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病院経営は危機に瀕しており、「緊急的な財政支援」「物価・賃金上昇に対応できる診療報酬」などを実施せよ—5病院団体

2025.1.23.(木)

病院経営は危機に瀕しており、病院に対する「緊急的な財政支援」「物価・賃金の上昇に適切に対応できる診療報酬」対応を行うとともに、インフレ下では「社会保障関係費の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という取り扱いを改めよ—。

日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会・日本慢性期医療協会の5病院団体が1月22日、福岡資麿厚生労働大臣に宛ててこうした緊急要望を行いました(日病サイトはこちら)。

物価等高騰で病院の収支は大幅に悪化している

Gem Medで繰り返し報じているとおり「病院経営の厳しさ」が増しています。日病・全日本病院協会・日本医療法人協会による病院経営定期調査では「医業収益は増加しているものの、費用増(材料費など)がそれを上回り、さらに補助金減なども手伝って、赤字病院が大きく増加し、赤字幅も大きくなっている」状況が明らかにされました。

また全国自治体病院協議会の経営状況調査では、2023年度には「10.3%の赤字」であったところ、2024年度には「14.5%の赤字」に悪化し、危機的な状況にあることが示されています。

このように病院経営が危機的状況にある中、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会・日本慢性期医療協会の5病院団体が1月22日、福岡資麿厚生労働大臣に宛てて次の3点の緊急要望を行いました。

(1)直近の病院の経営状況を考慮し、地域医療を守るため、緊急的な財政支援措置を講ずること
(2)病院の診療報酬について、物価・賃金の上昇に適切に対応できる仕組みを導入すること(関連記事はこちらこちら
(3)社会保障予算に関して財政フレームの見直しを行い、「社会保障関係費の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑制する」という取扱いを改めること



物価高騰や賃金の急激な上昇が続いています。一般企業では、こうしたコスト増を商品やサービスの価格に上乗せ(転嫁)することが一定程度可能です。

しかし、保険医療制度では「公定価格」(診療報酬)が決まっており、病院サイドが価格にコスト増を上乗せすることはできません。このため「コスト増に対応した診療報酬の引き上げ」がなければ、医療機関、とりわけスタッフを多く抱え、物品購入量の多い「病院」の経営は厳しくなっていきます。

こうした点について5病院団体は、「物価が3%弱上昇し、職員の処遇改善が求められた環境にもかかわらず、診療報酬本体の改定率は0.88%と非常に低く設定された」、「過去のデフレ時代から継続されている『社会保障関係費の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑制する』という財政制約が、物価や人件費が上昇するインフレ環境下にもかかわらず踏襲された」ことから、「病院の経営状況はさらに悪化し経営破綻の危機に直面している」と強調。

あわせて5病院団体では、次のようなデータも示し「病院経営の窮状」を強く訴えています(関連記事はこちら)。

【コロナ禍前の2018年→コロナ禍後の2023年の、一般病院の医業収入・医業費用と経費の変化】
▽医業収入は約2.7億円・9.9%の増加であるのに対し、医業費用は約3.9億円・13.6%増加した結果、医業収支は「マイナス1億円」から「マイナス2.2億円」に悪化した

▽医業費用の約5割を占める給与費は1.2億円・8.2%増加したが、その他経費は2.8億・18.9%と給与費の増加を大きく上回って増加している

2018→2023年度における病院経営状況の変化1



▽100床当たり医薬品費は1億3300万円・27.6%、診療材料費も4400万円・14.4%と大きく増加している(ただし、ここには医療保険で償還されるものも含まれている)

▽100床当たり委託費は4200万円・22.2%、経費(水道光熱費等)は1900万円・13.6%、控除対象外消費税負担額は1500万円・48.9%の増加となっており、これら「医療保険で償還されない経費」の増加が、医業収支悪化の原因となっている

2018→2023年度における病院経営状況の変化2



【2024年度診療報酬改定前(2023年6月)と改定後(2024年6月)の比較】
▽医業利益率、経常利益率ともに悪化

2024年診療報酬改定での+0.88%の本体改定により「医療従事者の処遇改善」などが図られたが、経費増加などにより病院の経営状況は前年よりさらに悪化しており、危機的な状況となっている

2024年度診療報酬改定前後の状況



なお、今回の(2)要望にもある「物価・賃金の上昇に適切に対応できる仕組み」は、他の医療団体・病院団体でも提唱しています(関連記事はこちらこちら)。上述のように診療報酬は公的価格であるため、急激な物価等の高騰が生じた場合には迅速な対応は困難です(改定には一定の時間がかかる)。このため、「物価の急騰等を迅速に診療報酬等に反映する」仕組みの創設要望には一定の合理性があると考えられます。

もっとも「診療報酬の引き上げ」には「財源の確保」が不可欠であり、この点も含めて、今後、どのように議論が進むのか注目する必要があります。



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