況—は、病院により全く異なるため、どうしても補填の過不足(ある病院では負担を上回る補填がなされ、ある病院では負担が十分に補填されない)などが生じます。

2019年10月の消費税対応改定では、この過不足をできるだけ小さくするために「精緻な対応」(補填)が図られていますが、物品購入量の多い病院では補填が十分になされないケースもままあり、とりわけ病院では補填状況に大きなバラつきが生じます。このため四病協では「病院においては軽減税率による課税取引に改めてほしい」と改めて要望しています(診療所は診療報酬対応を継続、関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。



また(2)でも、従前と同様に▼社会保険診療報酬に対する非課税(個人、医療法人共通)▼自由診療収入等に対する軽減税率(医療法人のみ)—の2つの税制特例措置を「恒久的に存続する」ことを求めています。



他方(3)では、認定医療法人(2014年度税制改正で創設)について▼相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置を2027年1月1日以降も延長する▼相続発生後に移行申請を行う際の申請期限を緩和する▼移行期限内に「持分なし医療法人」に移行できず認定取消となっても、再度認定を受けることができるようにする—よう求めています。

関連して、(4)として「『持分あり医療法人』に対し、中小企業の事業承継における相続税・贈与税の納税猶予・免除制度と同様の制度」(贈与税は株式等に対応する税額の全額、相続税は同じく80%の納税を猶予し、後継者が死亡時まで株式等を保有し続ければ最終的に納税が免除されるなど)を創設することを改めて要望しています。



ほか、(8)では、医療DX・省エネルギー対策のための設備投資等(建物附属設備、構築物、器具備品、ソフトウェア)について、「即時償却または税額控除を選択適用できる措置」、「一定期間の固定資産税(償却資産税)の非課税措置」の創設を求めています。

効率的かつ質の高い医療提供を実現するために「医療DXは不可欠」とされていますが、その一方で病院経営は非常に厳しいことを踏まえ、税制面での支援を求めるものと言えるでしょう。



また、(13)では、賃上げ促進税制における税額控除額が「法人税額・所得税額の20%が上限」とされているところ、「人件費率が高くかつ利益率の低い産業(医業もここに含まれる)においては控除税額が上限に達しやすく、税制を十分に活用できないおそれがある」とし、構造的な賃上げを実現するために「税額控除額の上限緩和」を求めています。

あわせて、賃上げ促進税制は「経営状況が赤字の医療機関」や「公的病院」には適用されないため、これら医療機関に対しては「診療報酬上の措置」を講じるよう求めています(関連記事はこちら)。



さらに(15)では、地域医療構想新地域医療構想の実現に向けて「病院再編」が重要な要素になる点に鑑み、▼必要な不動産を取得した場合の登録免許税の軽減措置を継続する▼新たに固定資産税の軽減措置を講じる—よう求めています。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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