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GemMed塾 看護モニタリング

2025年度に全国の病床数総量は119万床で「必要量と一致」するが、地域ごとの過剰・過少がある―地域医療構想・医師確保計画WG(1)

2023.5.26.(金)

2022年度の病床機能報告結果を見ると、全国の病床数(一般+療養)は119万9000床、2025年度見込みで119万床となり、「2025年度の必要病床数の全国積み上げ119万1000床」と同水準となる—。

ただし、機能別の割合を見ると、高度急性期:13%(2025年度見込みは13%)、急性期:45%(同44%)、回復期:17%(同18%)、慢性期性期:26%(同25%)となり、「2025年度の必要病床数の全国積み上げである、高度急性期:10%、急性期:34%、回復期:31%、慢性期性期:24%」とは一定の乖離がある—。

なお、地域医療構想区域ごとに見ると「ニーズを賄うために必要な病床数が確保できていない(病床が足りていない)」区域や、「ニーズに比べて病床が過剰である」区域もあり、「地域医療構想の実現」に向けてさらなる取り組みを推進する必要がある—。

5月25日に開催された「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織、以下、地域医療構想・医師確保計画WG)で、こうした議論が行われました(2021年度報告結果に関する記事はこちら)。なお、同日には、すべての病院等が2022・23年度に行うべき機能再検証の状況報告(2022年度末の状況)も行われており、別稿で報じます。

5月25日に開催された「第12回 地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」

2022年度の病床機能報告、病床総数は120万床弱、急性期病床が45%

2025年度には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達することから、今後、急速に医療ニーズが増加・複雑化していくと予想されます。こうした増加・複雑化する医療ニーズに的確かつ効率的に応えるためには、各地域で「2025年度の医療ニーズを踏まえた地域医療構想の実現」が求められています。

地域医療構想は、地域(主に2次医療圏をベースとする地域医療構想調整区域)における将来(2025年度)の医療需要をもとに、▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期等―の機能別必要病床数などを推計したもので、言わば「将来の医療提供体制の設計図」という位置づけです。

各地域で、実際の医療提供体制が、この設計図にできるだけマッチしていくよう(つまり「地域医療構想が実現する」よう)に、データ(各病院の診療実績や意向などの「病床機能報告」)をもとに、機能改革・連携強化に向けた論議を膝をつき合わせて行うことが求められています。

地域医療構想とは(地域医療構想・医師確保計画WG3 210729)

地域医療構想の実現に向けた取り組みの大枠(地域医療構想・医師確保計画WG4 210729)



5月25日の地域医療構想・医師確保計画WGでは「2022年度の病床機能報告結果(速報値)」が報告されました。

病床機能報告は、一般病床・療養病床を持つすべての病院が、毎年度「自院の各病棟がどの機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)を持つと考えているのか、自院の診療実績や人員配置・構造設備などはどのような状況なのか」を都道府県に報告するものです。全国ベースの積み上げ値では、機能別の病床数は次のようになっています。

【2022年度における機能別の病床数】
▽合計:119万9000万床[2015年度に比べて5.2万床減]
▼高度急性期:15万7000床(全体の13%)[同1万2000床・1ポイント減]
▼急性期:53万4000床(同45%)[同6万2000床・3ポイント減]
▼回復期:19万9000床(同17%)[同6万9000床・7ポイント増]
▼慢性期:30万8000床(同26%)[同4万7000床・2ポイント減]

【2025年度における機能別病床数の予定・見込み】
▽合計:119万床[2022年度に比べて9000床減]
▼高度急性期:15万9000床(全体の13%)[同2000万床・0ポイント増]
▼急性期:52万5000床(同44%)[同9000床・1ポイント減]
▼回復期:21万床(同18%)[同1万1000床・1ポイント増]
▼慢性期:29万6000床(同25%)[同1万2000床・1ポイント減]

2022年度の病床機能報告結果速報(地域医療構想・医師確保WG(1)1 230525)

2022年度の機能別病床数見込み(地域医療構想・医師確保WG(1)2 230525)

2025年度の機能別病床数見込み(地域医療構想・医師確保WG(1)3 230525)



一方、将来(2025年度)の医療提供体制の設計図である地域医療構想(各都道府県で作成)について、全国ベースで「機能別の必要病床数」を積み上げると、▼合計:119.1万床▼高度急性期:13.1万床(全体の11%)▼急性期:40.1万床(同34%)▼回復期:37.5万床(同31%)▼慢性期:28.4万床(同24%)—となっています。

両者の厳密な比較はできません(病床機能報告は「病棟単位」で機能を報告するため、例えば「急性期」機能の中に回復患者が使用しているベッドも含まれるが、地域医療構想は「病床単位」で計算しており、数字の性質が若干異なる)が、織田正道構成員(全日本病院協会副会長)は「全体のベッド数を見れば、地域医療構想の実現ができているのではないか。急性期機能の病床が多いと指摘する向きもあるが、病棟単位での報告では実態とズレがでる(急性期機能と報告するベッドの中に回復期機能ベッドが少なからず含まれる)点を考慮すれば『回復期のベッドが不足している』こともないと思われる」と指摘。またや今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)も「2013年の病床数・人口動態などをもとに単純計算すると2025年度には150万床程度の病床が必要となる計算であったが、119万床に抑えられる見込みだ。療養病床に入院する医療区分1患者の在宅・介護施設等への移行などが進み、重症患者割合が高まっているが、この病床数で抑えることができており、地域医療構想は実現できていると見てよいのではないか」と同旨の考えを示しています。

これに対し、幸野庄司構成員(健康保険組合連合会参与)は「高度急性期・急性期機能の病床が、現状と設計図(地域医療構想)とで大きく異なっている。報告内容の精査・深掘りが必要である」と指摘します。

「2025年見込み」と「必要病床数の積み上げ」とを比較すると、高度急性期では「見込みのほうが3万床・2ポイント多い」、急性期では「見込みのほうが12万4000床・10ポイント多い」、回復期では「見込みのほうが16万5000床・13ポイント少ない」ことなどが分かります。

幸野構成員は、上記の「ズレが生じる」ことを含めて考えたとしても「乖離が大きいのではないか」と考えているようです。あわせて「2040年度を見据えたポスト地域医療構想では、ズレが生じないような仕組みを検討する必要がある」とも提案しています。

この指摘に対し小熊豊構成員(全国自治体病院協議会会長)は「高度急性期が多いように思えるが、地域医療構想を策定した時点では、新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症対策の重要性が認識されていなかった。今般のコロナ対策の中で高度急性期入院医療の重要性が強く意識されており、決して高度急性期病床が過剰なわけではい」と反論しました。地域医療構想作成時点とは状況が異なる点も踏まえた分析が必要でしょう。



また、データこそ示されていませんが(現在、精査中)、厚生労働省は「地域医療構想区域(主に2次医療圏)単位でみると、『将来(2025年)の医療ニーズを賄うために必要な病床数が確保できていない(病床が足りていない)』区域もあれば、逆に『将来(2025年)の医療ニーズに比べて病床が過剰である』区域もある」ことを説明しています。

個々の区域のデータを積み上げ、全体で見ると「必要病床数」と「実際の病床数」(見込み)とがほぼ一致しているものの、中には「大きなデコボコがある」(「必要病床数<実際の病床数」、「必要病床数>実際の病床数」)ようです。

このため、地域医療構想の実現に向けて「さらなる取り組み」(機能の見直し、病床数の適正化、必要な病床の確保など)を今後も続けていくべき状況に変化はないようです。

なお、コロナ禍では「一部の病床・病棟を閉鎖し、そこに配置されていた看護師をコロナ病棟に集約して手厚い看護配置をとる」動きがあります。コロナ重症患者には手厚い看護配置で濃厚な医療・ケアを行う必要があるためです。

コロナ収束後には、この休止病床・病棟が再開することになりますが、上述の【2025年度における機能別病床数の予定・見込み】に影響することはありません(2025年度に稼働する病床・病棟のみを計算しており、病床・病棟再開のため「実際にはより多くの病床が動いていた」という事態は生じない)。



なお、今年度(2023年度)の病床機能報告においては、▼2022年度診療報酬改定に合わせた対応を行う▼医療機関に従事する「救急救命士」の配置状況報告を求める—といった見直しが行われます。

2023年度の病床機能報告項目(地域医療構想・医師確保WG(1)4 230525)



ところでGem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。

GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。

ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。

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従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCアソシエイトマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。



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