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GemMed塾0319ミニセミナー

2024年度診療報酬改定後に医業赤字病院は69%、経常赤字病院は61.2%に増加、「物価・賃金の上昇」に対応できる病院診療報酬を—6病院団体

2025.3.10.(月)

2024年度診療報酬改定の前後で病院経営を比較してみると「医業利益率、経常利益率は悪化」しており、医業赤字病院は69.0%(改定前に比べて4.2ポイント増加)、経常赤字病院は61.2%(同10.4ポイント増加)となった—。

このままでは「ある日突然、地域から病院がなくなる」(つぶれてしまう)ため、「社会保障関係費の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という取り扱いを改め、病院の診療報酬について「物価・賃金の上昇に適切に対応できる仕組み」を設けることが必要である—。

日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会・日本慢性期医療協会・全国自治体病院協議会の6団体が3月10日に、2024年度診療報酬改定の「病院経営」状況調査結果を公表し、こうした状況報告・提言を行いました(日病のサイトはこちら(経営状況調査結果)こちら(経営状況を踏まえた提言など))。

病院収支は増収・減益、医業赤字病院は69.0%、経常赤字病院は61.2%に増加

日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会の3病院団体では、コロナ禍より定期的に、会員病院を対象にした「経営状況調査」を行っています(2022年度の調査結果に関する記事はこちらこちら、23年度の調査結果に関する記事はこちら、24年度調査の中間報告結果に関する記事はこちら、24年度調査の最終報告結果に関する記事はこちら)。

さらに今般、日本精神科病院協会・日本慢性期医療協会・全国自治体病院協議会の3団体を加えた6病院団体によって、2024年度診療報酬改定前後(改定前:2023年6-11月、改定後:2023年6-11月)で、病院経営がどういう状況かを調査。その結果が明らかにされました(1731施設が有効回答)(関連記事はこちら)。

まず医業収益・医業支出(費用)を見ると、下図表のとおり、2024年度改定の前後で「概ね増加」していることが分かります。ただし、いずれの月でも「医業支出>医業収益」となっており、「医業利益率」は2024年度改定の前から後にかけて「概ね悪化」している状況です(増収減益)。「経常利益率」についても、同様に「概ね悪化」していることが確認できます。

医業収益・医業支出(費用)の状況(6病院団体調査1 250310)

医業利益率・経常利益率の推移(6病院団体調査2 250310)



さらに、▼医業赤字病院は改定前の64.8%から改定後には69.0%に増加(悪化、4.2ポイント増加)▼経常赤字病院は改定前の50.8%から改定後には61.2%に増加(悪化、10.4ポイント増加)—しています。

赤字病院・黒字病院の状況(6病院団体調査3 250310)



赤字病院と黒字病院とを比較すると、医業支出(費用)の改定前後の伸び率に違いはありません(いずれも2.6%増)。しかし、両者には「病床利用率」に大きな違い(黒字病院の2024年度改定後病床利用率平均は85.5%、赤字病院では77.5%で、8.0ポイントの開き)があり、結果、医業収益の伸び率に差が出ている(黒字病院では2.3%増、赤字病院では1.7%増で、0.6ポイントの差)ことが分かります。

赤字病院・黒字病院比較1(6病院団体調査4 250310)



さらに、より詳しく赤字病院と黒字病院を比較すると、次のような点も明らかになっています。

▽黒字病院では外来診療収益が0.2%増加(100床当たり67万6000円のプラス)しているが、赤字病院では0.9%減少(同286万6000円のマイナス)している

▽黒字病院ではその他医業収益が0.1%増加(100床当たり3万8000円のプラス)しているが、赤字病院では2.7%減少(同98万8000円のマイナス)している

赤字病院・黒字病院比較2(6病院団体調査5 250310)



他方、病院を▼一般病院▼療養・ケアミクス病院▼精神病院—などに区分し、2024年度改定前後の経営状況を見ると、いずれにおいても「医業利益率・経常利益率の悪化」状況を確認できますが、下図表のように「一般病院でより厳しい経営状況に陥っている」ことが伺えます(「その他」病院はサンプル数が少ないため、本稿では除外)。一般病院は、他の病院区分よりも「医業支出(費用)」の増加が大きく、その背景には▼診療材料費の高騰(4.4%増)▼人件費の高騰(4.3%増)▼委託費の増加(4.3%増)―などがあります。

とりわけ「一般病院」で「医業利益率・経常利益率の悪化」が著しいことが伺える(6病院団体調査6 250310)



なお、病床規模別・開設主体別にみると、若干の差異はあるものの「いずれの規模の病院、いずれの開設主体である病院であっても、2024年度診療報酬改定後に増収減益となり、病院経営が厳しくなっている」ことが確認できます。

どの規模の病院でも「医業利益率・経常利益率の悪化」が伺える(6病院団体調査7 250310)

どの開設主体による病院でも「医業利益率・経常利益率の悪化」が伺える(6病院団体調査8 250310)

「社会保障関係費の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という取り扱いを改めよ

こうしたデータを背景に、日病・全日病・医法協・日精協・日慢協・全自病の6団体は、「病院がいま危機的状況にあり、地域医療は崩壊寸前である」「このままでは、ある日突然、病院がなくなる」とし、次の2点を国民・政府に強く訴えています

(1)病院経営は危機的状況であり、病院の診療報酬について「物価・賃金の上昇に適切に対応できる仕組み」が必要である

(2)そのために、社会保障予算に関しての財政フレームの見直しを行い、「社会保障関係費の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という取り扱いを改めることが必要である



なお、自由民主党・公明党・日本維新の会では「現役世代の保険料負担軽減→国民医療費の年間、最低4兆円の削減」方針を示しています(日本維新の会のサイトはこちら)。この削減は、社会保険料負担は低くなるものの、病院経営に極めて大きなダメージを与え「病院がなくなる→医療を受けられなくなる→結果、国民が不利益を被る」事態につながる可能性もあります。今後の動きに注目が集まります。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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