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GemMed塾0319ミニセミナー

医療・介護の施設整備、人材確保など支援する医療介護総合確保基金、執行率は医療分野76.4%、介護分野77.3%―医療介護総合確保促進会議

2025.3.5.(水)

地域医療介護総合確保基金で、医療・介護の施設整備、人材確保などを支援しているが、医療分野の執行率は76.4%、介護分野の執行率は77.3%となっている。ただし、都道府県別・事業別に執行率などは大きく異なり、こうした点をどう考えるべきか—。

3月3日に開催された「医療介護総合確保促進会議」(以下、促進会議)で、こうした議論が行われました。

3月3日に開催された「第21回 医療介護総合確保促進会議」

地域医療介護総合確保基金、医療分野の執行率は全体で76.4%

2025度年には、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊の世代が、すべて75歳以上の後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが飛躍的に増加していくと考えられます。こうした状況に対応できる医療・介護提供体制を構築することが求められ(例えば医療機能の分化・連携の強化、地域包括ケアシステムの構築、医療・介護人材の確保など)、それを財政的に支援するために2014年度から各都道府県に「地域医療介護総合確保基金」(以下、総合確保基金)が設置されています。

国から都道府県に資金を提供し、各都道府県で基金を創設。基金を活用して次の7事業を活性化させることが各都道府県に求められています。
(1)地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設・設備整備(I-1)
(2)地域医療構想の達成に向けた病床機能・病床数変更事業(機能転換、ダウンサイジング)(I-2)
(3)居宅等における医療提供
(4)介護施設等の整備(地域密着型サービス等)
(5)医療従事者の確保
(6)介護従事者の確保
(7)勤務医の労働時間短縮に向けた体制の確保

地域医療介護総合確保基金の概要(医療介護総合確保推進会議1 250303)



3月3日の促進会議には、基金の執行状況・交付状況などが報告されました。

まず医療分野(上記の(1)(2)(3)(5)(7)事業)については、2014-2022年度の9年間で、全体で7739億2000万円(うち国費は5195億4000万円)が交付され、うち5909億2000万円(同3968億7000万円)が執行(実際に活用)されています。執行率は全体(国負担+都道府県負担)で76.4%ですが、都道府県・事業によってバラつきがあります。例えば岩手県や栃木県、高知県、岐阜県など執行率が90%を超えている自治体がある一方で、青森県(56.4%)や和歌山県(57.4%)、愛知県(58.4%)、愛媛県(58.9%)のように執行率の低い自治体もあります。

2014-22年度医療分の状況(医療介護総合確保推進会議2 250303)



基金を活用した上記事業(医療機関の施設整備など)を行う際には、同時に都道府県の負担も発生する(国が3分の2、都道府県が3分の1)ため、都道府県の財政状況によって計画通りに進まない部分があると考えられます。

また、事業別のシェアを見ると、例えば2023年度交付額ベースでは、国全体で▼(1)の地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設・設備整備:23.4%▼(2)の地域域医療構想の達成に向けた病床機能・病床数変更事業(機能転換、ダウンサイジング):11.2%▼(3)の居宅等における医療提供:5.8%▼(5)の医療従事者の確保:56.1%▼(7)の勤務医の労働時間短縮に向けた体制の確保:3.5―となっています。ただし、医療提供体制の状況・課題は地域で異なるため、シェアは下図表のように都府県で区々になります。

2023年度医療分の状況(医療介護総合確保推進会議3 250303)



こうした状況について構成員からは「執行等が芳しくない自治体に対して、国が支援を行うべきではないか」との声が多数だされました。関連して、▼基金からの補助がどれだけの効果につながっているのかの検証が必要である(井上隆構成員:日本経済団体連合会専務理事)▼2040年にかけて少子高齢化は加速し、地域の実情にマッチしたサービス提供体制の構築が急がれる。基金財源の確保、地域の実情に応じた弾力的な補助金交付を進めてほしい。その際、執行のネックがどこにあるのかの分析も重要である」(大西秀人構成員、香川県高松市長)▼基金の活用がどこまで認められるのかを十分かつ具体的に周知するとともに、仮に執行の支障となっているローカルルールがあれば是正すべき(佐保昌一構成員:日本労働組合総連合会総合政策推進局長)▼物価高騰、人件費高騰を踏まえ、例えば病院薬剤師確保策に基金を活用できることなどをPRすべき(加納繁照構成員:日本医療法人協会会長)—などの具体的な意見も出ています。

もっとも基金の活用は、現場のニーズを踏まえて都道府県が考えるべき事項です。国は、「基金に余剰があるので使いなさい」と都道府県のお尻を叩くというよりも、「好事例の周知、支障の排除」により都道府県が活用しやすい環境の整備を行うことになるでしょう。

なお、「基金による補助」と「2024年度補正予算での医療施設等経営強化緊急支援事業」との関係について、厚生労働省医政局地域医療計画課の中田勝己課長は「併給調整が行われる」(例えば、後者で本来であれば1億円が交付されるところ、前者で5000万円の補助をうけていれば、後者が5000万円などに減額調整される)旨を再確認しています(関連記事はこちら)。



ところで、新たな地域医療構想では医療の質・病院経営を維持するために「急性期拠点機能を持つ病院の集約化」方針を明確にしています(関連記事はこちら)。

この点、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンと米国メイヨークリニックとの共同研究では「症例数(病院の規模と大きく関係する)と医療の質とは相関する」ことが分かっており、上記方針の妥当性を裏付けるものと言えるでしょう。

なお、国民皆保険体制を敷いている我が国では「医療へのアクセス」も極めて重要な視点の1つと言え、こうした点にも十分配慮した検討(どの病院を地域の急性期拠点に据えるかなど)が進むことに期待が集まります。

人工膝関節置換術における症例数と術後合併症の関係

介護分野の医療介護総合確保基金、執行率は全体で77.3%

また、介護野分野(上記(4)(6)事業)については、2015(医療より1年遅れのスタート)-2022年度の8年間で、全体で7551億5000万円(うち国費は5034億3000万円)が交付され、うち5838億円(同3892億円)が執行(実際に活用)されています。執行率は全体(国負担+都道府県負担)で77.3%ですが、やはり都道府県によってバラつきがあります。

2015-22年度介護分の状況(医療介護総合確保推進会議4 250303)



(4)施設整備事業と(6)人材確保事業との比率(全体では77.5:22.5)を見ても、数表のように都道府県によって大きく異なっています。

2023年度介護分の状況(医療介護総合確保推進会議5 250303)



この点、構成員からは▼地域密着型サービスの整備に基金を重点的に活用すべき(山際淳構成員:民間介護事業推進委員会代表委員)▼補助単価の引き上げ、使途制限の緩和を進めるべき(平田直之構成員:全国社会福祉法人経営者協議会副会長)▼介護人材確保に向けて「介護助手の活用」と「テクノロジー活用」とをセットで進める必要がある。テクノロジー活用については基金による補助率を10分の10(つまり全額補助し、事業者側等に負担を求めない)とすべき(東憲太郎構成員:全国老人保健施設協会会長、関連記事はこちら)—などの意見が出ています。

厚労省では、「『2040年に向けたサービス提供体制等のあり方』検討会」も進めており、ここでの検討も踏まえた基金の活用に期待が集まります(関連記事はこちら)。

なお、基金による介護施設整備((4)事業)は当初は「新規の施設整備」を念頭においていましたが、現在、地域によっては介護施設での空床が目立つようになってきています。この点について厚労省老健局高齢者支援課の峰村浩司課長は「施設の統廃合やダウンサイジングなどにも活用できる旨を周知していく」考えを示しています。

総合確保方針では「地域医療構想」との整合性も確保することが求められる

ところで、上述のとおり2025年度には、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達します。その後、2040年頃にかけては、高齢者人口そのものは大きく増えないものの(高止まりしたまま)、▼85歳以上高齢者の比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、医療・介護の複合ニーズを持つ高齢者、認知症高齢者などの比率が高まっていく)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療・介護提供体制」の構築がますます重要になってきます。

また、こうした人口構造の変化は地域によって大きく異なります。中山間地域などでは「高齢者も、若者も減少していく」、大都市では「高齢者も、若者もますます増加していく」、さらに一般市では「高齢者が今後増加するが、そう遠くない将来に減少していく」など区々です。

こうした状況を見据え、今国会には「医療法改正案」が提出され(2月14日に国会提出)、例えば地域医療構想の見直し・医師偏在対策・医療DXの推進など、医療提供体制を2040年頃に向けて大きく改革していくことになります(関連記事はこちら)。

促進会議では、主に医療介護総合確保推進法(地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律)に関連する事項(例えば、医療計画・介護保険事業(支援)計画の上位概念となる「総合確保方針」策定、改正など)を議論しますが、今般の「医療法改正案」にも医療介護総合確保推進法改正に関連する内容が盛り込まれています。

▽地域医療構想の見直し(2027年4月1日施行)に伴い、医療介護総合確保推進法において「同法の規定に基づく都道府県計画は、医療法の規定に基づく医療計画、介護保険法の規定に基づく都道府県介護保険事業支援計画に加え、『新たな地域医療構想』との整合性の確保も図らなければならない」こととする

▽医師手当事業の創設(改正医療法公布後3年以内)の基本的事項を、総合確保方針に盛り込むこととする

▽医療DXの推進に向けた「医療情報化推進方針」を厚生労働大臣が策定する(改正医療法交付後1年6か月以内)こととなるが、総合確保方針には医療DX関連事項も含むこととなり、総合確保方針は医療情報化推進方針の内容も踏まえて検討していくこととする

医療法改正案の概要



この点について、伊藤悦郎参考人(健康保険組合連合会常務理事、同専務理事の河本滋史構成員の代理出席)は「新たな地域医療構想は、2026年度に都道府県で作成する。それに支障が出ないよう、上位概念となる『総合確保方針』見直し内容は早めに示す必要があろう。また新たな地域医療構想がスタートする2027年度までに、現行地域医療構想の実現に向けた地域医療介護総合確保基金全体の効果検証を行うべきではないか」と進言しています。重要な指摘ですが、「今国会での医療法改正案成立を見守る」ことがまず重要でしょう。

【更新履歴】見出し・記事中に「失効率」とありましたが、「執行率」の誤りです。大変失礼いたしました。お詫びして訂正いたします。記事は訂正済です。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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