医療介護総合確保基金による「業務効率化補助」を2027年に創設、業務効率化に積極的な病院を国が認定―社保審・医療部会
2026.3.10.(火)
少子高齢化が進展し、医療人材確保が困難さを増す中で、「医療DX等による業務効率化・職場環境改善」を更に進める必要がある。このため、医療法等を改正し「地域医療介護総合確保基金に業務効率化補助の区分を設けて、医療現場の取り組みを支援する」「業務効率化・職場環境改善に積極的・計画的に取り組む病院を国が認定し、病院が『認定病院である』旨の公表を可能とする」—などの仕組みを設ける―。
3月9日に開催された社会保障審議会・医療部会で、こうした状況報告が行われました。委員からは「業務効率化・勤務環境改善に積極的・計画的に取り組む病院を認定する」新たな仕組みについて、「病院の差別化につながらないように留意すべき」と求める声が多数でています。近く、医療法等の改正案が国会に上程される見込みです。

3月9日に開催された「第125回 社会保障審議会 医療部会」
2025年度補正予算を引き継ぐ形で、医療介護総合確保基金による業務効率化支援を実施
Gem Medで報じている通り、医療部会では「少子化の進展→医療従事者の確保難のさらなる深刻化」に対応するために、▼医療DXをより強力に推進していってはどうか▼医療人材の確保をより強力に進めてはどうか―といった整理を行いました。
高齢化の進展等に伴って医療ニーズが増大・複雑化する中で、「少子化等で確保が難しくなり、少なくなる医療従事者で、良質かつ効率的な医療提供を行う」ことを目指すもので、例えば、▼医療DXを国が強力に支援し、その効果等のエビデンスを蓄積していく(「労働時間の変化」「医療の質や安全の確保」「経営状況に与える影響」などに関する必要なデータを医療機関から収集し、分析する)▼都道府県の医療勤務環境改善支援センターの体制拡充・機能強化を図り、これまでの「労務管理等の支援」業務に加えて、「業務効率化の助言・指導等も行う」ことも業務として求めていく▼「業務効率化・職場環境改善に計画的に取り組む病院」を公的に【認定】し、対外的にも発信できる仕組みを設ける▼医療機関の管理者等に「業務効率化にも取り組む」ことを求める―などの内容が盛り込まれています。

医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する方向性1(社保審・医療部会1 251208)

医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する方向性2(社保審・医療部会2 251208)
3月9日の医療部会には、厚生労働省医政局総務課の西川宜宏医療政策企画官(大臣官房情報化担当参事官室、医政局看護課併任)が、こうした医療部会の意見を踏まえて、次のような医療法や健康保険法等の改正案を政府で準備中であることを報告しました。
▽2040年に向けて、医療従事者を安定的に確保し、質の高い効率的な医療提供体制を構築するために、医療機関の業務効率化・勤務環境改善を支援するために以下の制度的対応を行う
(1)今後継続的な支援を行えるよう「地域医療介護総合確保基金」に、業務効率化・勤務環境改善の取り組みを支援する新たな事業を設ける(現在のI-1:地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設・設備整備事業、I-2:地域医療構想の達成に向けた病床機能・病床数変更事業、II:居宅等における医療提供事業、III:介護施設等の設備事業(地域密着型サービス等)、IV:医療従事者の確保事業、V:介護従事者の確保事業、VI:勤務医の労働時間短縮に向けた体制整備事業に加えて、新区分「業務効率化・勤務環境改善事業」を設ける)
(2)「業務効率化・勤務環境改善に積極的・計画的に取り組む病院」を厚生労働大臣が認定できる仕組みを設け、認定を受けた病院はその旨の表示を行うことを可能とする
(3)都道府県の医療勤務環境改善支援センターの体制拡充・機能強化を図り、医療機関の労務管理等の支援に加え、「業務効率化に係る助言・指導」等も行うよう努める旨を明確化する
(4)医療法上、「病院・診療所の管理者は、勤務環境の改善に加え業務効率化にも取り組むよう努める」旨を明確化し、健康保険法上の保険医療機関の責務として「業務効率化・勤務環境改善に取り組むよう努める」旨を明確化する

医療機関における業務効率化・勤務環境改善を支援する仕組みを医療法等に創設(社保審・医療部会3 250309)
このうち(1)は、医療DX等に代表される「業務効率化・勤務環境改善」に向けた取り組みを補助するものです(基金を創設しており、「複数年度にわたる取り組み」に対する支援が可能となる)。
2025年度の補正予算では「DX化に取り組む多くの医療機関を支援するために200億円」(1病院あたり1億円を上限として、ICT機器導入による業務の効率化(スマートフォンによるカルテ閲覧・情報共有、インカム、IWB(デジタル化されたホワイトボード)の導入などのDX化による情報伝達の効率化)、病院への医療勤務環境改善センターによるサポート体制強化などを支援する)が計上されています。現在、各都道府県で医療機関の意向調査等が行われており、実際の補助は来年度(2026年度)から始まる見込みです。

2025年度補正予算案より7
一方、上記の地域医療介護総合確保基金への新たな「業務効率化・勤務環境改善」区分の創設は2027年1月施行が想定されており、「当初は2025年度補正予算による支援・補助と、地域医療介護総合確保基金の新区分による支援・補助が並走すると考えられるが、▼まず補正予算による支援・補助を行う▼それを引き継ぐ形で地域医療介護総合確保基金の新区分による支援・補助を行っていく(補正予算並みの支援・補助を行いたい)—」旨の考えを西川医療政策企画官は説明しています。
また(2)の「業務効率化・勤務環境改善に積極的・計画的に取り組む病院」を認定する仕組みの詳細は、今後詰めていくことになりますが、▼(2)で認定された病院は、(1)の地域医療介護総合確保基金の新区分による支援・補助の要件を満たすことになると考える(ただし「認定されない病院=補助を受けられない」という単純な構図にはならない点に留意)▼病院の差別化を目的とするものではなく、病院全体の業務効率化・勤務環境改善の取り組みを「底上げ」することを目指す仕組みである―旨を西川医療政策企画官は明らかにしています。
すでに医療部会で議論を重ねたうえで固められた内容を法律に落とし込んでいくものですが、委員からは、改めて▼新たな仕組みで現場の事務負担増や勤務環境悪化が生じないように留意してほしい。新たな「病院の認定」制度により、認定されない病院の経営悪化などが生じないように慎重な仕組みを設けてほしい(角田徹委員:日本医師会副会長)▼医療DXは業務効率化・勤務環境改善に向けたツールの1つに過ぎない。DX化に取り組めない医療機関の支援も十分に検討してほしい。また診療報酬で「業務効率化・勤務環境改善」に関する要件等を設けないように留意すべき(長島公之委員:日本医師会常任理事)▼医療DXに関して「効果をしっかり検証し、効果的な取り組み事例」を横展開していくことが重要である(井上隆委員:日本経済団体連合会専務理事、勝又浜子委員:日本看護協会副会長)▼医療機関のサイバーセキュリティ対策支援も十分に行ってほしい(望月泉委員:全国自治体病院協議会会長)▼限られた医療人材によって「質の高い医療」を提供するためには業務効率化を否応なしに進めなければいけないという認識を共有すべき。また「病院の認定」に関しては基準や手続きを明確化し、透明性を確保することが何よりも重要である(神野正博委員:全日本病院協会会長)▼「病院の認定」に関して、認定される病院が半数程度にとどまれば「差別化」につながってしまう点に留意すべき(岡俊明委員:日本病院会副会長)▼業務効率化のためには、何よりも「業務の標準化」が不可欠である。関連して診療報酬についても、AI対応を見据えて「算定要件・施設基準の簡素化」などを大胆に進める必要がある(松田晋哉委員:福岡国際医療福祉大学看護学部教授)▼地方では人材確保難が深刻である。機動的に支援・補助を行わなければ、地域医療提供体制が崩壊してしまう点に留意すべき(山本修一部会長代理:地域医療機能推進機構理事長)—などの注文が出ています。
今後の法案作成、さらに改正法成立後の対応において、こうした意見・注文も勘案されます。今後の提出法案の内容に注目が集まります。
また、3月9日の医療部会では「国立病院機構」と「地域医療機能推進機構」の会計基準のうち「固定資産の減損に係る基準」について、現在の「企業会計基準」(収益力の低下で資産価値切り下げ(減損)を行うかどうかを判断する)から、「独立行政法人会計基準」(収益力に関わらず事業目的に沿って使用するか否かで、資産価値切り下げ(減損)を行うかどうかを判断する)に2025事業年度から切り替える(2025年4月1日まで訴求適用する)ことが報告されています。コロナ禍を経て「感染症病床の確保等の政策医療実施」がより強く求められている点を踏まえた対応と説明されています。

国立病院機構等の会計基準見直し1(社保審・医療部会3 250309)

国立病院機構等の会計基準見直し2(社保審・医療部会3 250309)
【関連記事】
「業務効率化・職場環境改善に積極的な病院」を国が認定、医療人材確保等で非常に有利となる支援充実も検討―社保審・医療部会
医療人材確保が困難さを増す中「多くの医療機関を対象にDX化による業務効率化を支援する」枠組みを整備―社保審・医療部会(2)
病院経営は2023→24年度にかけてさらに悪化、医療DXに伴って病院の人員配置基準緩和など進めるべきか—社保審・医療部会(2)
医療分野を「基幹インフラ制度」に追加へ、特定機器による「言わばサイバー攻撃の時限爆弾」導入を阻止―社保審・医療部会
病院経営の危機踏まえ、1床当たり「賃金分8万4000円、物価分11万1000円」の緊急補助、救急病院では加算も―2025年度補正予算案




