老衰による死亡がさらに増加し、女性では前年に続き死因第1位、平均寿命は男性81.09年・女性87.13年―2024年簡易生命表
2025.7.31.(木)
2024年の我が国の平均寿命は、男性が前年と変わらず81.09年、女性が同じく0.01年短くなり87.13年—。
「老衰」による死亡増が依然目立っており、女性では前年に続いて死因第1位(がんによる死亡を超えている)となった—。
悪性新生物・心疾患・肺炎・脳血管疾患の死亡率の減少傾向は続いている―。
このような状況が、厚生労働省が7月25日に発表した2024年の「簡易生命表」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
平均寿命、男性は前年と変わらず、女性は0.01年短くなった
簡易生命表は、「ある年の1年間(今回であれば2024年)の死亡状況が今後も変化しない」と仮定したうえで、▼各年齢の人が1年以内に死亡する確率▼平均してあと何年生きられるかという期待値―などを「死亡率」や「平均余命」などの指標(生命関数)で見える化したものです。
戦争や大災害などを除き、医療費と最も相関の高い要素は「年齢」です。また介護費も「年齢」と極めて大きな関係があります。つまり、国民の年齢構成が高くなれば、医療費・介護費は増加することになります。このため医療保険制度・医療提供体制など、社会保障制度の在り方を考える上で、生命表は極めて重要な基礎資料となります(述べるまでもなく年金制度ではまさにダイレクトに関連する)。
2024年の平均寿命(ゼロ歳時の平均余命)を見てみると、男性は81.09年で、前年から増減なし。女性は87.13年で、同じく0.01年短縮しています。ゼロ歳から90歳まで、5歳刻みに平均余命を前年と比較すると、▼男性では0歳から80歳代前半まで「短縮」し、85歳以上で「延伸」▼女性では0歳から10歳代前半まで「短縮」していますが、10歳代後半以降は「延伸」—しています。

主な年齢の平均余命と、平均寿命の推移(2024年簡易生命表1 250725)
従前、基本的に「平均寿命は延伸」してきましたが、▼2020年初めから流行している新型コロナウイルス感染症の影響▼老衰などの死亡率の変化—により、2021年・22年「平均寿命は短縮」していました。2023年には再び延伸しましたが、2024年には実質「横這い」と言えそうです。今後の状況を注視していく必要があるでしょう。
また諸外国と比較すると、我が国は▼男性ではスウェーデン(82.29年)、スイス(82.2年)、ノルウェー(81.59年)、イタリア(81.436年)、スペイン(81.11年)についで第6位(前年から1つダウン)▼女性は第1位—の長寿国となっています。ただし、国によって平均寿命の作成方法などが異なるため、厳密な比較はできない点に留意が必要です。

男性における平均寿命の国際比較(2024年簡易生命表2 250725)

女性における平均寿命の国際比較(2024年簡易生命表3 250725)
「老衰」による死亡、女性では、前年に続いて死因第1位になり、さらに死亡率アップ
次に死因を見てみましょう。2024年の死亡確率(ゼロ歳時)上位は以下のようになっています。男女とも「老衰」による死亡率の増加が続いており、女性では前年に続き「死因第1位」となっています。がん・心疾患・脳血管疾患については死亡率が年々低下しており、「医療水準の向上」や「生活習慣改善等による予防の効果」と見ることができます。
【男性】
第1位:悪性新生物:25.59%(前年比0.34ポイント低下)
第2位:心疾患 13.70%(同0.54ポイント低下)
第3位:老衰 8.39%(同0.46ポイント増)
第4位:脳血管疾患 6.12%(同0.18ポイント低下)
第5位:肺炎 5.89%(同0.21ポイント増)
【女性】
第1位:老衰 20.75%(同1.14ポイント増)
第2位:悪性新生物 19.06%(同0.03ポイント低下)
第3位:心疾患 14.77%(同0.67ポイント低下)
第4位:脳血管疾患 6.46%(同0.27ポイント低下)
第5位:肺炎 4.35%(同0.11ポイント増)

死因別死亡率(2024年簡易生命表4 250725)
▼悪性新生物▼心疾患▼脳血管疾患—の3疾患を合計した死亡確率(ゼロ歳児)は、男性では45.68%(前年に比べて1.06ポイント低下)、女性では40.29%(同0.97ポイント低下)となり、いわゆる3大死因による死亡はさらに減少してきています。
また「がん」については、男性では死因第1位ですが、女性では「第2位」となりました。男女ともに死亡確率が下がっており、この背景には▼検診受診率の向上(早期発見)▼医学・医療の進歩(画期的な新薬等の開発)▼国民の生活習慣の改善―などが総合的に関係していると考えられます(関連記事はこちら)。
また、これらの死因を克服することが出来た場合、理論的には平均余命が長くなると考えられます。厚労省は、疾患克服で2022年のゼロ歳時における平均余命(平均寿命)が次のように延伸すると推計しています。
【悪性新生物】 男性3.11年、女性2.68年
【心疾患】 男性1.37年、女性1.12年
【脳血管疾患】 男性0.64年、女性0.55年
【肺炎】 男性0.42年、女性0.29年
▼悪性新生物▼心疾患▼脳血管疾患—の3疾患すべてを克服すると、男性で5.12年(前年に比べて0.11年短縮)、女性で4.35年(同0.08年短縮)、平均寿命が長くなる計算です。

特定死因を除去した場合の平均余命の延び(2024年簡易生命表5 250725)
【関連記事】
老衰による死亡がさらに増加、女性では「がん」を抜き死因第1に、平均寿命は男性81.09年、女性87.14年―2023年簡易生命表
我が国の平均寿命はコロナ禍で短縮し男性81.05年、女性87.09年に、老衰による死亡が増加―2022年簡易生命表
我が国の平均寿命、コロナ感染症等の影響で男性81.47年、女性87.57年に短縮、老衰死因が上位浮上―2021年簡易生命表
我が国の平均寿命は男性81.41年、女性87.45年、「老衰」による死亡の増加続く―2019年簡易生命表
我が国の平均寿命は男性81.25年、女性87.32年、死因では「老衰」が増加傾向―2018年簡易生命表
我が国の平均寿命、女性87.26年で世界2位、男性81.09年で世界3位―2017年簡易生命表
男女ともに長野県で死亡率低く、がんや心疾患などの疾病対策が寿命延伸に効果大―2015年都道府県生命表
我が国の平均寿命、女性87.14年・男性80.98年でいずれも世界2位―2016年簡易生命表
日本の平均寿命は世界トップクラス、男性80.75年、女性86.99年―2015年完全生命表
我が国の平均寿命、女性87.05年で世界2位に転落、男性80.79年で世界4位―2015年簡易生命表
わが国の平均寿命が過去最高更新、女性86.83年で世界1、男性80.50年で世界3位―14年簡易生命表