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新地域医療構想で「急性期拠点機能の集約化」方向で進めるべきだが、「待てない領域」等にも配慮した丁寧な議論を—社保審・医療部会

2024.11.18.(月)

2040年頃を目途とする「新たな地域医療構想」では、「急性期拠点機能の集約化、重点化、絞り込み」方向が示され、この方向で進めるべき。ただし、「待てない急性期医療分野」などもあり、丁寧に議論していくことが重要である—。

「急性期拠点機能の集約化、重点化、絞り込み」を進めるためには、地域住民の「集住化」も重要ポイントとなる。このため、地域医療構想区域レベルの協議に加え、「都道府県レベルの協議」の場を設け、そこで医療政策部局・住宅部局・交通部局などが連携協議することにも期待したい—。

11月15日に開催された社会保障審議会・医療部会で、こういった議論が行われました。今後の「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)にも伝えられ、「年内(2024年内)の意見とりまとめ」に向けてさらに議論が進められます。

11月15日に開催された「第112回 社会保障審議会 医療部会」

新地域医療構想を進める「構想区域」設定も慎重に検討せよ

2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」策定論議が、新検討会で精力的に進められており、これまでに次のような方向が固められてきています。

▽入院医療だけでなく、外来医療、在宅医療、医療・介護連携、医療機関機能、医師偏在対策、医療人材確保など幅広い医療提供体制の将来像を描く(関連記事はこちら

▽地域医療構想は「中長期的な医療提供体制の将来ビジョン」、医療計画は「3年・6年間の短期的施策」と役割分担を明確化する(関連記事はこちら

▽「病床・病棟の機能」だけでなく、「医療機関の機能」報告を求める(関連記事はこちらこちら

▽「回復期機能」について、post acute機能だけでなくsub acute機能も含むことを明確化する(関連記事はこちら



また「医療機関機能」に関しては、次のように分類する方向も議論されています(関連記事はこちらこちら)。

【地域医療構想区域ごとに整備する医療機関の機能】(このうち(1)から(3)の機能を持つ医療機関を、構想区域内に1か所以上整備する)
(1)高齢者救急等機能
→高齢者等の救急搬送を受け入れるとともに、必要に応じて専門病院や施設等と協力・連携し、入院早期からのリハビリ・退院調整等を行い、早期の退院につなげ、退院後のリハビリ等の提供を確保する(地域の実情に応じた幅をもった報告のあり方を設定)

(2)在宅医療連携機能
→地域での在宅医療の実施、他医療機関や介護施設、訪問看護、訪問介護等と連携した24時間の対応や入院対応を行う(地域の実情に応じた幅をもった報告のあり方を設定)

(3)急性期拠点機能
→手術や救急医療等の医療資源を多く要する症例を集約化した医療提供を行う(地域シェア等の地域の実情も踏まえた一定の水準を満たす役割を設定、アクセスや構想区域の規模も踏まえ、構想区域ごとにどの程度の病院数を確保するかを「設定」

(4)専門等機能
→上記の機能にあてはまらないが、集中的なリハビリテーションや一部の診療科に特化し地域ニーズに応じた 診療を行う

【広域な観点の医療機関機能】
▽医育および広域診療機能

→大学病院本院が担う、▼広域な観点で担う常勤医師や代診医の派遣▼医師の卒前・卒後教育をはじめとした医療従事者の育成▼広域な観点が求められる診療(移植、3次救急等)—を総合的に担い、また、これら機能が地域全体で確保されるよう都道府県と必要な連携を行う

新地域医療構想で報告する「医療機関機能」(病院機能)の考え方(新地域医療構想検討会(1)1 241108)



(1)から(3)のそれぞれについて一定の基準を設け、各病院が「自院は基準をクリアしているか、(1)から(3)のどの機能に合致するか」を考えて、毎年度、都道府県に報告するイメージです(該当しない場合には(4)として報告するイメージ)。その際、例えば「自院は(1)と(3)の機能を双方持つ」と考える場合には、複数機能を持っていると報告することになります。



11月15日の医療部会では、こうした状況を確認するとともに、今後の新検討会論議に資するよう委員から提案が行われています。

まず、大きくの委員が注目したのが「医療機関機能の名称」や「高齢救急等機能と急性期拠点機能の区分け」などについてです。例えば、▼急性期機能集約の方向は正しいと考えるが、集約化が馴染まない部分もあり、丁寧に検討すべき(泉並木委員:日本病院会副会長)▼高齢者救急等機能と聞くと「老人病院か」と誤解する人も出てこよう。名称は慎重に考えるべき(望月泉委員:全国自治体病院協議会会長)▼「待てる急性期医療」(がんなど)と「待てない急性期医療」(脳卒中や腹膜炎)とがあり、集約化は丁寧に検討していく必要がある。名称も「誤解を招かない」ように設定すべき(神野正博委員:全日本病院協会副会長)▼急性期拠点機能については「構想区域を超えて、県単位で機能を発揮する」ことも考えられる(角田徹委員:日本医師会副会長)▼集約化の方向を理解できるが、たとえば高齢者と小児とでは疾病構造も異なり、都市と地方でも状況は異なる。丁寧に議論してほしい(野村さちい委員:つながるひろがる子どもの救急代表)▼待てる急性期医療」(がんなど)と「待てない急性期医療」(脳卒中や腹膜炎)とがある点に留意すべき。また急性期機能の集約化に関しては、「新病院や大規模改修」には時間もコストもかかるため、既存の医療資源活用を重視すべき。また周産期医療は一般急性期とは分けて考えるべき(木戸道子委員:日本赤十字社医療センター第一産婦人科部長)▼急性期医療では「集約化が望ましい領域」と「分散、均てん化が望ましい領域」とがあり、丁寧に考えていくべき(加納繁照委員:日本医療法人協会会長)▼急性期拠点機能を集約化するためには、周辺の「中小病院の役割」が重要であり、両者をセットで考えるべき(松原由美委員:早稲田大学人間科学学術院教授)—などの考えが示されました。

また、多くの委員が「地域医療構想調整区域」の設定にも注目しています。そこでは、▼「大きな構想区域」と「小規模な構想区域」とは分けて検討したほうが、課題が見えやすくなるなどのメリットがある(泉並委員)▼大都市では「昼間は人口が多いが、夜間は人口が少ない」状況であり、こうした点も踏まえた構想区域を考えるべき(黒瀨巌委員:日本医師会常任理事)▼構想区域を考える際には「人口密度」なども考慮すべきで、そこでは「街づくり」とセットで考える必要がある(楠岡英雄委員:国立病院機構名誉理事長)—といった注文が付きました。

さらに在宅医療については、▼多様化が進み、例えば「緩和医療を行う在宅医療」、「特定の疾患を対象とする在宅医療」、「重症心身障害児に特化した在宅医療」など専門的なものが出てきており、これらは比較的広域のエリアを対象にしている。そうした点も踏まえた議論を進めるべき(楠岡英雄委員:国立病院機構名誉理事長)▼施設サイドが高額な報酬を支払って難病患者を受け入れ、重症化しても入院させず在宅医療で対応するなどの、「難病在宅医療ビジネス」も発生しており、注視していくべき(加納委員)▼移動時間の短縮化が重要であり、在宅医療分野でこそ「集約化、寡占化」を進めるべきではないか(松原委員)—といった考えが示されています。

なお、急性期拠点の集約化を進める際には「アクセス」が課題になることも考えられ、その場合には地域住民の「集住化」が重要ポイントの1つになってきます。散在するすべての住民のために「地方と同じインフラを整備する」ことは、きわめて高コストになってしまうためです。この点について厚生労働省大臣官房の高宮裕介参事官(救急・周産期・災害医療等、医療提供体制改革担当)は「新地域医療構想では『構想区域レベルの協議』だけでなく、『都道府県レベルの協議』も行ってもらうことを議論している。後者の『都道府県レベルの協議』においては、医療関連部局が住宅関連部局や交通関連部局とも議論してもらうことを期待している」との考え方を示しています。

このほか、▼地方の医療・介護人材不足は危機的である。また公立病院経営も物価高騰・人件費高騰で厳しく、財政的措置を検討してほしい(村椿晃委員:全国市長会、富山県魚津市長)▼「構想はできたが、医療機関がなかった」では困る。医療機関の存続・経営維持も十分に考えるべき(角田委員)—などの意見も出されています。



こうした意見は新検討会にも伝えられ、「年末の意見とりまとめ」に向けた議論がさらに進められます。





なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。

GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。

ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。

●GHCのサービス詳細はこちら

従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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